投稿者アーカイブ:岡本全勝

支援型リーダーシップ

2022年6月21日   岡本全勝

6月6日の日経新聞に、「社員の成長「下支え」 女性本部長、昇進悩み自分流磨く」が載っていました。

・・・住宅事業を手掛けるポラスグループのポラテック(埼玉県越谷市)に勤める園部雅子さん(44)の手帳には、折り畳んだ1枚の紙が挟んである。書かれた内容は「サーバントリーダーシップ」。支援型リーダーシップとも呼ばれる。約150人を率いる営業本部長になった今も、肌身離さず持ち歩いている。
時間を見つけては社内を回り、若手社員にも積極的に話しかける。サーバントリーダーシップと出合った課長時代から変わらない光景だ。
32歳で第1子を出産後、仕事と子育ての両立に悩んでいた時期だった。会社の幹部会で配られた資料の記述に目がとまった。聞き慣れない言葉だったが、社員の目標や成長のために相手の話に傾聴して共感しながら導くリーダー論だと知った。
入社以来、建設会社などに木材を卸す営業畑を歩んだ。当時から社内外で関わる相手のほとんどが男性。上司はぐいぐいと後輩を引っ張り、夜遅くまで会食をして人脈を広げる典型的な営業マンが多かった。これまで目にしてきた管理職とは全く異なる概念。「目指すべき姿はこれだ」と直感した・・・

・・・サーバントリーダーシップは1970年に米国で提唱された。中長期的な視点で職場づくりを進めることが必要とされ、周囲の信頼を得て主体的に協力してもらえるかどうかが鍵を握る。
とにかく社員と丁寧に対話することを心がけた。作業中でも話しかけられたら手を止め、相手の目を見て耳を傾ける。年齢が離れている若手でも、悩んでいそうな姿を見つけたら積極的に声をかけた。
こうした積み重ねのかいもあり、職場関係の悩みも耳に入ってくるようになった。つぶさに社員の状況を把握できれば、一人でトラブルを抱え込んでしまうのを防ぐことができる。取り組みはチームの営業成績の向上にもつながっていった・・・

「すみません」よりも「ありがとう」

2022年6月20日   岡本全勝

6月3日の朝日新聞オピニオン欄、相川充・東京学芸大名誉教授の「「すみません」よりも、「ありがとう」にしませんか」から。

・・・他人に何かしてもらうと、ありがたいとか申し訳ないとか、何らかの気持ちがわき起こります。大きく分けて二つの要素が、相手への気持ちを決めると心理学では考えられています。
一つ目は、「うれしい」とか「助かった」とか思うことで表されるような、自分の得た利益の大きさです。二つ目は、相手が自分のために費やした時間や労力、金銭などの負担の大きさです。二つの要素の大きさの合計が、「相手への気持ち」の大きさになります。心理学の研究で、これは世界の主要国で同じだと確認されています。

ただ、「自分の利益」と「相手の負担」のどちらを重視するかは、国や文化により異なります。欧米では「自分の利益」が重視されていたのに対し、かつて私が論文発表した研究では、日本では「相手の負担」が重視されていました。
個人主義ではなく集団主義の日本では、まず集団があって自分がいるので、互いに自分を譲って相手を立てます。そんな相手に何かしてもらえば「大変な思いをさせてしまった」という気持ちが先に来ます。だから日本人は、こうした場面で「すみません」「申し訳ありません」と、謝罪の言葉で対応することが多いのです。

ただ、感謝を示すのに「すみません」を繰り返していると「相手に迷惑ばかりかけている」という気持ちが募り、心の重荷が増えていきます。どうすればいいか。感謝したい場面では、きちんと「ありがとう」と言いませんか。「ありがとう」という感情を相手に伝えることで、満足感や自尊心が高まることもわかっています。

感謝を伝えるのは本来ポジティブな場面です。「すみません」とネガティブに自分を下げず、「ありがとう」と言ってポジティブを体験することが大事です。行動を習慣化すると、いずれその行動が人格に影響を与える。そうした心理学の考え方の実践で、心の負担を減らせ、周囲にも自分の心にも変化があるはずです・・・

朝日新聞、「国策」の責任

2022年6月20日   岡本全勝

6月20日の朝日新聞社会面、「「国策」の責任」(下)に、私のかつての発言が載りました。

・・・国から被害者への謝罪もない。
「経産省からおわびが一言もないのは理解に苦しむ」
11年3月31日。経産省の会議室に、総務官僚だった岡本全勝氏の強い口調が響いた。当時、津波被災地域を支援する事務方トップだった。
原発事故の対応は、津波被災者の支援体制に比べ大幅に遅れた。会議は経産省が主催。津波対策をまねて、福島の避難者を支援する組織を立ち上げようと、各省庁の局長級を集めた。
だが、経産省は各省庁に課題と報告をさせるだけで方針をはっきり決めない。原発事故が起きた後に被災地や住民がどうなるかの想定を全くしてこなかった。それが露呈した。
各省庁の担当者はいら立ちを感じていた。岡本氏が発言すると、出席者は一様に頷いたという。
その後、復興庁次官や福島復興再生総局事務局長になっても、岡本氏は経産省から復興庁に出向してくる官僚らに言い続けた。
「なぜ経産省は謝らない。原子力安全・保安院がお取りつぶしになり、謝る組織がなくなったからか」・・・

このいきさつについては、拙著『東日本大震災 復興が日本を変える』28ページに書きました。そこでも引用しましたが、福山哲郎・当時官房副長官がその会議に出席しておられて、著書『原発危機 官邸からの証言』(2012年、ちくま新書)に書かれています。
失敗を起こした組織が、取りつぶされることがあります。ところがそれでは、おわびや償いをする主体がなくなることがあります。私は、それを「お取りつぶしのパラドックス」と呼んでいます。「責任を取る方法4

今年の夏椿も終わり

2022年6月19日   岡本全勝

わが家の玄関横の夏椿。今年は元気よく、たくさんの花を咲かせてくれました。毎日10数輪も開いたのですが、そろそろ終わりのようです。
一日花なので、はかないです。

夏椿が咲きました」で書いた、もう一つの椿の剪定。刈り込みすぎたかなと思って、お向かいのお師匠様に伺いを立てると、「よいのじゃないですか」と合格点をもらいました。
「葉ではなく、枝を減らすように元から切ったら、こんなにさみしくなりました」と弁解すると、「まだ枝が混み合っている」との指導をもらいました。様子を見て、再度挑戦するか、来年頑張ります。

「知ってる、知ってる」

2022年6月18日   岡本全勝

原研哉著『低空飛行ーこの国のかたちへ』(2022年、岩波書店)の14ページに、次のような文章があります。
「情報過多と言われる今日、人びとは何に対しても「知ってる、知ってる」と言う。英語で言うと「I know! I know!」。ウイルスについても、ヨガについても、ガラパゴス諸島についても・・・。なぜか「知ってる、知ってる」と二回言う。しかし何をどれだけ知っているのか。情報の断片に触れただけで知っているつもりになっているように見える。」

指摘の通りです。なぜか「知ってる」を二回繰り返すのですよね。それは「知ってる」とゆっくり一度言うのと、意味が違うのでしょう。そして若い人にとって、知人との会話で「知らない」というのは、勇気が要ることかもしれません。

そして、次のような文章が続きます。
「だから今日、効果的なコミュニケーションは、情報を与えることではなく、「いかに知らないかを分からせる」ことである。既知の領域から未知の領域へと対象を引き出すこと。これができれば人びとの興味は自ずと呼び起こされてくるのである。」

インターネットとパソコン、スマートフォンの普及によって、膨大な情報を瞬時に得ることができるようになりました。しかし他方で、それらの機器と情報の虜になっていることも多いです。送られてくる情報を追いかけることで精一杯になり、またそれで満足することで、自ら考えることがなくなります。それは情報と時間の消費(浪費)であり、学習や思考ではありません。