カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

上司に仕える

上司を使う」の続きにもなります。「上司に仕える」は、「部下を使う」とともに、当たり前のことです。しかし、上司に仕える際にも、その行動に幅があります。

指示されたことを実行するは、最低限のことです。その際にも、早くよい成果物を仕上げるか、時間がかかってできの悪い成果物を出すのか。ここに差が出ます。
次に定例業務であっても、上司は、あなたが知恵を出して創意工夫をすることを期待しています。無駄を省くことなどです。上司は、そこにあなたのやる気と能力を評価します。

そして「仕える」です。
上司の指示に疑問を感じることなく実行するのか、変だなと思ったら意見するのか。上司に指示に欠けている部分を補うのかです。さらに上級になると、上司の行動を予測して、先回りして準備することです。
もちろん、部下がこのような行動を取ることができるのは、上司が部下の意見を聞いてくれる状況においてです。質問をしたり意見を言ったら叱られる、左遷されるような上司の下では、これは期待できません。そして、話を聞いてくれる上司の下で、有能な部下が育ちます。

なおドイツ連邦官吏法には、上司に助言すること、補佐する(支援する)ことが「服従義務」の一つに書かれています。嶋田博子著『職業としての官僚』(2022年、岩波新書)231ページに紹介されています。

「ドイツ連邦官吏法」
第62条 服従義務
① 官吏は、上司に助言し、上司を補佐しなければならない。官吏は、上司の職務上の命令を遂行し、その一般的方針に従う義務を負う。前段は、官吏が特別の法律の規定により、指示に拘束されることなく法律のみに従うものとされる場合には、適用しない。

なお、上司の命令について適法性の疑問がある場合は、それを上司に主張しなければなりません。
第63条 適法性にかかる責任
① 官吏は、その職務行為の適法性について、官吏個人として全ての責任を負う。
② 職務上の命令の適法性に疑義がある場合は、官吏は、遅滞なくこれを直接の上司に主張しなければならない。直接の上司によりその命令がなお維持された場合において、その適法性につき引き続き疑義があるときは、官吏は、一段階上の上司に相談しなければならない。命令が追認された場合には、官吏はこれを遂行しなければならないが、自己の責任を免ぜられる。前段は、命ぜられた行為が人間の尊厳を傷つけることとなる場合又は可罰的若しくは秩序違反であり、その可罰性若しくは秩序違反が官吏にとって明らかである場合には、適用しない。追認は、官吏の要求があれば、文書により行わなければならない。
ドイツ連邦官吏法・原語

上司を使う

「上司を使う」は、一見おかしな表現に思えます。通常の組織では、上司の命令によって部下が動きます。「上司が部下を使う」です。しかし、あなたが組織の中堅になると、この言葉を考えてください。

あなたが案をつくり、上司や組織の了解を得て進めようとする場合を考えてください。その案の内容を紙に書くとともに、それを実現する段取りを考えますよね。すると、上司の了解を取るだけでなく、関係者の同意を取る算段を考えなければなりません。
案を作って終わりではありません。上司に向かって「このような案を考えました。その実現は上司であるあなたの仕事です」と渡すようでは、よい部下ではありませんね。

あなたが案を上司に説明したら、上司はその案の問題点を考えるとともに、どのようにしたらその案が組織内で実現できるかを考えるはずです。その段取りを考えることも、部下の務めです。案を考えるには、内容とともに段取りを考える必要があります。
これが、「上司を使う」です。あなたの案を実現するために、「上司に動いてもらう」、露骨に言うと「あなたの案を実現するために、上司を使う」のです。

場合によっては、案の実現に消極的な上司に対し、彼の心配事への対策を説明し、彼が嫌がる折衝を代わって引き受けるとかも、必要になります。
「できる部下」、将来の「できる上司」になるために、考えてみてください。

管理職は罰ゲーム?

「管理職は罰ゲーム」という話を聞きます。例えば、日経ビジネス連載「管理職 罰ゲーム」(2023年10月6日から)。
・・・企業の中核を担う管理職に異変が起きている。グローバル競争に勝つための新事業創出、働き方改革、コンプライアンス(法令順守)の強化──。あらゆる課題がその双肩に重くのしかかる。そう。心身共にすり減っているのだ。疲弊した管理職が「割に合わない」と働く意欲をなくしてしまえば、組織全体の活力は低下する・・・

2023年10月28日の朝日新聞、岡崎明子さんの「中間管理職は罰ゲーム? 働き方改革の成否占う炭鉱のカナリアは」に、問題点の指摘があります。
・・・最近、「管理職は罰ゲーム」といった記事をよく見かける。日本能率協会マネジメントセンターが今春、一般社員約1100人にアンケートしたところ、77%が「管理職になりたくない」と答え、その割合は5年前より増えていたという。
パーソル総合研究所が企業の課長など2千人を対象に実施した調査では、組織で「働き方改革が進んでいる」と回答した管理職の方が、「進んでいない」と回答した管理職に比べ、自身の業務量も、組織の業務量も増えていたそうだ。
残業規制されても仕事の量は減らず、人手も足りない。そんな負担感が高い管理職は意欲の低下、学ぶ時間が取れないなどの悩みを抱えていた。4年前の調査だが、今も状況は変わらないだろう・・・

かつては多くの人がなりたかった管理職が嫌われる。働き方改革の進んだ職場の方が、管理職の業務量が増える。私は、この原因は大きく二つあると考えています。

一つは、上司から新しい課題(新規事業や新規政策)を考えるように指示され、それを考えなければなりません。他方で働き方改革、法令遵守、男女共同参画、個人情報保護など職場と職員管理にこれまでにない要素が乗ってきています。

もう一つは、管理職が管理職になるための経験や研修を受けていないのです。日本の多くの職場で、優秀な職員が選抜されて管理職になります。かつては、それで管理職が務まっていたのです。部下たちは、大部屋で係単位で助け合って仕事をしてくれました。管理職が指示を出さなくても、引継書と経験者が教えることで仕事は処理されました。経験者が仕事の遅い職員を支援し、片付かない場合は残業をしてやり遂げてくれました。
しかし、新しい事業を考える際には、大部屋制は機能しません。一人に一台パソコンが入り、係単位での仕事も、一人一人で行うように変わってきています。管理職は部下に指示を出し、部下の相談に乗らなければなりません。その訓練ができていないのです。

職員が増えないのに仕事が増える。部下は働き方改革で残業をさせられない。すると、管理職に「つけが回ってくる」のです。

定年まで勤めたいは2割

12月1日の日経新聞「伊藤忠商事、新事業生む「複業」 週5時間で崩す縦割り」の記事に、「Z世代はキャリアの多角化重視、「定年まで在籍」2割」という文章がついています。

・・・総合商社は大学生の人気就職先ランキング上位の常連だ。だが近年は「一人前」までの下積みの長さや年功序列的な社風に嫌気がさし、外資系やスタートアップへの転職、起業を選ぶ若手も目立つようになった。
リクルートが26歳以下のZ世代に実施した調査では「どこの会社でも、ある程度通用するような能力が身につくこと」を重視する比率が上昇し、23年は18年比4.5ポイント増の75%だった。また現在在籍する企業で「定年・引退まで働き続けたい」との回答は全体の2割にとどまる。
人事制度に詳しいリクルートの藤井薫HR統括編集長によると、Z世代を中心に「1つの産業や職務でキャリアを終えたくない」という意識が強まり、複業や起業の需要が高まる・・・

「どこの会社でも、ある程度通用するような能力が身につくこと」を重視する人が増えることは、頼もしいことです。

顧客からの嫌がらせ、カスタマーハラスメント

11月27日の日経新聞夕刊に「「カスハラ」経験64.5% 土下座強要や居座りも クレーム対応担当者を調査」が載っていました。
・・・顧客からの嫌がらせや迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を直近1年間に受けた人は64.5%に上るとの調査結果を危機管理コンサルティング業「エス・ピー・ネットワーク」(東京)が27日までに発表した。土下座強要や長時間の居座りなどを経験した人もいた。
同社は「従業員を守れないと、人材確保に大きな影響を及ぼす」と指摘している・・・
取り上げられている行為は、執拗な言動や威圧的な言動で、「土下座を強要」「2時間近く居座り」「3時間以上の拘束」などが挙げられています。
カスハラの影響の質問(複数回答)では「メンタル・モチベーション低下」49.2%、「本来の仕事への圧迫」28.3%、「従業員の離職」20.9%です。

12月1日の読売新聞には「カスハラ被害経験52% 人材サービス会社調査 大声で威嚇、謝罪を要求」が載っていました。
求人サイトに登録している女性640人に、客から理不尽な要求などを突き付けられるカスタマーハラスメントの経験を尋ねたところ、52%が被害を受けていたとのことです。
「大声でどなられたり罵倒されたりする」「長時間しつこく問いただされる」「暴言をはかれる」などです。「お客様は神様ではないということを幅広い年代に理解してほしい」という期待や、「理不尽な要求など、正当性のないカスハラはもはや犯罪なので、どんどん警察に通報すべきだ」「法律で取り締まる方がいい。監視カメラなどでチェックが必要だ」と、毅然とした対応を求める意見もありました。

厚生労働省は昨年2月に対応の手引を策定しました。今後これを実効性あるものにすることが必要です。
役所では、早い時期から、行政対象暴力が問題になりました。