8月25日の日経新聞に「脱ブラック霞が関へ」「給与減っても官僚にカムバック キャリア形成を多様化、魅力に気づき」が載っていました。
・・・2026年の人事院勧告は中央省庁の人材戦略の転換点を映した。公務員離れの打開策を、給与水準や勤務時間の改善から開放的なキャリア形成の提示にまで広げた。「選ばれる公務職場」をめざし、新人から幹部をめざす単線型の職歴の積み方を見直す。
「民間企業に出て国家公務員は国民生活に直結する仕事ができるのが魅力だと再認識した。私のように官民を行き来する人がより増えるといい」。キャリア官僚から民間に転出して出身省庁に戻り、課長級の役職に就いた浅野彰人さん(仮名)は語る。
浅野さんが民間への転出を決意したのは入省15年目だった。異業種で政策立案とは別のスキルを身につけたいと思った。新天地として選んだのは都市開発やスタジアム運営を手がける大手企業だ。開発や経理の部門などを担当した。
カフェでの会議など働き方の自由さに当初はカルチャーショックを受けた。しかし、6年ほど働いたころ、国家公務員のやりがいに気づき、戻ることを決めた。会社の役員には億単位の年収を得る人もいたが、幸せそうに見えなかった。官僚に戻って給料は3分の2に減った。不満はない。民間で培った経営の視点もいかせる。
民間から霞が関へのカムバックを考えるのは浅野さんだけではない。
公務員の経験がある人を含む民間からの志望者を対象に選考する経験者採用の数字に傾向を見てとれる。25年度の申込者数は2360人と、前年度に比べて74.7%増加した。25年度の申込者に対する倍率は4.1倍だった。
人材が霞が関の内外を行き来する開放的な制度が必要だ。事務次官や局長など幹部に就くことが成功とされる単線型のキャリア形成が多様な働き方を狭めてきた・・・
・・・さらに26年の人事院勧告は「成長できる職場の整備」をうたった。目玉の一つは官僚として得られるスキル(技能)の見える化だ。
人事院は6月、中央省庁で身につけられる57種のスキルを一覧にした。①業務②対人③課題解決の3つに分類したのが特徴だ。①は資料作成力や法令・制度への理解、②はプレゼンテーション力やリーダーシップ、③は国際的視野や課題発見力などを求める。
人事院では秋ごろから始める人事異動の希望調査で一覧の活用を始める。現時点のスキルを自覚し、どの場所であれば自分が成長できるかを判断する一助にする。一覧は一般にも公開しており、民間から官僚をめざす人も参考になる。
明治大の出雲明子教授(行政学)は「スキルを定義することにより、民間からの転職希望者が就きたいポストに求められる能力を把握しやすくなる」と話した。
海外に目を向けると、官民を行き来したキャリア形成や省内外での公募制度が定着する。米国では各省庁の上層幹部は政治任用で決まる。民間企業や法律事務所などからの指名は珍しくない。
新卒で採用して人材を育てていく日本の人事制度に近い英国や韓国でも幹部職員にはポストごとの公募制度がある。24〜25年の英国政府の調査によると、部長級以上の任用候補者の13%は直前のポストが民間だった。
韓国も組織内外から幹部ポストを公募するものの、現役官僚で合格者が占められることが多い。職務内容が特殊なため、民間志望者の職歴をどう考慮すればいいか判断が難しいからだ。人事院のスキル一覧はこうした課題の克服につなげる狙いもある。
官民交流には行政という特殊な経験を担った人材を確保できる点で民間にも利点がある。企業側にとっても受け入れ環境の整備が急務だ・・・