岡本全勝 のすべての投稿

祝、雑誌掲載

月刊「中央公論」11月号のp283「ブログ・ハンティング」に、このホームページが取り上げられました。官僚が書いているウェブサイトの、紹介記事でです。
「『岡本全勝のページ』は、匿名のブログが多い官僚のなかでは珍しい例外である。本名のみならず職歴まで明らかにしており・・。『法律ができるまで』や『三位一体の改革』、あるべき官僚の姿など豊富な内容だ」
取り上げてもらった上に、お褒めいただき、ありがとうございます。もっとも「読みたいタイトルをクリックしても全く違う文章が置かれていることがままある。・・・残念だ」との指摘もあります。申し訳ありません、修復を怠っていて。週末、少し修復作業をしました。
その記事にもありますが、官僚もののウェブサイトは、匿名ばかりですよね。「匿名が多い」と書いてありますが、私はこのHP以外に、官僚が実名で仕事について書いているページを見たことがありません。趣味のページはいくつもありますが。まあ、これも「官僚の問題」なのでしょう。批判をおそれて、実名では書かないという問題です。もちろんこれは、本来の仕事にあっても実名を出さない=責任をとらないことと、通じています。

三位一体改革65

(評価・項目別)
三位一体改革の政府与党合意が決まったようです。まずは、結果がまとまったことを喜びましょう。地方団体の評価を待ちたいと思いますが、取り急ぎ、昨日書いた評価基準で簡単に見てみましょう。
結論が出て、目標金額を達成し、3兆円税源移譲できることになったことは、○。
地方団体が拒否していた生活保護国庫負担金が対象とならなかったことは、○。ただし、児童手当などが負担率引き下げとなったことは、×。
義務教育国庫負担金が8,500億円一般財源化されたことは、○。ただし、中学分の全額でなく小中分の負担率引き下げなので、それについては、×。
国債対象である施設費補助金が、一般財源化対象になったことは、○。もっとも、税源移譲が半額であることは、△としましょう。
全体像を見て、地方の自由度が高まったかについては、×に近い△でしょうか。第2期への見通しは、よくわからないので、△。
政治主導については、官房長官裁定が出たことは○ですが、ここまでもつれたこと、地方に案を作らせながらそれを採用しなかったことを考えると、△ですかね。(11月30日)
(評価・その全体像について)
今回決まった三位一体改革の項目別の評価は、前回(11月30日)書いておきました。新聞などの評価も、ほぼ同じだったと思います。「では、全体としてどう評価するのか」というお尋ねが、記者さんたちからありました。私の考えは、次のようなものです。
1 短期的には
この3年間(三位一体改革を進めた期間)でみると、高い評価ではない。新聞が書いているように、数値目標は達成したが、分権の目的である地方の自由度が高まったとはいえないので。
2 長期的には
かけ声だけで進まなかった「補助金廃止・税源移譲」が3兆円も実現することは、画期的なこと。大きな前進。
3 大きな歴史の中では
今回の三位一体改革の評価は、今回だけでは定まらない。すなわち、今後引き続き補助金廃止・税源移譲が進めば、今回はその突破口として大きな評価がされるであろう。しかし、これだけでとどまるなら、分権の歴史の中では良い評価にはならないだろう。(12月11日、パソコンが復旧したので今頃書いています。)
昨日までの三位一体:パソコン故障で載せることができなかったものを、記録のために書いておきます。日々のニュースは割愛し、解説や主張などを中心に紹介します。)
(12月1日の各紙社説)
共通した部分が多いので、それは省略します。
朝日新聞は「公約は果たしたけれど」として、「初めて3兆円という大規模な税源移譲が実現する。全国知事会の麻生渡会長が『画期的だ』と語るのも、あながち誇張ではない」
「しかし、内実は苦しい数字合わせに終始した。そもそも何をめざす改革だったのか。こんな疑問がどうしても膨らむ・・・。単純化して言えば、自治体側は地方分権を、霞が関は財政再建と権限温存を考えていた。この食い違いを乗り越えるには、国と地方がそれぞれ担うべき役割を整理し、時代の変化に応じて分担のあり方を見直す構造改革が必要だった」。
この社説の指摘の通りですが、その構造改革議論は簡単には進みません。改革を拒む勢力が権力側にいるのですから。何度か指摘したように、三位一体改革の進行過程そのものが、政治改革なのです。
毎日新聞は「小泉政権後に不安残すな」で、「国の『下請け』に甘んじてきた地方が一連の改革をリードし、政府の政策決定のあり方にも変化をもたらした点は評価すべきだろう。しかし中身をみると『地方にできることは地方に』という原点は忘れ去られ、数字あわせに終始したのが実態である」
「制度に踏み込めなかったことに加えて気がかりな点がある。曲がりなりにも今度の改革が進んだのは、『改革派知事』が各地で誕生し、全国知事会の発言力が増しただけでなく、これが小泉純一郎首相の志向と合致した事情も大きい。果たして、『小泉後』もこの流れが続くのか。今回の交渉過程を見ても、各省庁の抵抗は極めて激しく、担当閣僚も従来通り省庁の代弁者に過ぎなかった。地方側は07年度からの3年間を第2期改革と位置づけて、さらなる補助金廃止と税源移譲を求めることにしているが、こうした姿を見ていると、『小泉後』がはなはだ不安になるのだ。政府と地方が協議する場を制度として明確にするなど、後戻りをさせない仕組み作りも必要だ」
これも、指摘の通りです。後段の「第2期」については、そのほかの新聞も主張していました。
日本経済新聞は「第2期の三位一体改革に踏み出せ」で、「国から地方への補助負担金は約20兆円もある。これほど巨額の補助負担金を使って、地方に口出ししている国はない。4兆円削減の第1期改革では、各省はこの体制を実質的に存続させる形で逃げ切った。これでは構造改革の名に値しない。政府・与党合意は今後の改革についてはややあいまいだが、本筋に戻した第2期改革に踏み出すべきだ」。
産経新聞は「これで終わってはならぬ」として、「三位一体改革の目的は、国と地方の役割分担を明確にし、財源を効率的に使うことで財政を再建することだ。それには継続的な改革が必要となる。地方分権の確立のためにも、今回の決着で終わりにしてはいけない」。
読売新聞は「国と地方、痛み分けの税源移譲」で、「地方側の言い分も盛り込まれたが、補助金削減では国の関与が残るケースが目立ち、双方、痛み分けの決着、と言うことも出来よう」と述べていました。
確かにそういえるのですが、国の関与が残るのでは分権にはならないのです。やや切れ味の悪い主張ですね。
(残る課題:交付税)
三位一体のうち補助金廃止と税源移譲が決まったので、残る課題は地方交付税であると、新聞は報道しています。もっとも、論点は平成18年度の地方交付税総額がどうなるか=いくら削減されるかになっています(12月1日付け朝日新聞、12月6日付け日経新聞など)。財務省がもっぱら国の財政再建=国の歳出削減の観点から、交付税総額の大幅な削減を主張しているという構図です。
このHPでも何度か解説しましたが、交付税総額は、毎年度の地方財政計画の歳出額と歳入額を積み上げ、その不足分を計算することで決定されます。そして、歳出の多くは、国が基準を決めています。収入の大きな部分である地方税は、その標準が国で決まります。国庫補助金は、国が総額を決めます。地方債は、公共事業などの額が決まれば、ほぼ自動的に決まります。そしてこれを比較して、足らない部分を交付税などで埋めています。国税の一定割合である地方交付税額(実力)で埋まれば問題はないのですが、近年は大幅に足らないので、国から特例の加算をしてもらい、地方も赤字地方債を出しています。
この特例を減らしたいのは、関係者みんなの思いですが、そのためには、地方税収が増えること、あるいは歳出総額が減ることが必要なのです。(12月12日)

おわびと報告

長らく、このホームページを更新せず、申し訳ありませんでした。実は、引越しをしたのですが、その際にパソコンが壊れて「入院中」だったのです。昨日、パソコンが退院してきましたが、ハードディスクを取り替える手術を受けたので、データはすべてなくなりました。今回も、玉岡雅之神戸大学助教授のご指導とご協力により、ひとまず復旧することができました。玉岡先生、いつもながらありがとうございます。
三位一体改革が決定した後で、いろいろ書きたいこともあったのですが、どうすることもできず・・。それでも、毎日たくさんの方がアクセスしてくださって、ありがたいことです。「まだ加筆しないのか」といらいらして、あるいは心配して、HPを覗いてくださった方も多かったのでしょう。「パソコン故障中で加筆ができません」という書き込みも、できませんでした。何人もの方から、「サボっているのか、それとも体をこわしたのか」と温かい質問をいただきました(メールは、もうひとつの携帯パソコンで読めました)。
今回も、目次やリンクが混乱しています。おいおい修復するので、お待ちください。アクセスカウンターの数字も再設定しましたが、この程度(371,000)でしたよね。どなたか直近の数字を覚えておられたら、メールで教えてください。

お詫び・HPの復旧状況

と言っていたら、12月の引っ越しの際にパソコンが壊れ、データが失われました。ほぼ復旧できましたが、まだおかしいところがあります。「2 地方財政」「5 下宿人のページ」のリンクは、まだ混乱しています。ページの表題は「××002002」とさらに数字がついたページがあります。

三位一体改革64

NHKニュースによると、「全国知事会は、いわゆる三位一体の改革をめぐって、24日、幹部が緊急の会議を開き、焦点となっている生活保護の取り扱いについて、厚生労働省が国の負担割合を減らすという今の案を撤回しなければ、町や村が都道府県を通じて行っている生活保護を受ける人数や世帯数などの国への報告を取り止めることなどを決めました」。
24日の日経新聞1面「改革もう一押し、05年体制への試金石2」は、三位一体改革を取り上げていました。論点として「族議員を根絶するため、補助金削減は徹底的に」「中央省庁だけでなく、地方自治体もリストラ」「国と地方の役割分担の見直しも必要」を掲げています。
「国のお仕着せでなく、自治体が自身の判断で予算を使えるようになれば、創意工夫の余地が広がる。補助金配分に口を出すことで利権を得てきた族議員の息の根を止めるためにも欠かせない改革だ」「生活保護費の補助削減に反対する地方側は、新規の受給者に関する事務を国に返上する構えだ。5年前に中途半端に終わった国と地方の関係を見直す絶好の機会だが、目先のつじつま合わせで手いっぱいの政府・与党内にそういう声はほとんどない」。
読売新聞は、23日には「生活保護費調整大詰め。地方側、強硬姿勢崩さず」を、24日には「埋まらぬ地方との溝。今週末に最終調整」を書いていました。その中で、生活保護費国庫負担率引き下げ、施設整備費の地方移譲、中学校教職員給与分の地方移譲、の3点の対立を表にして解説していました。
毎日新聞23日は「生活保護費削減で対立。厚労省、官邸からノルマ。自治体、分権効果は乏しく」「国・地方の役割論議、不在」を、24日には「三位一体改革、調整大詰め。生活保護費対象除外も」を書いていました。東京新聞は24日に「月内決着へ調整加速。生活保護、義務教育深い溝」を書いていました。(11月24日)
生活保護費を巡る議論が続いています。25日の朝日新聞は「安倍氏、試練の調整役。期限目前、閣内も対立」を解説していました。補助金廃止がどれだけ日本の政治に深く関わっているかが、よくわかります。
それだけに、よくここまで進んだと思います。これまでの日本の政治と行政なら、ちっとも進まなかったでしょう。総理・官房長官・関係大臣の政治主導を期待しましょう。政治家が「日本の政治と社会を変えるのだ」という気概を持つのか、官僚に丸め込まれるのかの分岐点です。(11月25日)
28日の日経新聞「義務教育費国庫負担、私の考え4」は、苅谷剛彦東大教授でした。教授は、国庫負担制度維持を主張されています。そして、負担金制度を廃止した場合の問題を指摘した後に、次のように述べておられます。
「それ以上に心配なのは、文科省の役割変化の可能性だ、財源保障の役割が縮小すれば、残る国の仕事は、『評価』になる。・・評価を通じて教育をコントロールする仕組みへと変ぼうを遂げる可能性である・・」。
うーん、私は、国庫負担金という「投入量」による評価・担保より、教育の成果という「成果」による評価の方が重要だし、必要だと思うのですが。
また、この主張では、文科省は「お金を配る省」ということになりますよね。
何人もの記者さんが、三位一体改革の決着を心配して、話しに来てくださいます。本当に、どうなるのでしょうかねえ。小泉改革政権の真価が問われている、と思うのですが。(11月28日)
(評価の基準)
何人かの記者さんが来て、結末の予想と評価を議論しました。どのような結果になるかは、現時点ではわからないので、それを前提にした評価です。
彼らの主張は、「一番の分かれ道は、生活保護が補助金削減の対象となるかどうかである」とのことです。地方団体は、「生活保護は絶対に認められない」と主張しています。それを含めるようでは、地方団体は三位一体の結論を評価できず、いえ受け入れることも拒否するでしょう。
分権の視点からは、全体像について「多分、良い評価はできないでしょう」とのことです。すなわち、4兆円の補助金廃止がなされたとしても、地方の自由度を高めたものは非常に少ない。公立保育園補助金くらいであり、あとの義務教育関係(共済長期など)は地方の自由度は高まらない。ただし、「3兆円の税源移譲が行われれば、歴史的には画期的なこと。対象補助金について問題があるとしても、進んだことを評価しよう」「第二期につなげることができれば。次があるから」。
次に、政治過程としての評価です。
「総理や官房長官の指導力が、どう発揮されるか」。これが、国と地方との綱引き以上に、今回の焦点だと、何人かは指摘しています。党や霞が関で議論していると、補助金廃止は進まない。官邸から視界1キロメートルの望遠鏡では、判断を誤る。政治家には、日本国・社会を見渡す望遠鏡が必要である。また、5年や10年後を見通す望遠鏡が必要である。その望遠鏡で見れば、自ずと結論が出るはずだ。
国と地方のせめぎ合いとか、政治家の争い(政局)としてみると、この問題の大きさ、意義深さを見誤る。自民党の支持団体を切り捨ててでも、改革を進めることを示したのが、9月11日の総選挙であった。族議員と官僚に任せていては、補助金廃止・分権改革は進まない。総理の政治主導が不可欠である。去年は、総理はみすみす、それを示すチャンスを見逃された。今回の結論(その際の政治判断)は、日本の政治が大きく変わる分かれ道である。というのが、多くの記者さんの見立てです。
変な結論が出て、地方が三位一体議論そのものを「蹴飛ばしたら」どうなるか。これについては、「喜ぶのは、各省と財務省である。補助金を守ることができ、分権改革を止めることができるのだから」とのことです。(11月29日)