市場と国家、政策の設計と意図せざる効果

最近話題になった、2つの政策を取り上げます。ある政策目的のために、民間の活動を誘導するべく制度を設計したのですが、意図とは違った結果も生んだ例です。
一つは、病床に関する診療報酬です。2月7日の朝日新聞は、「重症向け急性期病床4分の1削減へ 医療費抑制で転換」という見出しで、次のように伝えています。
・・症状が重く手厚い看護が必要な入院患者向けのベッド(急性期病床)について、厚生労働省は、全体の4分の1にあたる約9万床を2015年度末までに減らす方針を固めた。高い報酬が払われる急性期病床が増えすぎて医療費の膨張につながったため、抑制方針に転換する。4月の診療報酬改定で報酬の算定要件を厳しくする。
全国に約36万床ある急性期病床の削減は、診療報酬改定の目玉のひとつ。実際は急性期ではない患者が入院を続けるケースも目立ち、医療費の無駄遣いと指摘されてきた。急性期病床以外での看護師不足も招き、「診療報酬による政策誘導の失敗」といった批判も強まっていた・・
・・7対1病床は、高度医療を充実させるため2006年度に導入された。入院基本料は患者1人につき1日1万5660円。慢性期向け病床(患者15人あたり看護師1人)の1・6倍だ。全国の病院が収入増をねらって整備を進め、導入時の8倍の約36万床にまで増えた。一般的な病床の4割を占める。厚労省の想定を大きく上回る規模に膨らみ、この部分にかかる医療費は年間1兆数千億円とされる・・
これは、「7対1入院基本料」という制度です。入院患者7人当たり看護師1人という手厚い配置をすると、病院に高い報酬が支払われる算定方式です。急性期の高度医療を充実させるために、誘導策として導入されたのですが、当初の意図を超えて、必要以上に増えすぎたと批判されています。
2006年の4万床が、36万床にまで一気に増えたのですから、誘導策としては高い効果があったのでしょう。ありすぎたのかもしれません。しかし、軽症患者も入院するほか、看護師の争奪戦が起きて、看護師不足を招く一因になったという批判もあります(2月13日付読売新聞「医療費抑制へ、脱・大病院志向」)。

もう一つは、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及策です。2月15日の日経新聞は「太陽光、発電しない672件の認定取り消しへ、経産省」という見出しで、次のように伝えています。
・・経済産業省は14日、再生エネでつくった電気を一定の価格で買い取る制度で、国の認定後も発電を始めようとしない672件の認定を取り消す検討に入った。発電に必要な太陽光パネルの値下がりを待って不当な利益を得ようとする事業者が多いためだ。
2012年に始まった買い取り制度は、太陽光や風力など5種類の再エネでつくった電気を一定価格で買い取ることを電力会社に義務づけている。太陽光は初年度に1キロワット時あたり40円(税抜き)という有利な価格が付き、参入が相次いだ。
この制度で電力会社に電気を買い取ってもらうには、事前に発電計画を提出して国の認定を受ける必要がある。認定さえ受けておけば、いつ発電を始めても20年間は40円で電気を買い取ってもらえる。太陽光パネルなどは急速に値下がりが進んでいるため、発電開始を遅らせればパネル価格の下落分だけ事業者の利益が膨らむ。
14日発表した調査結果によると、2012年度に認定を受けながら発電を始めていないなどの問題がある事業は738万キロワット分(1643件)。認定を受けた事業全体の発電容量の半分近くになった。
買い取り制度では、電力会社が電気料金に再生エネの買い取り費用を上乗せする。発電事業者の不当な利益を許せば、再生エネ普及という目的を達成できないまま、国民負担だけが膨らむ・・
これは、「認定後何年以内に事業を開始すること」とか「成果を事後評価し、一定基準を満たさない場合は、助成を取り消す」というような仕組みを組み込んでおけば、防げたのではないでしょうか。