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三位一体改革評価:誰が勝ったか負けたか

今回の三位一体の経緯と成果について、「誰々が勝った、誰々が負けた」といった新聞の解説記事があります。そのような記事に、惑わされてはいけません。そのような記事が出るのは、勝った方がそれをカモフラージュするために、「私の方が負けたんです」と流す「陽動作戦」です。→三位一体改革その3に続く

ホリデーショッピング

本日(12月23日)米国商務省が発表した11月の米個人消費支出は、7兆8958億ドル、前年に比べて0.4%増とのこと。相変わらず米国の個人消費は好調なようです。
11月第4木曜日のサンクス・ギビング・デーの次の日(通称「ブラック・フライデー」)からクリスマスにかけては、米国消費者が最も買い物をする季節。特に日本の正月の初売りにも例えられるブラック・フライデーは、米国では1年で最も小売業の売上げが多い日といわれています。ブラック・フライデーにあわせ、店側は、事前の広告はもちろん、早朝(朝6時等)からの開店、様々な割引(早いもの勝ち、早朝割引等)をオッファーし、消費者もそれに応えます(笑)。
この雰囲気を味わってみようとブラック・フライデーの当日に近くの大型ショッピングモールに出かけてみましたが、その賑わいはものすごいものでした(報道に寄れば、米国小売最大手のウォルマートでは、今年のブラック・フライデー1日の打ち上げが15億2千万ドル、1日の売上げとしてはこれまでの最高を記録したとのこと)。いつもは、簡単に見つかる駐車スペースもなかなか見つからないくらいの混みようでした(通常大型ショッピングモールには何千台分もの駐車スペースが用意されております。)。日本でいえば、正月初売りやバーゲンの初日といったイメージに近いでしょうか。
それ以来、ほぼ毎週末に近くのショッピングモールをのぞきに行っているのですが、大きな買い物袋を持って歩き回る人の数に変化はないようです。購入しているのは主にクリスマスプレゼントとクリスマス関連商品(ツリー、オーナメント等)でしょうか。米国人のクリスマスにかける意気込みは本当に凄まじいものがあります。
ちなみに、ワシントンDCエリアにもティファニーなどの高級店が存在しており、12月21日(日)にリサーチのために訪れてみたところ、それはそれは大変な混みようで、ラッピングに並ぶ人の数は20人を下らないという状況でした。どこも同じですね。
それでは、我が家はこのホリデーショッピングシーズンに何を買ったかと言えば、特別なものは何も買っていません。なぜなら、クリスマス後にはもっと安くなることを知っているからです。もちろん、既に”いいもの”は売れてしまって残り物しかないかもしれませんが、残り物の中にある「福」を探す旅に出たいと考えています。ただし、このような考えが日本経済をいつまでも停滞させる原因なのかもしれません。  
(陰の声:美人の奥さんにティファニイでペンダントを買ってあげれば)

確認を忘れた記事

国の予算の大臣折衝の結果が、昨日のテレビニュースや今朝の新聞に載っています。次の記事を読んで、変だと思いませんか。
「財務大臣は、警察庁については、地方警察官を3150人増員し、3.5億円を認めた」
ふーん、これだと1人あたり10万円あまりですよね。それなら3千人といわず、30万人ぐらい増員すればいいのに。僕のポケットマネーで、2人ぐらい雇おうかなあ。年間10万円なら。
たぶん、こういうことだと推測します。警察官は県の職員で、その給与や活動費は県庁が負担しています。国が負担しているのは、ピストル代です。これは、国の現物支給です。警察官は一般職員より給料も高く、経費も含めると1人あたり1千万円を超えます。その経費は、地方財政計画に計上します。それは総務大臣の仕事です(拙著p90)。16年度の地財対策には、この増員分も織り込んであります。
地方公務員の数を、財務省が決めているような報道。そして、「1人あたり10万円」を、変だと思わない記者。予算編成とその報道については、まだまだおかしなことがありますが、それについてはまたの機会に。

三位一体改革その3

2003年12月
一般財源化と地方の自由度
三位一体改革が、進みつつあります。今回の補助金廃止削減には、いくつかのものが含まれています。それを解説しましょう。

まず、地方の仕事がなくなるものと、地方に仕事が残り補助金がなくなる代わりに、一般財源で賄うことになるものがあります。後者(一般財源化)の場合は、国に対して補助金の申請をしなくてよくなり、結果についての国による検査もなくなります。その財源は、地方税か地方交付税あるいは一般財源としての交付金となるので、国の指図無しに自由に使うことができます。

しかし、その事務の仕方が地方団体の自由になるかは、別のことです。義務教育職員給与費の国庫負担金がなくなり、地方税に振り替えられても、教職員を設置する基準を定めた法律がある限りは、地方の仕事の自由度は高まりません。
「地方団体の自由度」には、二つの軸があります。
①お金の自由度(縛り)軸
 A:国庫補助負担金で国の縛りがある
 B:一般財源で地方が自由に使える
②仕事の自由度(縛り)軸
 a:国による法令の縛りがある
 b:法令の縛りがなく、地方が自由に仕事ができる
もっとも、aからbには、いろんな段階があります。
ⅰ:事務の実施が義務付けられている(戸籍の受付)
ⅱ:やり方が決められている(道路の幅の基準)
ⅲ:仕事量も決められている、あるいは仕事量が自由にならない(義務教職員の配置)です。
ここでは、簡単にⅲをaとしておきます。

①を縦軸と②を横軸の表にして、4区分にするとわかりやすいのですが、うまくHPに書けないのですみません。
Aa(左上)の例:義務教職員、生活保護
Ab(右上)の例:道路建設(補助事業)、
Ba(左下)の例:高等学校職員、警察官
Bb(右下)の例:独自の福祉、単独の公共事業

すると、左上のAaから右下のBbに持っていくと、地方の自由度がもっとも高まるのです。義務教育費国庫負担金をなくしても、それだけでは①軸でAaからBaになるだけです。②軸の方は変化ありません。(拙著p133)(12月14日)

三位一体改革:初年度の成果
12月18日に平成16年度地方財政対策が決まり、三位一体改革の概要も決まりました。→16年度地方財政対策の概要

三位一体改革評価:始めの一歩
新聞などで、来年度予算での三位一体改革の評価が出始めています。私は、次のように考えています。

「一般財源化の金額が少ない」「税源移譲になっていない」という批判について。その批判は一部当たっています。
(1)今年度国庫補助金削減は1兆円を達成しましたが、その内訳は
①一般財源化:0.2兆円
②暫定的一般財源化:0.2兆円
③公共事業等の削減(事業量の減):0.5兆円
です。確かに本格的一般財源化は0.2兆円でしかありません。
(2)一般財源化等は0.6兆円ありますが、その内訳は
④所得譲与税化:0.4兆円(上記①と前年度に交付金化したものの合計)
⑤税源移譲予定交付金化(暫定):0.2兆円
です。これらは一般財源ですが、確かに地方税になったものはありません。さらに、地方の自由度が高まったかについては、上に書きました。

今年度は「始めの一歩」なのです。
政府の方針は「今後3年間で補助金4兆円削減、基幹税で税源移譲」です。まずは1年目の課題を果たした、と言っていいでしょう。これが3年間続き、そして地方税に本格的に税源移譲されれば、公約達成です。
「一年目が十分でない」という批判はあるでしょうが、進んだことを評価してほしいと思います。これまで永年、関係者が叫びつつも、ちっとも進まなかったことが進んだのです。
批判よりも、来年再来年を「厳しい目で監視」してください。批判だけでは何も生まれません。それよりも、今回の成果を後2年間で立派なものにするように努力すること(させること)の方が大切だと思いませんか。

今回の成果を「だめだ」といえば、喜ぶのは税源移譲反対派です。「だから、これ以上の税源移譲は止めよう」と言い出します。一月ほど前には、「税源移譲をすると、地方団体間の財政格差が拡がる」という当たり前のことを、さも大事件かのように1面で書いた新聞もありました。
マスコミの方にお願いです。皆さんは、税源移譲を推進したいのですか、それともその動きを壊したいのですか?厳しい批判でいいですから、将来の成果につながるような批判をして、応援してください。(12月20日)
【三位一体改革評価:誰が勝ったか負けたか】
今回の三位一体の経緯と成果について、「誰々が勝った、誰々が負けた」といった新聞の解説記事があります。そのような記事に、惑わされてはいけません。そのような記事が出るのは、勝った方がそれをカモフラージュするために、「私の方が負けたんです」と流す「陽動作戦」です。
今回は、「これまで続いた中央集権をお金の面で変えよう」という、政府の方針を実行したものです。それを、「勝った負けた」という次元に落とし込むこと自体が、変ですよね。もしそのような次元で見るなら、次のように見ることができるでしょう。

勝った人は総理です。負けた人がいるなら、その総理の方針に楯突こうとしたか、サボタージュをしようとした人でしょう。それは、3回の局面で出てきました。
①11月18日に総理が、諮問会議の場で「16年度予算で国庫補助金1兆円削減、税源移譲」と指示したこと。
もしそこであわてた人がいたら、?ですね。閣議で6月に「3年間で4兆円」と決めました。誰だって、それなら1年目は、その3分の1と考えますよね。
②12月10日に、「生活保護費負担金の率を削減する案」を官邸が拒否した(という報道がある)こと。
補助率削減は改革の趣旨に反すると、官邸(総理)が明確に指示されたのです。補助率削減では、地方の自由度は増えないからです。12月1日に官邸で開かれた全国知事会議で、各県知事が総理に「それは止めるべき」と意見を述べました。
③12月15日頃に、ほぼ、たばこ税でと決まりかけていた(政府税調案)税源移譲が、自民党と総理との連絡で所得税(譲与税)でと、変更になったこと。
これも、たばこ税では総理の公約に合わないことが、決め手になったと思われます。

こう見ると、「負けた負けた」という発言があること自体が、変ですよね。ということは、そのような発言をするのは、勝ったことを隠すためでしょう。あるいは、「勝った人」を作り上げて、それをたたくためでしょう。だんだん読めてきますよね。それにしても、なぜ記者は、そんな作戦に引っかかったり、そのような話のお先棒を担ぐのですかね。(12月22日)

前年どおりの記事、発表資料を鵜呑みにする記事

地方自治体の予算の基礎になるのは、国の予算ではなく、地方財政計画です。また、国民生活に影響することも、国の予算より、地方財政計画や市町村の予算の方が大きいのです(参照地方財政の仕組み・マクロ)。
ほとんどの行政サービスは、地方自治体が行っています。国の予算の多くは一般会計で実施されるのではなく、地方財政計画を通して実施されます。また、国の予算をもらわずに地方自治体が実施するサービスもたくさんあります。(拙著第4章)。
国の一般会計予算は「国の都合」であって、それがそのまま地方自治体や国民生活に影響するわけではありません。交付税の金額も国の一般会計の数字ではなく、実際に配られる金額(地財計画計上額)が意味があります。でも新聞は、毎年国の予算を大きく取り上げます。
慣習(去年の紙面)に縛られ、財務省の発表に依存し、国民(読者)への影響を忘れているのは、マスコミです。また、国の予算を非常に大きく報道して、中央集権を再生産しているのも、マスコミの罪です。