投稿者アーカイブ:岡本全勝

新地方自治入門 補足3

2004年5月9日   岡本全勝
【街の醜さ】
朝日新聞7月6日夕刊に文化欄に、丸谷才一さんが連載「袖のボタン」で「内の美と外の美」を書いておられました。
古代日本語では、所属の助詞が2つあったとのことです。一つは「我ガ背子」のガで、自分あるいは自分に近いものを受けます。もう一つは「諸人ノため」のノで、それ以外のものを受けます。前者を内扱いのガ、後者を外扱いのノというのだそうです。
そこから始まって(このあたりが格調が高いですね)、日本人にとって内と外の区別は重要で、しかも内を重んじ外を軽んじてきたことを論じておられます。そして話は、都市景観の醜さに発展します。日本人の坪庭の思考と、西洋建築の外見を重んじる思考との差です。電線類の醜さを取り上げ、海外旅行に行っても見方が変わらないことを指摘しておられます。(2004年7月18日)
【第7章】
社会的共通資本(p193)については、
内閣府国民生活局が、15年8月に「ソーシャル・キャピタル-豊かな人間関係と市民生活の好循環を求めて」(2003年8月、国立印刷局)をまとめ、出版しました。
宮垣元著「ヒューマンサービスと信頼-福祉NPOの理論と実証」(2003年11月、慶應義塾大学出版会)が、教育や福祉といった対人サービスにおける、信頼・情報・NPOの機能を分析しています。
そこでは、福祉サービスが家庭から行政へ「外部化」することによって、信頼の役割がどのように変化するか、NPOの場合はどうかなど、をわかりやすく分析しています。また、コミュニティを、「地域コミュニティ」と「テーマ・コミュニティ」に区分するなど、示唆に富んでいます。(2003.11.24)
【文化の効果】
14日の読売新聞「地球を読む」で、白石隆京大教授が「韓流と東アジア、文化が一大産業に」という題で、韓国ドラマなど文化商品による、東アジアの「一体化」「均質化」、アジア人意識の形成を論じておられます。(2004年11月15日)
【第8章】
山脇直司先生が、「公共哲学とは何か」(ちくま新書)を出版されました。先生は、東京大学大学院総合文化研究科授です(3月まで私も客員教授を勤めていました)。先生の主張は、
①公私二元論でなく、政府の公・民の公・私的領域の三元論
②経済・科学・教育などにおいても、「公共性」が必要であること
③学問においても、現状分析だけで終わらせる実証主義や、批判だけして対案を提示しない批判主義でなく、「現状分析」と「あるべき社会像の追求」と「実現可能性の探求」を考えるべき
④「公共性と個人の関係を重視する」。滅私奉公でも滅公奉私でもない、「自己-他者-公共世界」論。中間集団の重視、などです。
拙著「新地方自治入門」(第7章地域の財産とは、第8章公の範囲は)での主張と、大きく重なっています。意を強くしました。ご関心ある方は、ご一読ください。
私は、「政治をシステムとして理解する現在の政治学」に不満を持っています。大学の講義でも、政策=アウトカムを分析の軸に据えました。拙著では、p280以下で触れています。(2004年5月9日)
【第10章】
日本の政治のページをご覧ください。

秘密の黒部・立山ルート

2004年5月6日   岡本全勝

立山黒部アルペンルートは、富山県側から北アルプス立山直下、黒四ダムを経て、長野県大町に出る有名な観光ルートです。今頃は、雪の壁が大きく(10メールを超えているそうです)残っています。このルートは立山を東西に横切るコースですが、立山(黒四ダム)から、北に進むルートがあります。
工事用トンネルを使い、トロッコやケーブルカーを乗り継いで、観光用トロッコ列車に至ります。途中、地下発電所や剣岳を裏から(東から)見ることができます。普通はよほどの山登り・健脚の人しか、行くことができないところです。関西電力の協力で、ヘルメットをかぶって、工事用トンネルを通らせてもらうのです。NHKのプロジェクトXで取り上げられ、2002年暮れの紅白では中島みゆきさんが歌った場所です。
予約制なので人数も限られ、あまり知られていません。普通の地図には載っていない「秘密のルート」です。平成8年からこのように、通れるようになりました。ここに至るまでには、たくさんの関係者のご努力がありました。山口支社長、お世話になりました。

地方税制改革の方向

2004年5月3日   岡本全勝
先日、地方自治制度改革についての久元論文を紹介しましたが、地方税については、板倉敏和自治税務局長執筆「地方分権と地方税」があります。「自治研究」4月号(第一法規)に掲載されています。今後の税源移譲の方向や、分権を進める上での地方税制の問題点について議論しておられます。
この論文も、「決まったことの解説」ではなく、「私見」を展開しておられます。わかりやすい論旨です。一読ください。

三位一体改革8

2004年4月30日   岡本全勝
16年度の動き
麻生プラン
4月26日 麻生大臣「三位一体改革のプラン」麻生プランを発表。
17年度と18年度のポイントは、
①所得税から個人住民税への税源移譲(3兆円)の先行決定
②残り3兆円の国庫補助負担金改革
③17年度の一般財源(地方税・地方交付税等)総額を前年度と同水準に、です。
基本的方向は、「地方が元気になる改革」「地方の自由度を拡大する改革」「自主財源(地方税等)を拡充する改革」です。政府案になるには、紆余曲折があると思います。しかし、改革は止まることなく進むと思います。新聞報道、特に反対派の論議を、注目していてください。
財務省の反対
今日の各紙朝刊に、麻生プランと昨日の諮問会議概要が大きく載っていました。諮問会議のHPにも、資料が載りました。私の見た限り、財務大臣だけが反論されたそうです。
①税源移譲は、既に16年度対策で決定されたことです。3兆円を18年度までに決定することに、なぜ財務省は反対するのでしょうか。もし、その金額に達しなかったら、地方税を国にお返しするとまで言っているのに。
②17年度の一般財源総額を、16年度並みにするということについて。財務省は、「それでは地方行革が進まない」と言っているようです。
では、質問します。16年度の改革に地方から不満が出たのはなぜでしょうか。それは、今回の地方歳出削減が厳しかったからです。麻生大臣は、「日本の財政は危機的状況にある」と言っています。また、民間経営者出身です。歳出カットは、今後とも続けると表明しています。来年度も、カットは続くでしょう。その場合、一般財源は減らさず、借金である地方債が減ることになるでしょう。
16年度予算において、麻生大臣と地方団体はこれだけ歳出カット・財政再建に貢献しました。財務省と国家予算は、何をどれだけ削減されたのでしょうか?(10年前のバブルで税収が増えた時も、地方はそれまでの特例借金を返済し、大蔵省は赤字国債を返済しなかったんですよね。それで今になって、「国の方が借金が多い」と言っておられます。)
新聞記事では、「総務省と財務省の戦い」と、いつものように議論を「矮小化」する記事もありました。記者さんもデスクも、もう少し勉強して欲しいですね。地方分権を進めたいのか、そうでないのか。もし、このHPが健在なら、2~3年後に、もう一度記事を読み返して検証しましょう。そのためにも、記事は署名入りで書いて欲しいですね。(4月27日)
改革の評価
麻生プラン」について、の続きです。私は、次のように考えています。
改革が評価されるためには、もちろんその内容が良いものである必要があります。しかし、それだけでは十分ではありません。
①まず、スピード感が重要です。時間をかけていては、国民の支持を受けることは困難です。決めたら、さっさと実行すべきです。
②もう一つは、シンプルであること=わかりやすいことです。骨太である方が、わかりやすいですよね。変な小細工や妥協をしないことも重要です。
もちろん、改革が国民に理解され、支持されることが必要です(しかし、改革は多くの場合痛みを伴うので、全員の賛成を得ることは難しいです)。その他に、これらが欠けていると、せっかくの改革も、国民の評価が低くなります。
今回の麻生大臣提案は、①スピード感については、良いと思います。2月に地方団体から不満が出て、4月に対応しています。また、これから「骨太の方針2004」が決まります。早くこれを政府の方針と決定し、地方団体を始めとする関係者を、安心させるべきでしょう。また、7月には参議院選挙もあります。ここからは、政治の世界ですが。
②わかりやすさについても、良いと思います。かつ、かなり骨太だと思います。みなさんはどう思われますか。(4月28・29日)
新聞記者の予想
今日は国会がないので、課長室で資料整理をしました。何人かの記者さんが訪ねて来られて、麻生プランについて議論しました。「麻生大臣は、この案にかなり力が入ってますね」「財務省が反対しているけど、麻生プランは実現するでしょうか?」と尋ねられました。
彼らと議論した結論は、「財務省が代案を出さない限り、これで行くしかない」でした。
「財務省が、『たとえば××補助金を1.5兆円を削減する』と、具体的な補助金名を挙げれば、財務大臣の言うように補助金削減が先行するんですよね」「財務省は、補助金名を挙げないでしょうねえ。それができるのは財務省だけなのに」
「でも、反対だけじゃあ、総理も困るでしょう」「諮問会議で、他に大きな玉がないから、これが進むかは焦点ですよ」
「17年度の一般財源を前年度並みにすることに、財務省は反対しているけど、地方税収が増えれば、赤字地方債と交付税の特例加算分が減って、国も助かるのに」
「それでも、財研(財務省記者クラブ)の記者は、財務省寄りの記事を書くんですよね」「財務省は、強力に根回ししますよ」「麻生プラン実現のために、総務省はさらに汗をかかないと」などなどでした。(4月30日)