投稿者アーカイブ:岡本全勝

朝日新聞福島総局勉強会

2025年9月9日   岡本全勝

今日は、朝日新聞福島総局での記者勉強会に、福島市に行ってきました。
頂いた主題は「復興政策の理想と現実」で、「巨大津波と世界最悪級の原発事故に見舞われた地域の復興に対し、政策をつくる側は何を考え、どう地元と対話し、どのような復興を目指したか。そして現実はどうだったか。できたこと、できなかったこと、今後どうあるべきかなどについて解説する」です。

発災以来すでに14年余りが過ぎました。当時のこと知る記者も少なくなり、若手記者は体験していません。時間とともに記憶が薄れることは仕方ないことであり、人間の脳にとって必要なことです。しかし、現状を分析し、何がうまくいっていて何がうまくいっていないか。それを記事にするためには、これまでの経緯も知っておく必要があります。
復興庁は、なるべく記録を残し、ホームページに載せることに務めてきました。また、それだけでは当時の意図や苦労がわからないので、関係者から聞き取りをして残すこともしています。私自身も、書物や新聞の取材に答えることで、残し伝えることを心がけてきました。(私の所管ではありませんが、新型コロナ感染症対策では、どのように記録は残っているのでしょうか。)

私も担当を離れて5年が経つので、改めて保管してあった資料(かつて使った講演資料など)を引き出し、講義資料を整えました。電子媒体は便利ですね。ところが、どこにどんな資料を保管したか(講演で使ったか)がわからず、講義資料の半封筒の紙資料を見て、整理しました。あわせて、これを機会に、半封筒の紙資料は捨てました。

勉強会は、前半を大震災全体、主に津波被害とし、後半を原発被害としました。そして、記者の関心に応えるため、質疑の時間をたっぷり取りました。
約20人の方が出席、5人の方がオンラインで参加でした。さすが第一線で活躍している記者たちです。鋭い質問がたくさん出ました。このような形でお役に立てるとは、うれしいです。

労働者階級が正規労働者階級とアンダークラスに分解

2025年9月9日   岡本全勝

9月5日の朝日新聞オピニオン欄、橋本健二・早稲田大学教授の「最下層のブラックホール化」から。
・・・最下層の「アンダークラス」が誕生して日本は新しい階級社会になった――。そんな分析で話題を呼んだ社会学者の橋本健二さん。新たな調査結果をもとに、アンダークラスが「ブラックホール」化し、政治から疎外されていると訴えている。格差を解消する政治を生みだすため、まず足元を見つめてみたい・・・

――階級という視点から日本社会を見つめてきましたね。アンダークラスという新しい階級が最下層に出現したと訴える著書「新・日本の階級社会」が話題を呼んだのは7年前でした。
「アンダークラスとは、パートの主婦を除いた非正規雇用の労働者たちを指します。人数は890万人。日本の就業人口の13・9%を占めます。1980年代から進んだ格差拡大に伴って生まれた新しい階級であり、現代社会の最下層階級です」
「2022年に東京・名古屋・大阪の3大都市圏で私たちが実施したネット調査によれば、アンダークラスの人々の平均年収は216万円で、貧困率は37・2%に達していました」

――どのくらいの経済格差が見られたのでしょう。
「同じ調査で見ると、アンダークラスの人々の平均年収は、経営者ら資本家階級との比較では2割強、正規雇用の労働者と比べても4割強にとどまる額でした。貧困率を見ても正規雇用の人々は7・6%なので、桁違いです。非正規雇用の労働者と正規雇用の労働者の間には、もはや同じ階級とはみなせないほどの経済格差があるのです」

――今年6月に出された新著「新しい階級社会」の中で印象的だったのは、アンダークラスがブラックホール化しているとの指摘でした。なぜ、そのようなたとえを使ったのですか。
「貧困や格差の『連鎖』としてアンダークラスを理解しようとする誤解が気になっていたからです。貧困層の家庭の子は貧困層になるという連鎖です」
「確かに一般的には連鎖が見られるのですが、アンダークラスに関する限り、それはあてはまりません。そもそも子どもが生みだされにくいからです」

――どういうことでしょう。
「3大都市圏で行った私たちの調査から見えたのは、アンダークラスでは未婚率が69・2%と、他の階級に比べ際立って高いことでした。男性では、74・5%に上っています」
「経済的な理由から結婚することも子を持つことも困難な人が多数を占めている。世代の再生産が起きにくくなっている事実を強調するために、吸い込まれたら出てこられないブラックホールのたとえを使いました」

――新しい下層階級が登場する以前、日本には四つの階級があったと説明していますね。
「ええ。よく知られるのが、企業の経営者からなる『資本家階級』と、現場で働く人々からなる『労働者階級』です。そのほかに、経営者と労働者の性格を併せ持つ二つの中間階級がありました。自営で農業やサービス業などを営む『旧中間階級』と、企業で働く管理職・専門職などの『新中間階級』です」
「これらのうち労働者階級が90年代ごろに二つに分裂したというのが私の見立てです。上位の『正規労働者階級』と、下位の『アンダークラス』に」

――非正規労働者自体は以前から存在していたはずですが、なぜ、階級という固まりとして登場するに至ったのでしょう。
「一つは、経済のグローバル化によって非正規労働者が生み出されやすくなったためです。人件費を下げなければ企業が収益を上げにくい構造が作られ、低賃金の非正規労働者が増えやすい環境が生みだされました」
「また政府の政策や企業の方針の面でも、非正規雇用の労働者の増加を促進する施策が進められました。とりわけそれが顕著だったのが日本や米国です」
「かつては非正規労働と言えば、学生やパートの主婦、定年後など人生の一時期だけのものでした。人生のすべてを非正規として働く人が激増したことで、独立した階級になった形です。人間を消耗品として使い捨てている状態だと言えます」

――階級は社会からなくした方がいいでしょうか。
「いえ、なくさない方がいいと思います。経営をしたいか雇われて働きたいか、脱サラして自営業を始めたいかの選択肢はあった方がいいからです。でも格差はなくすべきです。格差は社会全体に損失を与えます」
「もし階級間の格差が小さくなれば、人は自分の所属階級を自由に選べるようになります。目指すべきは、そうした社会なのではないでしょうか」

少し古本を処分3

2025年9月8日   岡本全勝

少し古本を処分2」の続きです。いつものように、笑い話として読んでください。

その後も、ぼつぼつと作業を続けています。「少し古本を処分1」の後、毎週末にがんばって、さらに3箱+3箱を知人に送り、3箱+1箱を捨てました。
休日は、孫の相手のほか、朝は原稿の執筆、午後は本棚の整理です。なかなか腰が上がらないのです。本を捨てる悲しみと、部屋が広くなる喜びとが交錯しています。

最初の頃に比べて、作業が遅くなり、本棚に戻す本が増えてきました。床の山を先に片付けているのですが、これは近年買った本なので、まだ捨てる気になりません。本棚の手が届かないところには、古い本が並んでいて、たぶん迷うことなく捨てることができるはずです。しかし、床の山を片付けないと、脚立をおけないのです。次回は、その辺りを狙いましょう。
「分け入っても分け入っても本の山」(種田山頭火ならぬ山頭水にしておきましょうか)。暑い日には、水のシャワーを浴びて作業をしているので。

全体計画からするとまだ1割くらいですが、それでも成果は出ています。
・本棚に空きができた
・書斎の床が広がった
・階段の壁沿いに積んであった本はなくなった

そこで、机の上の山を、少し本棚に移しました。「書斎と椅子」に書いた、作り付けの机(天板)です。パソコンの前が少し広くなりました。
もっとも、まだ右側に8山、左側に7山あります。一山は10数冊で低いのですが、これを崩さないと、机が全面的には使えません。全部とは言いませんが、半分くらいは空けたいです。
パソコン用の椅子と読書用の椅子を、二つ並べてあります(こだわりの椅子)。まだ、読書用の椅子は使えない状態です。せっかく買った椅子なのに。

イギリス民営化、規制が不十分だった

2025年9月8日   岡本全勝

8月20日の日経新聞には「クラーク元英産業戦略相「民営化、規制不十分だった」 放任は否定」も載っていました。先日書いた「イギリス、民営化政策転換」の続きになります。

・・・英国ではサッチャー政権時代に進めた民営化から転換し、産業政策で政府の関与を強めつつある。保守党のグレッグ・クラーク元ビジネス・エネルギー・産業戦略相は日本経済新聞の取材に「様々な方法で産業育成に取り組んだ。完全な自由放任主義ではなかった」と述べた。民営化後の企業に対する規制は不十分だったと指摘した。

――保守党のサッチャー政権が1980年代に進めた民営化の弊害が目立ちます。何が間違っていたのでしょうか。
「忘れられがちだが、民営化以前のインフラ部門は政府の財政制約で設備投資が抑制されていた。民営化で変革がもたらされた。ただ、インフラは独占企業が担うことになる。規制の面で、消費者の利益を擁護する運営が必ずされるとは言いがたかった」
「初期の規制モデルはナイーブだった。企業は規制当局を説得し、楽な条件で事業を進めようとした。民営化自体が間違っていたとは思わないが、規制には誤りがあった」・・・

イギリス、国主導で企業支援

2025年9月8日   岡本全勝

8月20日の日経新聞に「スターマー英政権、産業戦略のモデルは日本 特定分野に国が投資主導」が載っていました。

・・・英国のスターマー政権は7月までに向こう10年間の企業支援策を示す「産業戦略」と業種別の計画を公表した。従来の市場任せの経済政策を転換し、政府が積極的に関与する。官民一体の取り組みが多い日本などを参考にした。

産業戦略の策定を主導したビジネス貿易省のサム・リスター副次官や同省諮問委員会のグレッグ・クラーク委員が3月、東京を訪れた。
2024年7月に発足した労働党のスターマー政権は大きな政府を志向する。補助金などの政府介入を嫌がった保守党の前政権とは違う。ただ、特定の業種の支援は世論の批判を受けるリスクを伴う。どうすれば支援が正当化されるのか知恵を求めた。
日本政府の産業政策立案の関係者らから「特に新しい産業分野は政府が投資を主導しないと他国に劣後し、国益を損なうおそれがある」と説明を受けた。
日本の経済界と意見交換したクラーク氏は「企業と政策立案者の協議の緊密さは非常に印象的で、取り組むべき良いことだと思った」と振り返る。

政府が民間への介入を強めるのは日本に限らない。
経済安全保障や気候変動対策が叫ばれるなか、バイデン前政権以降の米国のほか、欧州連合(EU)も産業を手厚く支援する。英国はこれまで政府介入と距離を置いたが、スターマー政権は世界に合わせた。
日本は岸田文雄前政権以降、グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に国費を投入する。スターマー政権が注力する分野と重なる。英国は日本と産業政策の当局者同士の対話枠組みも設けた・・・