投稿者アーカイブ:岡本全勝

「私は大丈夫」だから、あなたもだまされる

2024年5月1日   岡本全勝

4月22日の朝日新聞夕刊、西田公昭・立正大学教授の「「私は大丈夫」――だから、あなたもだまされる 自信捨て、違和感大事に」から。

オレオレ詐欺が登場してから20年以上になる。被害に遭う人は絶えず、警察庁によると、昨年は約4千件の被害が確認され、被害総額は130億円を超えた。記者(28)の祖母(81)も昨夏、100万円の被害に遭った。だまされてしまう人の心理を、立正大学心理学部の西田公昭教授(社会心理学)に解説してもらった。

――高齢者が被害に遭いやすいと言われます。
完全な勘違いです。家族の危機を察知し、時には銀行の制止を振り切ってまでお金を渡す。これは認知機能がしっかりしていないとできない。実際、働き盛りや若者、いろいろな世代が巻き込まれています。

――実際にオレオレ詐欺の被害に遭った人の8割近くが、「自分は被害に遭わないと思っていた」と答えたという調査結果もあります。
警戒できていないわけだから、だまされやすいのは当然ですよね。自分の弱さを知らない「脆弱性の無知」と言うんですけどね。自分が弱い、もろい、だまされやすいと分かっていないから、誰かが被害に遭ったと報道されても「ひとごと」としか思っていない。だから、無警戒なんです。

――だまされないためにはどう行動すればよいのでしょうか。
違和感を大事にできるかどうかが、一番大きなところだろうと思います。電話がかかってきた時点、話の内容、指示される行動におかしいと思えるか。
一度立ち止まって考えられるかどうかは、もともと、自分がだまされるかもしれないと思っているか、思っていないか。その差なんですね。
自分自身がだまされるかもしれないと思っている人の方が慎重に行動できるはずです。「自分は大丈夫」という自信を捨てること。私自身もだまされると思っています。
立ち止まるポイントは、お金の話が出たらすべて詐欺だと疑うことです。そのうえで、電話の相手が本人かどうか確かめる。自分の知る番号にかけて確かめれば良い。それが一番最初にできることです。

コメントライナー寄稿第17回

2024年4月30日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第17回「管理職を育てる組織へ」が4月26日に配信され、30日のiJAMPにも転載されました。

今回は、有名企業で起きている性能偽装の原因を取り上げました。調査に対して、部下は「開発スケジュールが厳しいことを上司に伝えても、上司が取引先に対しスケジュールの見直しを申し出ることはなく、むしろ、決められたスケジュールに間に合わせるよう指導を受けるのみであったため、スケジュールが厳しくても、上司に相談することはしないようになった」と発言し、管理職は「この業務の経験がなかったため、業務に詳しい担当者を信頼し、業務を一任していた」と答えています。

関与した当事者たちは悪いのですが、彼らにも言い分があるでしょう。「私はこの分野の専門家でなかったが、会社の人事でこの席に着いた」「同僚も上司も、このような仕事の仕方を続けていた。なぜ私だけが」と。

職場管理の訓練を受けずに専門外の部署の管理職に指名された職員と、管理職に相談してもどうせ何も変わらないと思っている部下。彼らより、そのような人事を行った組織と幹部の罪は大きいのです。

食料自給率の低下

2024年4月30日   岡本全勝

4月24日の日経新聞夕刊、山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の「食料自給率、EUと日本なぜ明暗」から。

・・・日本と同様にフランスやドイツなど欧州連合(EU)諸国も第2次世界大戦後は農業生産の激減による飢餓に見舞われ、食料増産に努めた。食料自給率は、1961年の78%から38%へ半減した日本に対し、フランスでは99%から125%、ドイツでは67%から86%へ上昇している。

60年ごろに食料自給が実現できるようになると、日本も独仏も農産物価格(コメ農家が大半を占めていた日本は米価)を上げて農家所得を引き上げようとした。需給が均衡する価格よりも高い価格を設けたので、生産は増えて消費は減り、供給過剰が生じた。
ここまでは同じだが、過剰処理の仕方が違った。日本は補助金を出して減反(生産調整)し生産を減らした。コメ生産は終戦直後の587万トンから67年には1445万トンに増えたが、今はエサ用などを入れても720万トンにすぎない。日本の食料自給率低下の原因は国内市場の縮小に合わせたコメ生産の減少だ。EUは生産を拡大して過剰分を補助金付きで輸出した。食料自給率は生産を消費で割ったものだから、輸出すると100%を超える。EU農業は食料安全保障のための生産確保という使命を忘れなかった。

次に93年にEUは価格を下げて農家への直接支払いに転換した。補助金なしでも輸出できる価格競争力がついたばかりか、輸入していた飼料穀物を域内産で代替し、さらに食料自給率は上昇した。今やEUは世界最大の小麦輸出地域である。
我が国も輸出を振興し始めた。しかし、小手先の対策ばかりで、減反をやめて米価を下げ、世界最高峰の品質を持つ日本米の輸出を大々的に行う考えはない。米国のコメ小売価格は日本よりも高くなっているが、米国のスーパーには数年前までなかった韓国産のコメが並んでいる・・・

春の大型連休前半

2024年4月29日   岡本全勝

今日は4月29日、春の大型連休前半が終わります。皆さん、楽しんでおられることでしょう。
連休の度に、思うことがあります。報道は、行楽地で楽しむ家族などを伝えてくれます。それはよいことですが、それを支えて働いている多くの方がおられることです。
病院、消防、警察、鉄道やバスは、交代制ですが無休です。行楽地の宿泊施設、食堂、売店などは、休みの時期こそかき入れ時です。関係者の方に、感謝しなければなりません。その子どもたちは、さみしい思いをしていることもあるでしょう。

勉強を頑張っている学生も多いでしょう。
原稿に追われている執筆者もいます(苦笑)。こちらも、かき入れ時です。
とはいえ、いつものことですが、連休中に原稿を書いたり、本を読もうとする「計画」が間違いですね。気分はゆったりするし、孫を公園に連れて行かなければならないし、近所では催し物があるし。天気がよくて、よかったです。

名古屋まで、野球大仏を見に行っている人もいます。名古屋に大仏がいくつもあるのは、知りませんでした。しかも、昭和になってから作られているのです。「矢場とん」も、知りませんでした。

会社への忠誠心いらない

2024年4月29日   岡本全勝

4月21日の日経新聞、出木場久征・リクルートHD社長の「海外で買収、英語より熱量」から。

日本企業は「失われた30年」のトンネルを抜けつつあるが、成長力では海外企業に見劣りするのが実情だ。どうすればカギを握るグローバル化とデジタル化を加速できるのか。米社のM&A(合併・買収)により2つの課題に挑んだリクルートホールディングス(HD)の出木場久征社長が自らの体験を踏まえて語った。

――今でこそインディードの買収は海外M&Aの成功例と言われるが、勝算があったのか。
「当時のインディードの売上高は年60億〜70億円だった。どこかの新聞が『これがまた日本企業による高値づかみにならないことを祈る』と書いた記憶がある。個人的にも失敗したら責任をとって辞めるしかないと思い、マンションや車、家具を売って渡米した」

――リスクが高いと分かりながら買収を決めたのはなぜか。
「本当にビジネスを変えなければいけなかったからだ。あらゆる事業領域で米グーグルにやられるリスクがあり、日本の人口が減る中で、当社の事業は人口が増えないとどうしようもないといった課題も抱えていた。八方ふさがりで、これしか食べるものがないという状態だった」
「社内では『おまえ、失敗したらどうするの』と聞かれ、『またやるでしょう』と答えた。人材は当社が一番強いビジネスなので、50年先のことを考えたら失敗しても再挑戦するしかない。このように追い込まれた方が成功する確率が上がるという気がしている」

――では、なぜ成功したのか。
「僕は会社、リクルートのために生まれてきたわけではなく、『こんなことが世の中でできたら楽しいな』という気持ちで仕事をしている。こうしたモチベーションでやる方がうまくいく確率は上がるはずだ。インディードの創業者と気が合い、やりたいことが近いという幸運もあった」

――リクルートHDの社長として、6万人近い社員に会社への忠誠心は不要と言えるか。
「そういうことはめちゃくちゃ言っている。社員から『他社からこのような条件で誘われている』と聞いたときは、『すごくいいね。僕が君の立場だったらすぐに行っちゃうけどね』などと話している。引き留めないのか尋ねられることもあるが、だめなら戻ってくればいいし、一人ひとりが楽しくやるほうがうまくいく」

(奥平和行・編集委員の解説)
「なぜそれが条件になるんですか」。リクルートHDの社長に就く際、帰国を求められなかったかと尋ねると、出木場氏は驚いた表情をみせた。
20年近く前、英国出身のハワード・ストリンガー氏がソニーのトップに就いたときは、日本に住まないことへの非難が社内外で相次いだ。経営者の居場所が問題にならなくなったことは、日本のグローバル化の進展を浮かび上がらせる。
一方、社長の若返りは進んでいない。出木場氏は45歳で現職に就き、前任者よりも3歳若い新トップとなった。だが、日本全体に目を向けると30年以上にわたって新社長の平均年齢は上昇を続けている。
年齢がすべてではないが、出木場氏は「自分の成功パターンで判断するようになり、老害になっているのではないか」と打ち明ける。非連続な変化が必要な多くの組織が耳を傾ける必要がある指摘だ。