投稿者アーカイブ:岡本全勝

日本企業、経営人材育成の問題

2021年3月2日   岡本全勝

2月23日の日経新聞経済教室、齋藤卓爾・慶応義塾大学准教授の「経営人材育成、早期・計画的に」から。

・・・つまり日本での企業統治に関する議論はバブル崩壊後の不祥事、業績低迷の原因追及として始まったのである。そして統治構造は、取締役会規模の縮小、海外機関投資家の持ち株比率の上昇などにより徐々に変化し、2012年発足の第2次安倍政権の一連の企業統治改革により大きく変化した・・・
では企業統治改革により日本企業の低業績は改善されたのか。各国の改革効果を検証した研究は、最低限必要な社外取締役の人数や比率の設定が業績を向上させたことを報告している。だが日本の改革が業績を明確に改善したという結果はこれまで得られていない。
売上高30億ドル以上の日本企業360社を含む30カ国約2千社の国際比較によると、日本企業の業績は14年から16年にかけて改善したが、その傾向は続かず、国際的にみて依然低水準のままだ。またよりリスクをとると大きくなると考えられる利益率のばらつきも、12年以前と同様に国際的にみて最低水準にある。社外取締役を選任した企業群の業績が改善したという傾向もみられない。企業行動でみても配当や自社株買いなど株主還元は増えたが、改革が目指したリスクテイクに関しては、設備投資や研究開発投資が促進されたという傾向はみられない。

長年日本企業の行動そして業績が大きく変わらなかった理由の一つとして、経営者の育成・選任が挙げられるのではないだろうか。適切な経営者の選任は企業統治、特に取締役会の最も重要な役割とされている。
米国では経営者の姿が時代とともに変化している。ピーター・カペリ米ペンシルベニア大教授らは1980年と2001年の米誌フォーチュンが選ぶ大企業100社「フォーチュン100」の経営者を比較し、若年化や最初の就職から経営職に就くまでの期間の短期化を報告している。カロラ・フリードマン米ノースウエスタン大教授は1935年から2003年までの経営者の変化を検証し、1970年代中ごろから生え抜きの経営者が減り、経営人材の会社間移動が増えたこと、経営学修士号(MBA)の学位を取得した経営者が増え始めたことを示した。
経営者属性の変化の理由として情報技術や経営管理手法の進歩、企業の巨大化、事業のグローバル化、多角化に伴い、経営者に求められる経営能力が特定の企業だけで通用する企業特殊的なものから、どの企業でも通用する一般的なものに移ったことを指摘している・・・

しかし日本企業の社長のキャリアパスはこの30年間大きくは変化していなかった。
近年、女性役員の登用が進むが、調査対象の社長で創業家以外の女性は1人もいない。外国出身の社長も極めてまれだ。社長に就任した年齢は90年以降一貫して60歳で、平均的には社長は若返っていない。入社年齢をみると、91%の社長が30歳までに入社しており、この比率は90年の81%から上昇している。
経営能力を見込まれたと考えられる41歳以降に入社した社長の比率は、90年の13%から7%に低下している。銀行の役員や官公庁の幹部などが、事業会社に経営者として移るケースが以前より減っているためだ。変化の象徴として注目されるいわゆるプロ経営者は、それを補うほどには増えておらず、近年むしろ内部昇進の社長が増えている。
かねて日本企業特有の遅い昇進は、リーダーの形成に不利であることが指摘されていた。社長就任者の昇進は他の社員と比べて特段早くなく、またこの30年間に早まってもいない。平均的に内部昇進の社長は入社から部長昇進までに約22年を要し、46歳ごろに部長職に就いている。これは一般的な部長昇進年齢とほぼ同じだ。そして入社から部長昇進、部長から役員昇進までの期間はむしろ長期化の傾向がみられる。
一方で社長就任年齢は変わらず、役員から社長就任までの期間は顕著に短くなっている。つまり内部昇進の社長のプレーヤー、中間管理職としての期間が長くなる一方で、役員としてトップマネジメントを経験する期間は短くなっている・・・

G7で日本だけが平均賃金が下がった

2021年3月2日   岡本全勝

2月24日の日経新聞夕刊「変わる給料(上)今年の労使交渉」に、びっくりする図が載っています。「G7で日本だけが平均賃金が下がった」、2000年から2019年の増減率です。
OECDの調査によるものだそうですが。この10年間に、他の6か国は40%~70%の増加なのに対し、日本だけがマイナスです。

日本経済は、1991年にバブル経済が崩壊し、長期デフレに悩みました。2000年以降は景気は回復しました。リーマン・ショックもありましたが、それはG7各国に共通です。
日本の伸び率が低いのならまだしも、他国の賃金が1.5倍になっているときに、日本は減っているのです。
この理由は、日本経済全体の停滞とともに、労働者に着目すると、賃金の低い非正規労働者の増加によるものと考えられます。

アトキンソンさん。日本人の検証なしでの思いこみ

2021年3月1日   岡本全勝

2月23日の朝日新聞スポーツ欄、デービッド・アトキンソン氏「世界一寛容な日本、願望に近い」から。

・・・日本人は思い込みや俗説が多い。専門家に確認しない、検証しない。厳しく言えば、プロ意識が低い面があることは共通しています。それは寛容の一環かも知れませんが。
例えば、東京五輪が日本経済の起爆剤になるというのも、俗説。エビを食べて長寿にあやかるのと同じ。数週間のイベントがGDP550兆円の日本経済に大きな影響を与えるはずがありません。
五輪で観光客が増えるというのも、何の根拠もない思い込み。インバウンドが増えたのは5年前からですが、リオデジャネイロで五輪があるからと、開催の5年前にブラジルに行った日本人が多くなった事実はないです。自分たちがやらないのに、なぜ外国人がやると思うのか。
過去の大会では、その年には海外からの需要が増えるが、ほとんどがマスコミ関係。翌年はよくない。2012年に開催したロンドンだけ増えましたが、これは五輪に合わせて観光対策をしたから。五輪だけの影響ではありません。

日本の決定的な問題は、クリティカルシンキング(批判的思考法)が十分にできていないこと。これは、仮説を立てて、ロジックを分解し、データで検証し、結論を導き出すもの。
大学の問題が大きい。クリティカルシンキングができるようになるのは大学生の年齢。人間というものは勝手な思い込みをする生き物なので、それをなくすため大学教育が発達した。
大学の4年間、先生とのやりとりで、思い込みで発言したら、根拠はなんですか? 評価に客観性はありますか?と聞いて答えさせる。日本の大学はそれが十分できていない。
だから日本は事後対応しかできず、いつも後手に回る。事前に仮説をたてて議論しても、受け入れられないのです。予想はできるのに、何も手を打たない。
重ねていいますが、東京五輪はやっても、やらなくても、日本経済には中長期的にはさしたる影響はありません・・・

頭を下げてぎっくり腰になる

2021年3月1日   岡本全勝

黒江・元防衛次官の回顧談第12回「官房業務 ~官房とは謝ることと見つけたり~」に次のようなくだりがあります。

・・・担当局長が委員会に出席 して謝罪し、やっとのことで事態が収束した直後のある日、官舎の浴室で風呂の蓋をとろうとしてかがんだ瞬間に腰に鋭い痛みが走り、動けなくなりました。典型 的なギックリ腰でした。
整形外科にかかつたものの痛みがひかず、厚労省のある先輩に教えて頂いたカイロプラクティック医院で診察してもらったところ、「太腿の後ろの筋内、ハムストリングが張つています」という思いがけない診 断結果を告げられました。
さらに「黒江さん、最近お辞儀みたいな動きをしましたか ?」と問われたので、「ここ一年近くずつとお辞儀をし続けて来ました」と状況を説 明したところ、「ギックリ腰の原因はそれです !お 辞儀の動きは大腿に負担がかかるのです。太腿の裏が張つて負担に耐えられなくなると、次は腰に来て、最後はギックリ腰 になるのです。労災の認定を受けられると思いますよ」と真顔で言われました。
さすがに公務 災害は申請しませんでしたが、今思うと申請していたらどうなつていたのか興味があります。ともあれ、この医院に二、三週間通つた結果、幸い腰痛は治りました・・・

この話は、このホームページで、主語を明らかにせず載せたことがあります。「お詫びと筋肉の関係