投稿者アーカイブ:岡本全勝

緊急時の国と地方の役割分担

2021年4月16日   岡本全勝

4月11日の読売新聞、辻哲夫・元厚労事務次官の「コロナで見えた予兆 増える高齢者 病床再編が必要」から。前回に続き、その2です。

・・・保健所の業務や機能についても逼迫が指摘されました。
保健所は1990年代の行政改革、地方分権推進の議論を受けて統廃合が進みましたが、国と自治体の権限、役割分担を改めて決める必要があります。もちろん「地方に任せるべき仕事は、任せる」のは当然です。しかし、コロナ禍のような危機的状況に直面した場合、国が司令塔として強い管理機能を持つことが重要です。
また、国は日頃から感染症対策の危機管理要員を育成し、いざという時、そのノウハウが自治体の保健所まで届く体制にする。

国は次期医療計画(2024~29年度)の重点事項に「新興感染症等の拡大時における医療」を加えました。国家プロジェクトとして感染症対策を見直す必要があります。感染症大流行との戦いは、いわば「有事」です。国際的な人口流動性を考えれば、今後も大流行は十数年に1度は起こりうる。安全保障の観点から感染症対策を考えるべきです・・・

東日本大震災の際も、通常の災害では県や市町村の役割である業務も、県や市町村の手に負えないため、国が乗り出しました。「地域でできることは地域で」というのが分権の思想ですが、緊急時には国が自治体を補完するべきです。

ドイツの社会的能力

2021年4月15日   岡本全勝

先日紹介した、高松平蔵著「ドイツの学校にはなぜ『部活』がないのか」に、「社会的能力」の説明があります(156ページ)。
子ども向けスポーツの広告に、運動能力と並んで、社会的能力が促進されることが書かれています。では、社会的能力とは何か。商工会議所が掲げる説明が紹介されています。

1 自己認識と外部認識
自分で自分のことをどう捉えているか。他人は自分をどう見ているかを認識する能力
2 コミュニケーションスキル
まざまな人と関係をつくっていく能力です。
3 異なる視点から見る能力と共感する能力
これも、他者と仕事をしていくために、相手を理解するために必要な能力です。
4 摩擦、批判の能力
仕事がうまく行かないとき、批判されることも批判することもあります。その摩擦、ストレスに耐える能力です。
5 チームワーク
上に述べた1~4の能力は、これに収斂されます。

著者は、日本企業がしばしば求める「体育会系」との違いを指摘します。特に4は、先輩の指示を聞くだけの人物ではダメだということです。
なぜ、商工会議所の解説が取り上げられているか。ドイツでは、日本と異なり、教育と職業がかなり密接です。そして、どの会社に属するかでなく、どのような職業かが重要です。大学に進学しない場合は、職業学校への就学が義務づけられています。職業教育を終えると、試験が行われ、商工会議所が職業資格を発行します。職業人に求められる資格が、定義づけられているのです。

医師も病床数も多く患者も少ないのに、逼迫するコロナ医療

2021年4月15日   岡本全勝

4月11日の読売新聞、辻哲夫・元厚労事務次官の「コロナで見えた予兆 増える高齢者 病床再編が必要」から。
・・・新型コロナの大流行は、くしくも日本の医療提供体制の弱点を浮き彫りにしたのではないか。よく分析して、医療の総合政策を見直す必要があります。
コロナ禍では、病院がコロナ患者を受け入れきれず、入院待機者が膨れ上がった。その余波でがんなど本来の患者の入院診療も手いっぱいになる事態も招きました。
弱点の一つは、病院で医師や看護師が「薄い配置」になっている実態です。
日本の場合、人口あたりの医師や看護師の数は欧米とほぼ同水準である一方、病床数が過剰となっています。そうした中で、集中管理が必要なコロナ患者が数多く入院し、医療が逼迫したわけです。

もう一つは、医療提供体制が民間の中小病院に多く依存し、連携体制も不十分なので、機動的に動けなかったことです。民間病院は公的な病院と違って、行政の指導が及びにくく、病院間の連携もうまくいかないのです。こうした日本の医療が構造的に持つ弱点を改善し、よりメリハリをつけた医療提供体制にしていくべきです。
今回、もう一点気になったのが、開業医を中心とする「かかりつけ医」の役割がよく見えなかったことです・・・

11年目の東日本大震災復興活動への支援。募集中

2021年4月14日   岡本全勝

サントリー(株)が、「東北サンさんプロジェクト みらいチャレンジプログラム」を始めました。応募者を募集しています。日本フィランソロピー協会などとの共催です。
東日本大震災被災3県を対象に、地域の再興を目指して新たな活動を 立ち上げようという個人や団体の活動を支援します。1件あたり100万円を上限とし、給付総額3,000万円です。締め切りは、5月10日です。

たくさんの企業や団体が、被災地支援に協力してくださいました。10年が経って、津波被災地では復興が見えてきて、域外からの支援も終了しつつあります。サントリーは、このような形で、支援を続けてくださいます。ありがとうございます。

被災地の復興、地域の活性化に取り組んでいる非営利団体も多いです。財政的に苦しい団体もあるでしょう。ぜひ応募してください。関係者に、このような支援があることを、宣伝してください。

日本自治学会、休止

2021年4月14日   岡本全勝

日本自治学会が、5月15日に最後の総会を開き、活動を休止するそうです。

・・・地方分権一括法が2000年に施行されたのに合わせて、さらなる改革を進めてゆくために幅広く英知を結集しようと学会を立ち上げてから、すでに20年が過ぎました。
一括法が築いた分権改革のベース・キャンプから、地方自治を真にそれにふさわしい実質を備えたものに育て鍛え上げていくことをめざし、行政法、行政学、財政学など学界の研究者、さらにはジャーナリストたちを中核に全国各地で活動してきました。
分権改革は、現下の通常国会に第11次の一括法が提出されるなど、いまも続いてはいます。しかし、その内実は乏しく、足踏み状態にも見えます。この時点で学会を閉じることには忸怩たる思いもございますが、20年をひとつの節目として、いったん幕を引き、新たな展開を模索することといたします・・・

この文章の最後の段落に、分権改革の現状が表されています。2000年の第一次分権改革を経験した一人として、考えるものがあります。
大きな社会の改革を進め実現するには、理論ともに、社会の指導層や国民を巻き込む仕掛けや、社会の雰囲気が必要です。
自治体学会は、活動中です。