9月28日の読売新聞「論壇キーワード」、常見陽平さんの「ブリリアント・ジャーク 組織の問題を映す言葉」から。詳しくは記事をお読みください。
・・・「ブリリアント・ジャーク(Brilliant Jerk)」という言葉がある。個人としての能力や業績は極めて優秀(Brilliant)だが、協調性に欠け、周囲に悪影響を及ぼす嫌な人(Jerk)を指す。
この言葉が広く知られるきっかけの一つになったのが、動画配信大手Netflixの企業文化である。同社はかつて「No Brilliant Jerks」を掲げた。現在は表現こそ変わったものの、どれほど優秀でも、同僚を礼節と敬意をもって扱えない人物を容認しないという考え方は受け継がれているようだ。端的に言えば、「いくら仕事ができても、嫌な奴は要らない」ということだ。
ここで問題にされているのは、会議で人を侮辱する、手柄を横取りする、立場の弱い相手にだけ威圧的に振る舞う。こうした行動を繰り返し、職場の人々を 萎縮させる人物である。
似た概念に「トキシック・ワーカー」がある。本人が高い成果を上げていても、攻撃的な言動やルール違反によって職場全体に損害をもたらす「有害な働き手」という意味だ。成果の高い人なら「トキシック・ハイパフォーマー」とも呼ばれる。最近は「フレネミー」という言葉も耳にする。友人(friend)のように振る舞いながら、実は敵(enemy)でもある人物のことだ。
厄介なのは、ブリリアント・ジャークは組織の中でしばしば守られることだ。「数字をつくるから」「重要な顧客を持っているから」「あの人がいないと仕事が回らないから」。そんな理由で上司や人事が見て見ぬふりをする。過去の実績が、いつの間にか免罪符のようになる。被害を訴えた側が「あの人との付き合い方を覚えた方がいい」と諭されることさえある。
しかし、本当にその人は「成果を上げている」のだろうか。本人の売り上げや実績だけを見れば優秀かもしれない。だが、その人のために何人が辞めたのか。会議で発言しなくなった人は何人いるのか。尻拭いや人間関係の調整にどれだけの時間が使われているのか。見えにくい損失まで含めれば、評価は変わるはずだ・・・
・・・こうした言葉は、本人への評価であると同時に、組織の問題を映す言葉でもある。ブリリアント・ジャークは、勝手に生まれるのではない。彼らを重用する組織のあり方もまた、問われている・・・