カテゴリーアーカイブ:人生の達人

二種類の「がんばる」

2022年8月21日   岡本全勝

8月10日の朝日新聞文化欄「荒井裕樹の生きていく言葉」「「がんばる」には二つある」から。

その時々の社会状況に応じて、どんなふうに使われるかを観察し続けている言葉がある。「がんばる(がんばれ)」だ。
二〇一一年の東日本大震災の時、被災者の心中を慮ってか、多くの人がこの言葉を自粛したように記憶している。対して、コロナ禍ではむしろ積極的に使われてきた節がある。がんばる医療従事者、がんばる飲食業界、がんばる観光業者、といった具合に。

私見では「がんばる」には「はつらつ系」と「忍耐系」がある。前者は、当人が好きなことや望ましいことに打ち込む様子を肯定的に捉える際に使われる。後者は、当人が不幸な出来事に巻き込まれた際、くじけそうな気持ちを鼓舞するために使われる。
もちろん、両者の区別は曖昧で、普段は意識されることもない。だが、私はこの違いに自覚的でいたい。でないと、本当に必要な区別が付かなくなってしまうように思うのだ。

さらに検討を求める人

2022年8月16日   岡本全勝

最善の策と次善の策」の続きです。
賛成派と反対派がいて決着がつかない場合、あるいは問題点を指摘して(代案を出さないので)先に進まない場合があります。
このような場合に、「さらに検討しよう」と収める人がいます。困ったことです。ちっとも収めたことにならないのです。先送りしただけです。「あの人は慎重だ」ではなく、「あの人は決断できない人だ」なのです。

企業の場合は、新製品や新しいサービス開発で、このようなことを言っていると、競争相手に先を行かれ、負けます。
行政の場合は、「地域独占企業」であり、「先送りの罪」「不作為の罪」が見えにくいこともあって、しばしばこれが「決着」とされる場合があります。目の前に困っている人がいる場合は、先送りは罪です。

失敗する組織

2022年8月9日   岡本全勝

日野自動車がエンジン試験の不正を続けていたことの調査結果が公表されました。8月3日の日経新聞「「パワハラ体質」日野自の弊害」から。

「担当が明確な業務以外は積極的に引き受けにいかない雰囲気が醸成」
日野自内では部署間の連携がうまくいかず組織内で見落とされがちな業務を「三遊間」と表現。頻繁な組織変更で三遊間の業務を増やし、結果的に担当が曖昧な業務が増えたことを課題として指摘している。
今回の問題でも不正を認識していたのはパワートレーン実験部のみで他部署との人事交流やコミュニケーションは希薄だった。「日野の開発に関わる部署の役員や社員は試験内容をほとんど理解していなかった」

「開発遅れで『お立ち台』、担当者レベルで責任追及」
従業員へのアンケートでは「お立ち台」と呼ばれる行為の指摘も散見された。「問題を起こした担当部署や担当者が、他の部署も参加する会議の場で衆目にさらされながら説明を求められる」とされ、問題が生じて開発が遅れれば担当者レベルで責任をとらされる。
「助け合いではなく犯人捜し」、「言ったもの負け」という言葉でも表現されており、結果的に不正行為などの問題を隠蔽する体質醸成につながった可能性がある。

「上意下達の気風が強すぎる組織、パワーハラスメント体質」
燃費不正では05年11月、副社長を退任して技監となっていた元役員の指示がきっかけとなり、06年から導入される自動車取得税の軽減措置への対応として、大型エンジン「E13C」などで15年度目標の達成を目指す決定がなされた。
元役員の指示は「必達」と捉えられた。エンジン燃費の実力値が軽減措置の目標を達成できない見込みにもかかわらず、役員らから達成を強く求められ、開発担当者は専務や副社長に目標達成が可能だと報告した。

今時の若者 いい子症候群

2022年8月7日   岡本全勝

7月26日の読売新聞夕刊、金間大介・金沢大教授の「今時の若者 いい子症候群」から。

金間 見た目はいい子が大半です。新入社員への印象を企業に聞いても、さわやか、まじめ、素直で、受け答えがしっかりして、いっけん前向きという。一方、突っ込んでもリアクションが少なく、意見を言わず、物足りない……。

——前向きに見えても前向きじゃない?
金間 この両面を見て大人は、「何を考えているのかわからない」と感じますが、各種データを分析すると、二つの特性は若者には矛盾ではなく、普通なんです。
基本、若者には目立ちたくない、他人の気持ちがこわいという思いがガツンと乗っかっている。だからこそ「大人が求める若者」らしい“お芝居”をして、「圧」をかけられないよう防御するんです。

——なるほど!
金間 就職でも安定志向が高まり、職場に働きがい、チャレンジを求める若者は減っています。賃金が上がらない状況下、リスクがあり、自分で創意工夫しないとできない仕事を振られる職場は希望しない。逆にいうとマニュアルがあり、上司の指示が的確で、研修制度がしっかりしている会社を希望する。そういう会社だと「圧」が少なく、メンタルが安定しますからね。

——変化は、いつ頃から?
金間 「ゆとり教育」の導入に端を発すると考えています。さらに、ちょうど20年前に導入された「総合的な学習の時間」がこの流れを加速させました。当時の学習指導要領では、個の尊重と同時に、他者とともに社会的課題を解決しようとうたった。この二つの両立を目指したことが、いい子の大量発生につながったと思います。
というのも、子供からすれば個性を発揮すると目立ち、和を乱す構造になる。実際、授業で変わったことを言うと、「どうしてそうしたの?」と「圧」をかけられ、「他の子の意見も聞きましょうね」と先生に誘導される。
すると子供は、どう個を伸ばしたら教室で○がつけられるのか、大人が欲する良いやり方を学習するようになる。つまり、若者の行動は大人社会のコピーでもあるんです。

——日本がこのままでよいとは思えませんが。
金間 はい。停滞が続けば、若者が求める小さな安定すら失われてしまうでしょう。
だからといって、安定志向のいい子症候群の若者に、成果を出そうとハッパをかけても心に響かないでしょう。
成果をどう分配したらよいか、という設問に対する日米の学生の意識の差を見れば、それは一目瞭然です。米国では実績や努力に応じた分配を求める意見が多いのに対して、日本の大学生は、一律な平等分配を求める意見が男女とも半数近くに上っています。
勝ち負けに興味のない日本の学生に競争を強いるという発想の転換が必要です。

——どうしたらよいか?
金間 大人が行動し、「自分はこれをやりたい。だから手伝ってくれないか」と若い人を巻き込むことです。若者は、過去の実績を自慢する大人には飽き飽きしていますが、現役として行動する大人の姿は尊敬するでしょう。
「社会は」とか「君は」と語り、他者に行動変容を求める大人に対しては若者は防御的になるけれど、「自分はこうする」と一人称で語り、素を見せる人のことは、たとえ挑戦が失敗したとしてもかっこいいと思うはずです。

変化はチャンス、ピンチはビッグチャンス

2022年7月31日   岡本全勝

7月22日の読売新聞夕刊「言葉のアルバム」は、大山晃弘・アイリスオーヤマ社長の「マスク供給 応える使命」でした。

・・・2020年3月。前年に中国・武漢で確認された新型コロナウイルスの感染が、日本でも急速に拡大し始めた。情報が不足する中、人々はマスクを求めて殺到し、売り切れが続出していた。
「何としても安定供給しなくては」。アイリスオーヤマ自体、生産設備のある中国からの輸入が滞り、思うような供給ができなくなっていた。中国政府から、国外へは輸出しないように要請を受けたためだ。交渉の末、日本向けも一定量は確保したが、全く足りない。
家電からペットフードまで幅広い生活用品を手がけるメーカーにとって、消費者が必要としている製品を安定的に届けるのは使命だ。

日本政府からの要請もあり、3月下旬、マスクの国内生産を決断した。それからわずか4か月後の7月、角田工場(宮城県角田市)での本格生産にこぎ着けた。工場を報道陣に公開し、「国内に安全安心なマスクを届けたい」と力を込めた。現在、マスクの国内生産は月1億5000万枚。18年7月の社長就任後、最大のピンチを乗り切った。
グループ売上高8000億円の企業の先頭に立つ。胸に刻んでいるのは、半世紀にわたって社長を務めた父・大山健太郎会長の口癖だ。
変化はチャンス、ピンチはビッグチャンス・・・

・・・2011年3月、東日本大震災が襲った。晃弘さんも角田工場で被災。自ら復旧作業の陣頭指揮にあたりながら、被害を正確に把握し、的確な指示を出す父の姿を見た。震災後、父はLED照明の増産に取り組んだ。電力不足という「変化」に対応するためだ。省エネ性能に加え、大手メーカーより安い価格が支持され、大ヒット商品となった。
「会社がピンチに陥った時、経営トップに求められるのは行動力とリーダーシップであることを痛感した」。ピンチをチャンスに変える父のかじ取りを間近で見てきた経験が、マスク生産に生かされた・・・

この欄は、かつて私も出たことがあります。