カテゴリーアーカイブ:人生の達人

デジタル化の壁、中間管理職

2022年1月23日   岡本全勝

1月19日の日経新聞に「DXの壁は中間管理職? 40代「関わりたくない」4割」という調査結果が載っていました。
・・・大企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は中堅社員がボトルネックとなっている可能性がある。DXに関する意識調査で40代の4割が「関わりたくない」と回答し、世代別で最多だった。中間管理職は短期で成果を求められることに加え、失敗しても挑戦を評価する人事制度がないことが少なくない。前向きにDXに取り組む動機づけが課題となる。

「上から『とにかくやれ』と言われても何から手を付けていいか分からない」。大手製造業で働く40代社員はこぼす。40代は自ら業務をこなしながら、部下の育成や労務管理をするプレイングマネジャーは多い。子育てや介護もある。デジタルを使った新規事業の開発など成果が出るまで時間のかかるDXに時間を割く余裕はない・・・

・・・日本の中堅社員のDXに対する後ろ向きな意見は世界でも突出している。米IT(情報技術)企業のABBYYが実施した調査で自社のデジタル化について聞いたところ、「十分に準備している」との回答は日本の中間管理職(マネジャー)が37%と、米国(75%)やドイツ(61%)を大きく下回った。パナソニックの玉置肇最高情報責任者(CIO)は「欧米企業は意思決定がトップダウンなのに対し、日本はボトムアップも重視するからだ」と説明する。
経営者の決めた方向性に向かってベクトルを合わせて一気に走る欧米企業と比べると日本は合意形成に時間をかけ、スピードが遅い。経験豊かな中堅社員は仕事のやり方を変えるのが簡単ではないことを熟知しているからこそ、後ろ向きな声が多いという見立てだ・・・

桜宮高、不祥事からの再生

2022年1月19日   岡本全勝

1月15日の朝日新聞スポーツ欄に「9年前の激震地で進む改革 大阪・桜宮高校長「変わった姿をみて」」が載っていました。
・・・9年前のあの痛ましい出来事の舞台が、部活動改革の最前線を歩んでいる。
大阪市立桜宮高。
男子バスケットボール部主将が、顧問から受けた暴力などを理由に自死したことが明らかになったのが、2013年1月。スポーツ界で暴力撲滅への本格的な努力が始まるターニングポイントとなる激震だった。
以来、二度と同じことが起きない学校づくりを進めてきた。
生徒の約4割が人間スポーツ科学科。15の運動部活動は今も盛んで、全国大会や近畿大会に出る部も珍しくない。
「勝つことは目指します。でも、それ以上に、生徒が自分たちで考えられる力をつけることを、各部の顧問が意識しています」と森口愛太郎校長。勝利至上主義ではなく、生徒主体のプロセスを重視することで、暴力との決別を図ってきた・・・

・・・そんな中、桜宮高では昨年11月から休日に都島区の中学生を対象としたスポーツ体験会を始めた。バスケットボール、サッカー、バレーボール、陸上、ボートの五つ。各部の顧問と部員たちが手本を見せ、アドバイスなどをする。11月は93人、12月は52人の中学生が参加した。
これは中学の部活動を地域に委ねる実践研究の一環だ・・・
・・・桜宮高も歓迎する。「授業の一環でもあるコーチングの実践になる」という同校の指導者の声が、今月13日に開かれた市の有識者会議でも報告された。高校生が下の世代の指導に携わり、その難しさと面白さを知る。勝つことだけでない、スポーツを通じた視野が広がる。
森口校長は言う。
「どこかで体罰事案があれば、今もうちの名前が出る。それは仕方ない。だからこそ、ありのままを見ていただきたいのです。これだけ変わってきたということを」・・・

長谷川真理子「私が進化生物学者になった理由」

2022年1月12日   岡本全勝

長谷川真理子著「私が進化生物学者になった理由」(2021年、岩波現代文庫)をお勧めします。長谷川真理子さんは、元早稲田大学教授、総合研究大学院大学学長。その半生記です。生物好きの少女が、生き物を対象とする研究者になります。しかし、そう簡単な道のりではありません。

今では考えられない「男社会」の中を、生き抜いていきます。女性には、学者や研究者の門が閉ざされていたのです。長谷川さんも、研究をあきらめ、教育者として生きていきます。
さらに、「既存学界」の壁にもぶち当たります。通説を批判すると、長老たちから笑われ、無視されるのです。それも理屈ではなく、「長老たちのお師匠さん」を批判することは許さないという理屈です。
日本の学界、それも自然科学の分野で、こんなことがあったのだと驚きます。その意味でも、貴重な記録です。

シニア女性のへそくり夫の倍

2022年1月10日   岡本全勝

12月27日の日経新聞女性欄に「シニア女性のへそくり 夫の倍」が載っていました。
・・・50代以上の女性の「へそくり」金額は、夫の2倍以上――。シニア女性向け雑誌「ハルメク」の生きかた上手研究所が10月、50~79歳の既婚男女600人に実施した調査で、そんな結果が出た。「自分だけのへそくり」があるか、との質問に対し、あると答えたのは夫で36.7%、妻で45.3%。金額を聞くと、妻の平均額が739万円と夫の金額(334万円)を大きく上回った・・・

調査「シニア世代の夫婦関係と生活に関する意識調査」(11月15日)には、次のような結果も載っています。
言われたい言葉の1位は「ありがとう」。特に妻から夫への要望が多く、男女で15ポイント超の差がみられる。感謝の言葉は、お互い伝えているつもり状態になっている。
・言われたい言葉1位は「ありがとう」で、特に妻は6割以上と切望。夫は「頼れる」「あなたのおかげ」「素敵」、妻は「お疲れさま」「さすがだね」「料理が上手」が高い。
・言われたくない言葉1位は、男女とも「結婚しなければよかった」。

品質不正、組織風土

2022年1月8日   岡本全勝

組織がつく嘘、上司の責任」の続きです。12月27日の日経新聞オピニオン欄、西條都夫・上級論説委員の「企業はなぜ失敗を繰り返すか カギは職場の「心の安全」」が、良い分析をしています。
・・・今年も企業の不祥事が多発した。なかでも経営トップが引責辞任を迫られた2件が印象に残る。度重なる品質不正を犯した三菱電機と、やはりシステム障害を繰り返したみずほフィナンシャルグループである。
再発防止を誓った会社がなぜ懲りもせず同じ失敗を重ねるのか。両社を題材にその手掛かりを探ってみよう。みずほに関しては11月26日付の金融庁の「行政処分について」という発表が参考になる。
そこで問題視されたのは「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」だ。各人が自分の守備範囲にしか注意を払わず、その外縁でまずい事態が起きていても、知らんぷりでやり過ごす。そんな組織の習性を、公文書としては異例の生々しい表現で批判したのだ。

三菱電機でも、外部の弁護士らによる調査報告書で「言ったもん負け」の体質があったと報告された。何か問題を指摘しても、組織は無関心。解決が個人に丸投げされ、過大な負担を押し付けられる。それが「見て見ぬふり」の横行する風土を生んだ。
同社は過去に何度も品質点検を実施したが、それでも長崎製作所などで不正が続いていた。不正一掃という本社の掛け声を現場は単なるポーズと受け流し、問題の解決ではなく隠蔽を選んだのだ。
職位による認識ギャップも大きい。同社の従業員サーベイをみると、役職の高い人ほど「自分の部門は風通しがよく、個人を尊重する職場だ」と自己満足気味だが、一般従業員の認識は違う。例えば「プライベートを多少犠牲にしても、組織貢献が求められる雰囲気があるか」という質問に、「そうは思わない」と答えた人は部長級の64%、課長級の51%に対し、一般社員は37%と少数にとどまった。
先週発表された調査報告書の第2弾でも、上司や先輩に仕事の疑問をぶつけたところ、「担当でないのに口を挟むな」「言われたとおりにやっていればいい」と怒鳴られた社員の証言が登場する。不正が繰り返される裏には、組織の病理があったのだ。

最近の経営学で注目されている「心理的安全性」の考え方が、事態の理解に役立つだろう。米ハーバード大のエイミー・エドモンドソン教授の打ち出したこの概念は、あるチームに属する人が「自分が問題提起や異論を唱えても、仲間やリーダーがしっかり受け止めてくれる」「このチームでは何を言っても安全」と思える関係性のことだ。
反対に何かモノを言うと、頭ごなしに否定されたり、無視されたり、嘲笑されたりする集団は心理的安全性が低い。そんな職場では誰もが沈黙しがちで、新たな発想や「気づき」に乏しく、イノベーションも生まれない。
心理的安全性が注目されたきっかけは、2012年に実施された米グーグルの大がかりな社内調査だ。同社は200弱の職場ごとの生産性やイノベーション創出力を計測し、活気のある職場と沈滞した職場の違いを分析した。その結果、各人が自由に発言し、積極的に意見を戦わせるチームは成果を上げ、逆に抜群の実績を持つ人を集めたオールスター的なチームでも、心理的安全性が低いと期待に届かないことが判明した。
誤解のないようつけ加えれば、「安全性の高いチーム」といわゆる「ヌルい職場」は似て非なるものだ。職場心理の研究者、石井遼介氏の4象限分類によると、後者も安全性は高いが、求められる仕事の水準が低いので、居心地がいいだけで充実感や自己成長感とは無縁だ。一方で要求水準と安全性がともに高い職場は健全な衝突が起こり、組織としての学習が促され、優れた成果を上げやすい・・・
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