投稿者アーカイブ:岡本全勝

政府の企画部

2007年4月26日   岡本全勝

先日、経済財政諮問会議が果たしている、政府の「企画部」としての役割に触れました(魅力ある国を作る)。それについて、少し解説します。
日本政府(霞ヶ関)には、人事部と企画部がありません。この二つは、企業であれ地方団体であれ、少し大きい組織なら必ずあるものです。各省にはあるのですが、政府全体の人事部と企画部がないのです。その企画部不在を埋めたのが、経済財政諮問会議です。

まず第1に、各省間の政策の調整、優先順位付けがあります。これまでも、各省間で、あるいは内閣官房が各省の政策を調整することはありました。しかし、それは優先順位付けまで行かず、「寄せ集め」に近いとの批判があります。かつての総理所信表明演説・施政方針演説も、各省から出された「短冊」=パーツを寄せ集めただけとの批判もありました。
省庁改革の際に、省庁間政策調整システム(「省庁改革の現場から」p39)が定められましたが、十分機能していないようです。また、財務省の予算編成も、この点では十分な機能をしていないようです。
すべての省の意見を盛り込むだけなら、楽です。右肩上がりの時代なら、伸び率に差がつくことはあっても、すべてを飲み込むことができます。しかし、削減しなければならない場合、優先順位をつけなければならない場合は、どれかに泣いてもらう必要があるのです(参照、拙稿「予算編成の変化」月刊『地方財務』2003年12月号)。
県庁や市役所では、知事や市長がそれを判断します。しかし霞ヶ関システムでは、それはできないのです。小泉首相は、国債発行上限を30兆円とし、それに収めるために、公共事業や地方交付税を削減しました。その際に、諮問会議が機能を発揮したのです。

第2に、これに関連しますが、他省の政策にくちばしを挟む、しかも批判することが始まりました。これまでは、それぞれの省が縄張りを持ち、他省はそれには口を挟まないという不文律がありました。もちろん、各省は「分担管理事務」を持ち、それぞれが仕事の範囲を決められています。
しかし、というか、だから、政府全体の立場に立って、ある省の仕事に文句を言う仕組みがなかったのです。諮問会議は、有識者ペーパーという仕組みを使って、他省の政策にくちばしを挟むことを可能にしました。
内閣・閣議は、全会一致が原則です。省間で対立すると、「次官会議で反対するぞ」という脅しで、止めることができたのです。これでは、改革などは進みません。

第3に、政府全体の政策を、明示するようになりました。「骨太の方針」で、政府がどのような政府を目指しているかが、分かるようになったのです。県や市町村は「総合計画」を作っています。それで、その団体の政策の全体像が分かります(もちろん、総花だとの批判もありますが)。日本政府の場合は、それがありませんでした。各省は、それぞれ政策パンフレットを作っていますが、政府全体のパンフレットはありません。もちろん、諮問会議は経済財政が守備範囲なので、安全保障などは含まれてはいません。

第4に、政府全体から見た政策で、各省が取り組まない政策を、取り上げるようになりました。各省は自分に都合のよい政策には取り組みますが、都合が悪い政策・面倒な政策には取り組みません。各省にまたがっても、メリットのある政策なら取り組みます。例えば、ITでは、総務省と経産省が功を競います。しかし、日本を魅力ある投資先にする、FTAのために関税引き下げに取り組むなどは、どこも取り組まない、あるいは進まないのです。各省の分担管理事務・問題関心事項から漏れ落ちた政策課題は、取り上げられることがなかったのです。

今回も、大胆な単純化ですが、私はこのように考えています。今日は、行政組織論からの議論を書きました。このほかに、諮問会議の議論の過程で、霞ヶ関内の「利害の対立」を見える形にしたといった功績もあります。また、今の諮問会議が問題ないのかということにも触れる必要がありますが、これらについては日を改めて書きましょう。

地方消費税拡充議論

2007年4月23日   岡本全勝
22日の毎日新聞社説は、「地方消費税拡充 これを機に抜本改正論議を」でした。
菅義偉総務相が、地方消費税の拡充を問題提起した。現在、5%のうち1%分が配分されている消費税の地方取り分の拡充を、6月に策定する「骨太の方針」に盛り込むべきだというのだ。菅総務相はその見返りとして、法人事業税と法人住民税の国税への移管を提案している。
菅提案が経済財政諮問会議の場で取り上げられれば、安倍晋三政権下で封印されてきた消費税率引き上げ問題や税制の抜本改革を巡る論議が、再度動き出すことになる。参院選に向けて国、地方を通じた財政再建や地方分権を進めていく上で避けることのできない税制の抜本改革が隠されたままという、異常な状況に終止符が打たれるということだ・・
詳しくは、原文をお読みください。

地方財政改革論議

2007年4月23日   岡本全勝

三位一体改革が、予想以上に進んでいるので、改訂の準備に入りました。出版後の動き(三位一体改革)については、進む三位一体改革-評価と課題」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2004年8月号、9月号に載せました。これを加筆すればいいのですが、全体構造から変えようと思っています。目標は2005年春です(決意表明)。(2004年9月20日)→すみません。目標時期を秋以降に延期してください。(2005年5月5日)
いよいよ、着手しました。「三位一体改革-その成果と課題」(仮称)です。「地方財政改革論議」の改訂というより、その続きになります。(2006年9月24日)
と言いつつ、挫折してます。(2007年4月7日)
(お詫び)
すみません、挫折しました。8割ほど書き終えたのですが、出版時機を失してしまいました。「進む三位一体改革ーその評価と課題」を連載したので、それを加筆すればすむことだったのですが。私の怠惰のせいです。「三位一体改革の記録」として、出版しておきたかったのですがねえ。(2007年4月23日)

審議会の機能不全

2007年4月22日   岡本全勝
20日の日経新聞「雇用ルールを問う」は、「時代遅れ、労政審議会の疲弊」を取り上げていました。労働政策審議会は、厚生労働大臣の諮問機関で、雇用法制を決める際に審議会に諮問する(意見を聞く)ことが通例です。労働行政は、厚労大臣が責任者ですから、大臣が決めて法律案をつくり、内閣で決定して国会に提出すればすむ話です。しかし、「関係者の理解を得る」という理屈で、このような審議会の意見を聞く、あるいは原案を審議会がつくることが、これまでの日本の行政では多用されてきました。
特に、労働関係は、使用者代表と労働者代表という対立する利害の代表が意見をぶつけ、第三者である有識者(学者など)が間に入るという構成になります。医療(医者対支払い側)なども、同じ構図です。もっとも、記事が指摘しているように、原案は官僚が準備し、上手に結論(落としどころ)に持って行くのです。
今回浮き彫りになったのは、このメンバー構成です。労働組合代表が、労働者の代表として入っているのですが、労働組合の組織率は2割を切っています。パート労働者・フリーター・外国人労働者などは、そこから漏れ落ちます。パート労働者の処遇の低さに対し、これでは機能しません。審議会は、一部の者の既得権益保護になってしまうのです。
これまでは、審議会で労使が手を結べば結論が出、国会も通るという構図でしたが、それでは機能しないのです。そもそも、国民の間の利害対立を解決するのは、国会の仕事です。それを、審議会に委ねてきたのが、間違いです。
審議会の問題点については、拙稿「中央省庁改革における審議会の整理」月刊『自治研究』(良書普及会、2001年2月号、7月号)をご覧ください。