10月24日の朝日新聞オピニオン欄「「社会主義」VS.「トランプ党」」から。
・・・11月の米中間選挙で問われるのは、議席数だけではない。「トランプ後」も続く保守・右派の変容と、若者に広がる民主社会主義のうねり。米国の骨格を組み替えつつある二つの潮流は、世界や日本をどこへ導くのか。2人の専門家に今後の行方と、その歴史的な意味を聞いた・・・
斎藤幸平・東大准教授の「公平さ求める、若者の地殻変動」
―なぜ若者は民主社会主義に向かうのでしょう。反トランプ感情による一時的な動きでは?
「格差や気候変動に加え、グローバル化や金融化、AI・デジタル化によって、自分たちの暮らしや将来が脅かされているという不安があります。民主党主流派を含む中道的な既成政党が、有効な解決策を示していないことへの不満の表れです」
「ニューヨーク(NY)市には、下院選では政治団体『アメリカ民主社会主義者(DSA)』メンバーのオカシオコルテス氏に、大統領選ではトランプ氏に投票する人もいる。DSAとMAGA(米国を再び偉大に)は対極に見えますが、新自由主義と既成エリートへの反発という構造を共有しています」
「民主社会主義者を自称するマムダニNY市長はスローガンとして、生活コストの手頃さを意味する『アフォーダビリティー』を唱えます。民主党主流派が問われるのは、DSA系の候補をどこまで本格的に支援し、こうした政策を取り込むかです」
―同じ不満を背景にしながら、トランプ氏とマムダニ氏はどこで分かれるのでしょうか。
「危機を前に、白人など一部の人だけを優先するのがトランプ氏の排外主義です。一方、移民を背景に持つマムダニ氏やオカシオコルテス氏は、みんなが苦しむ状態そのものがおかしいと訴え、普遍的な政治につなげようとしている。住まいや医療、教育、公共交通などを、誰もが負担できる費用で保障するアフォーダビリティーが象徴です」
―米国の変化を日本に引きつけて考えると、何が足りませんか。
「日本の戦後民主主義は、護憲や基地、平和の問題を重視してきました。もちろん大切ですが、『守る』『反対する』ことが主眼となり、リベラル左派が守勢に回ってしまった」
「ジェンダーなど多様性をめぐる課題と、物価高や住まい、雇用といった生活課題を、資本主義の構造的な問題に結びつける必要があります。それを若い世代に届く新しい表現で、構想から再生しなくてはならない。若い人たちが中心になって、新しい言葉と運動を生み出すことが求められています。気候危機やAIによる雇用不安に直面するZ世代には、その不安に応答し、未来を示すビジョンが必要です」