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日本青年館清渓セミナー

今日は、日本青年館清渓セミナーに行ってきました。講演とパネルとに出演しました。パネルは、福岡政行立命館大学客員教授と穂坂邦夫前志木市長とでした。観客は主に市町村議員で、150人ほどの方が熱心に聞いてくださいました。数字や事実を基に、私の日頃の考えを主張してきました。皆さん熱心なので、ついつい調子に乗って、厳しいことをしゃべりました。申し訳ありません。でも、これが事実なのです。

三位一体改革63

13日の読売新聞に、全面広告が載っていました。「日本の教育改革を進めるためにも、義務教育費国庫負担制度は絶対必要です」という内容で、全国の教育長・小中高学校長と日教組などがスポンサーです。
去年もこんな広告がありました(10月27日31日)。私の知る限りでは、読売新聞だけに載っています。何か意図があるのでしょうか。でも、この広告って、理解者を増やしているのでしょうか。
文部科学省・教育委員会・学校長と、日教組が「同盟軍」であることは、去年も指摘しました。労働組合もまた、税金(補助金)配分に連なる「業界」でした。文科省と日教組って、何を対立していたんですかね。
学校長や教育委員会も、「私たちに任せてくれれば、良い教育をして見せます」と主張してほしいですね。「私たちは文科省の決めたことを実行する方が良いです」ですという主張は、情けないです。でも、ここまで言わせるようにした文科省の管理「教育」は、成功したと言うことですね。
「国庫負担金を一般財源化したら、各県ごとにこれだけも財源に差がつきますよ」という表がついていました。でも、現在だって負担金は、必要額の2分の1しか交付されていません。正確には3分の1以下になっています。でも、各県ごとに差がついていないんですよね。それは、交付税制度があるからです。ずるいですよね。この主張を貫くなら、「現在でも2分の1は一般財源化されていて、その分は各県ごとに差がついています」「2分の1の負担金をなくすと、現在の格差が2倍に広がります」と証明すべきでしょう。こんな主張では、算数の先生としては失格ですね。お金の話もいいですが、教育の荒廃についても広告を出してほしいです。その際には要求だけでなく、「私たちの責任」という視点もお願いします。(11月15日)
16日の読売新聞「論点」では、小西砂千夫関西学院大学教授が「交付税制度の再生、地方税での負担増も必要」を書いておられました。
朝日新聞社説は「三位一体改革、いま生活保護は無理だ」でした。「安倍官房長官から7省で6300億円の補助負担金の削減を求められたのに、合計で約300億円の答えを返したのだ。自分たちの所管分は削れないという相も変わらぬ霞が関流である。全国知事会など地方6団体が『官房長官の指示が守られないことは誠に驚くべきこと』と反発するのも当然である」
「しかし、私たちは、この段階で生活保護の負担金削減を『残り6千億円』の中に押し込むべきではないと考える。 理由の一つは、自治体が『生活保護は国の責任だ』として、そろって負担金削減に反対していることである。削減が強行されれば、政府への信頼が揺らぎ、福祉の現場で混乱が起きかねない。もう一つは、生活保護の場合、税源を自治体に移しても、自治体の裁量の余地が少ないことである。自治体側が厚労省に税源移譲を求めている在宅福祉や子育て支援などの方が裁量は広がる。
厚労省はまず、自治体の裁量が広がるものから、税源や権限を自治体に渡すべきだ。そうすることで、自治体が地域にあわせた工夫を重ね、行政を効率化することができるからだ」
「今回の厚労省の動きには無理がある。ほかの負担金や権限を手放したくないために、生活保護を持ち出したといわれても仕方があるまい」(11月16日)
厚生労働省が生活保護費の国庫負担率引き下げを提案していることに対し、地方団体が反発を強めています。まず、抗議の意味を込めて、基礎データを国に報告しない自治体が増えています(17日付け朝日新聞、毎日新聞、日経新聞他)。(11月17日)
地方6団体は、18日に厚生労働大臣に、生活保護費国庫負担率を引き下げた場合、生活保護の事務を国に返上することを申し入れたとのことです。返上するのは新規の受給者分で、来年4月からとのことです。この事務は、法律上は「法定受託事務」であり、地方が事務を拒否した場合、国が直接執行するになると考えられます。
小泉総理は、18日の記者懇談で、生活保護費について「地方の意見を尊重してやっていく」と述べたそうです(19日各紙)。
その総理の意向や、官房長官の金額割り当て指示が、実行されないのです。繰り返しになりますが、三位一体改革は、補助金改革を通して、日本政治の問題を浮き彫りにしてくれます。
問題の第一は、官僚が抵抗勢力であること。その二は、その官僚と各省大臣が、首相の指示を守らないことです。(11月19日)
18日の日経新聞は、「三位一体改革、補助金交渉が難航」「削減優先、分権骨抜き」を大きく解説していました。
「三位一体改革は・・・地方の効率化と、国の権限縮小を一挙に実現し、官のリストラを加速させるというのが本来の改革の狙いだ」「しかし、各省は補助金を通じた地方の監督権限を手放そうとせず、補助金を配る仕事が減りリストラされることに抵抗する。だがこのまま地方の反発を放置すれば、地方公務員の給与カットや交付税削減にも踏み込めず、小さな政府をめざす国と地方双方のスリム化に黄信号がともる」。
読売新聞の社説は「三位一体改革、地方に規律促す生活保護の移譲」でした。しかし、国庫負担率を4分の3から2分の1に引き下げることは、負担の押しつけであって、税源移譲とは言わないのです。このような主張をする人は、国庫負担率をもっと下げて例えば10分の1にしたら、地方の規律が増すと考えておられるのでしょうか。さらにはゼロにして、すべてを地方に任せるという主張をなさるのでしょうか。(11月18日)
21日の朝日新聞では、松田京平記者が「義務教育費と生活保護費、国負担でも異なる制度設計」を解説していました。同じ国庫負担金でありながら、なぜ地方は違った主張をするのか。二つの事務の違いは、案外知られていません。よく整理された解説です。ご一読ください。もっとも、一部異論があります。地方団体は将来負担が増えても、筋が通るものなら一般財源化を受け入れると思います。
また、石井記者らが「生活保護費、自治体負担増えると、地域で支給額に差?」「基準の引き下げを懸念」を大きく取り上げていました。
日経新聞では「義務教育費国庫負担、私の考え」第3回で、石井岡山県知事が「財源なくして自律なし」「真の分権、なお道遠く」を語っておられます。毎日新聞「経済サプリ」は、「三位一体改革って何?」を解説していました。産経新聞は「生活保護費国庫負担引き下げ、地方が反旗」「データ報告の停止相次ぐ」を解説していました。
20日の毎日新聞「発言席」では、西尾出雲市長が「地方教育自治の実現を」を書いておられました。
「・・依然として県も市も文科省の考え方に拘束され、ご意見伺いに終始している。・・その意味で、今や地方の教育行政当局の意識改革が迫られている。今後、地方の教育現場は文科省に気兼ねすることなく地域のニーズ、特色を生かす創造的な教員配置を断行すべきだ。同省はそれこそ地方の主体性を、お題目ではなく真に尊重すべきである」
「国庫負担金の予算要求は、毎年度財政当局の厳しい査定を受け、目標財源が十分認められない歴史が繰り返されてきた。財源確保は決して安定的ではない。むしろ、三位一体改革の流れからすれば、地方交付税や地方への税源移譲による財源確保の方が安定的と考える」
「・・文科省は知事や市長をもっと信頼し、教育行政への責任・参画を認めるべき歴史的転換期を迎えている。・・勇断をもって名実ともに教育分権確立に大きく舵を切ることにより、国民が真に信頼し期待する政策官庁として飛躍できることとなる」。
読売新聞「一筆経上」では、丸山淳一記者が「理念なきそろばん勘定」と題して、「双方の言い分の真ん中をとって、二つの補助金(義務教育と生活保護)の補助率を変えるなどの帳尻合わせをすれば、補助金削減額は目標には届く。しかし、地方分権の推進という改革の理念にはほど遠い」と書いていました。(11月21日)
政府与党の協議や4大臣協議が、続いています。(11月22日)

中高年の楽器入門

20日の日経新聞「セカンドステージ」に、「あこがれの音色、挑む50代」「売れる楽器、教室も盛況」が載っていました。「ピアノ、サックス、バイオリンなど誰もがあこがれる楽器の演奏や弾き語り。・・挑戦する中高年が増えてきた。50代からの楽器入門を・・」。
へっへへ、小生は11年前、39歳でフルートを始めました(表紙の似顔絵)。最初はヤマハ音楽教室に通って、ごくごく基礎を教えてもらいました。しかしその後、記事の中にあるように、やはり独学では上達しませんでした。富山でグループに入れてもらって、少しはましになりました(本人にとっては長足の進歩です)。その後、東京に戻ってまた一人になり、時間もとれなくて退歩の一途をたどっています。
記事の中に、「楽器別人間学」が表になっていました。フルートは、クールでどことなくクリスタルなイメージ。トロンボーンは、飲んべえ多し、のんきなタイプで誰からも愛される、などなど。うーん、当たっているような、そうでないような。他の楽器も載っているので、ご覧下さい。

三位一体改革62

日本経済新聞「経済教室」は、1日は冨永朋義さんの「歳入改革で地方に自律性」「消費税を地方に、交付税制度は抜本改革」を載せていました。前段は、地方税である法人関係税を国税とし、国税である消費税を地方税とする案です。これで地域間税収格差は、かなりなくなります。2つめの交付税については、誤解があるようです。「自治体の収支ギャップをもとに交付額が決まる。だからある首長が歳出削減を断行すると、その自治体が受け取るお金は減る」というのは、明らかに間違いです。拙著「地方財政改革論議」p134をご覧下さい。歳出削減しても交付税は減らず、その分は余裕財源となるのです。
2日は神野直彦東大教授が「分権改革の第2弾、消費税の地方割合高めよ」「国・地方税を大改革、交付税の税目も入れ替え」を書いておられました。ここでも、消費税の取り分を地方に多く渡し、法人課税は国税に逆移譲する。交付税財源である消費税を地方消費税とし、国税となった法人税を交付税財源とする案です。地域間偏在を少なくし、また実現可能性の高い考えだと思います。私も、次はこの案だと考えています。
2日の読売新聞では、青山彰久記者が「解剖三位一体改革1、対立の重層構造」を書いておられました。一つは「分権vs集権」で、官僚が抵抗している背景には、補助金廃止が日本の統治構造の基本を変える要素があるからです。三位一体改革が、これまでの「補助金共同体構造」を破壊するからです。もう一つは「分権vs財政再建」です。よく分析されたわかりやすい解説です。是非ご一読下さい。(11月3日)
4日は、新内閣になって初めての、4大臣会合が開かれました。また、生活保護の協議会では、厚労省が、負担率引き下げや一部の一般財源化を提案しました。地方団体は猛反発していると、新聞は伝えています。(11月5日)
読売新聞・青山彰久記者の「解剖三位一体改革」は、2日が「義務教育の責任分担。国と地方、建設的議論薄く」、4日は「公共施設の補助金。廃止、権力構造の変化も」でした。(11月4日)
7日の朝日新聞1面は、三位一体改革に関する全知事へのアンケート結果でした。40人は「裁量広がらず」と厳しい評価でした。「移譲額という数字が先にあって、自由度が高まっていない」というのが主な理由のようです。また「交付金は補助金と同じで、自由に使えない」との意見も紹介されていました。
日経新聞は「義務教育費国庫負担金、私の考え1」で、中教審会長の意見を載せていました。見出しに「中教審の役割、今後も重要」とありましたが、自分の組織を「今後は不要」という人がいますかねえ。中教審がどのようなものかは、この騒ぎの中でよく見えました。国民が評価するでしょう。(11月7日)
読売新聞・青山彰久記者の「解剖三位一体改革」は、5日が「中央と地方の協議」「国のかたち変える契機に」でした。私は、三位一体の意義の一番はこれだと思っています。(11月7日)
今日の新聞は、昨日各省へ割り当てが示されたことについて、解説していました。日経新聞は「補助金削減 官邸ペース」、読売新聞は「省庁の抵抗排除狙う。官邸に危機感、反発強くなお曲折も」などです。(11月9日)
今日、官房長官が各大臣に、6,000億円の補助金削減案の各省への割当額を示したとのことです。各紙には、各省ごとの割当額も載っています。合計額は6,300億円で、5%増しの金額になっています。生活保護費については、厚労省に対し「国と地方による協議が整わなかった場合は、これを除く改革案を出してもらう」とのことです(日経新聞夕刊)。(11月8日)
10日の朝日新聞では、坪井ゆづる論説委員が「三位一体改革 決着は」を解説しておられました。「しかし、ここはあえて自治体案に沿って、分権改革の突破口として義務教育を位置づけるべきではないか・・」。
その中で、西尾理弘出雲市長(元文部官僚)が述べておられます。「文部科学省は本来、教育内容や水準を政策的に誘導する『政策官庁』であるべきだ。ところが現状は、国庫負担金を配る『人件費官庁』でしかない。分権議論を機に、政策中心の官庁に脱皮してほしい。そもそも負担金制度は、昭和20年代の公立学校中心主義の産物なんですよ。すでに制度として崩壊している」。
9日朝日新聞夕刊「窓・論説委員室から」では「最後の証言」として地方教育行政法制定に力を尽くし、後に文部事務次官になられた木田宏さんの証言を紹介していました。「この50年間、文部当局は、学校のことは市町村の仕事であるという指導をしてきませんでしたね。都道府県は国の言うことを市町村に伝達するだけでした。マスコミも、何かあると文科省にだけ目を向けて、ものを言ってきました」。
お二人の文部官僚OBの発言でした。(11月10日)
10日には、生活保護に関する国と地方の協議会が開かれました。厚労省が示した「国庫負担率を2分の1に引き下げ、住宅扶助負担の廃止・一般財源化」に対し、地方側は「三位一体改革に名を借りた地方への負担転嫁」と反発しました(11日の東京新聞)。読売新聞「論点」では、高橋はるみ北海道知事が「三位一体改革、負担押し付け許されず」を主張しておられました。11日の朝日新聞では、松田京平記者が解説していました。毎日新聞は社説で「押し付け合いはやめよう」と主張していました。
(11月11日)
11日には、官邸で「国と地方の協議の場」が持たれ、また政府主催の全国知事会議が行われました。朝日新聞によると「小泉首相は11日、政府主催の全国都道府県知事会議に出席し、06年度までの3年間で国から地方へ3兆円の税源移譲などを目指す、『三位一体改革』について、『地方の意見を尊重していく。これで終わりではありません』と述べ、07年度以降も税源移譲や補助金削減などを、さらに進めるべきだとの考えを示した」 とのことです。
日経新聞によると、麻生知事会長は、官邸が各省に対し14日までに提出を求めた補助金削減案について「官房長官が数値目標を示したのにゼロ回答だったら、内閣としての体をなさない」と牽制したそうです。その通りですよね。三位一体改革(補助金廃止)が日本の政治改革=官僚主導を止め、政治主導に変えることであることがよくわかります。(11月12日)
今日の正午が、補助金廃止の各省からの回答期限でした。
NHKニュースによれば「総務省は割り当てられた10億円の補助金を削減する案を示したほか、農林水産省は340億円の割り当てに対し、109億円を、また、経済産業省は70億円の割り当てに対し、59億円を削減する案を示したうえで、いずれも、このほかに削減する補助金を早急に決定し、目標を達成するとしています。一方、全体の80%にあたる5040億円を割り当てられた厚生労働省は、焦点となっている生活保護の補助金について、「地方側と調整がついていない」として盛り込まず、109億円と回答し、環境省は50億円の割り当てに対し、2億円あまりにとどまりました。さらに、文部科学省と国土交通省は「検討中」として金額は示さず、各省の回答は、全体として目標額の6300億円以上を大きく下回りました」とのことです。
社会の趨勢が認めている分権、そして総理の指示に対する回答が、このようなことです。私は、これが官僚にとって末期症状、各大臣にとっては政治主導を問われた試験だったと思います。(11月14日)
6,300億円の補助金削減を割り当てられた7省の回答は、合計289億円、達成率は5%に満ちませんでした。満額回答は、総務省だけでした。麻生全国知事会長は、「官房長官の指示が守られないことは驚くべきことであり、遺憾きわまりない」とコメントを出しました(11月15日づけ日経新聞ほか)。普通の人なら、そう思うでしょうね。

自主研究グループ「ソーシャルアクションスクール」(大阪)

今日は大阪に行って、3時間しゃべって来ました。公務員や学生さんの自主研究会「ソーシャルアクションスクール」です。50人ほどの方が、熱心に聞いてくださいました。休みの日に集まって、こうして勉強されるのは、頭が下がります。私も応援します。がんばってください。
1時間目はちゃんと90分で終えたのですが、2時間目は30分勘違いして、100分もしゃべってから質疑応答をしてしまいました。三位一体改革が日本の政治改革・革命であることと、政策をどう実現していくかを、私の体験を基にお話ししました。後段がどういう話かは、企業秘密ですよ・・。そう簡単には公開・伝授できません。現場の経験のない学生諸君には、どの程度理解してもらえましたかねえ。
12日に講演に行ったメンバーから、いくつか便りが来ました。半分お世辞とと思いつつ、うれしいですね、反応があるのは。よいしょばかりじゃ、私にとっても進歩がありません。批判こそが、ものごとを進めます。それぞれに返事を書きますが、しばらく時間を下さい。(11月14日)