月別アーカイブ:2026年6月

日本人の孤独感、40年にわたり上昇

2026年6月4日   岡本全勝

5月21日の朝日新聞に「日本人の孤独感、40年にわたり上昇 81研究を分析、「悪化」を統計的に確認」が載っていました。

・・・「孤独」は世界的に非常に差し迫った重要な社会課題と言われるが、日本でも実際に悪化しているのか。中央大学の研究グループが日本国内で過去に実施された研究を分析したところ、約40年間にわたり孤独感が上昇していることを確認し、専門誌に発表した。

 孤独感は単なる個人の主観的な感情ではなく、心身の健康リスクを高める可能性が指摘されている。世界保健機関(WHO)の報告書によると、世界の6人に1人が孤独感に悩み、年約87万人の死亡の原因となっている。WHOは、孤独と社会的な孤立を、解決を急ぐべき深刻な公衆衛生上の課題と位置づけている。
日本も深刻化していると言われるが、長期的な変化はわかっていなかった。
そこで研究グループは、孤独感を定量的に評価するための指標(UCLA孤独感尺度)を使って日本で1983~2023年に実施された81研究のデータ(計約5万人が回答)を統合して分析した。
平均値の推移をみると、孤独感は約40年間で長期的に上昇していることが統計的に確認された。

青年期(中学生~大学生)、成人期、老年期(65歳以上)にわけたところ、とりわけ青年期で上昇していた。全体的には男性の方が女性より孤独感が高い傾向が見られるが、年々の変化をみると女性で上昇傾向が確認できた。新型コロナウイルス感染の流行前に比べて流行中の方が孤独感が高かったことも確認できた。
社会環境の変化の影響についても探った。単身世帯数やインターネットの利用時間のほか、経済的な豊かさを示すGDP(国内総生産)の増加は、孤独感の上昇と関連が見られた。また、平均の世帯人数や婚姻率の減少も、孤独感の上昇と関連が見られた・・・

血縁や地縁の希薄化、核家族化と単身者の増加、非正規労働者の増加など、一人暮らしで自由な生活を得たのですが、他方で孤独がやってきました。これは、連載「公共を創る」で取り上げている成熟社会の課題の一つです。他人とのつながりは面倒なものでもあります。スマートフォンによる便利なつながりは、多くの場合、深いつながりにはなりません。

オランダの歴史に学ぶ

2026年6月3日   岡本全勝

2026年オランダ・ベルギー旅行4」の続きです。
岡崎久彦著『繁栄と衰退と: オランダ史に日本が見える』(1991年、文藝春秋。1999年、文庫版)を再度、買って読みました。岡崎さんは、オランダの盛衰に日本は学ぶべきだという視点から、1906年にイギリスで出版されたエリス・パーカー著『オランダの興亡』を紹介する形で、16・17世紀のオランダの興亡を語っておられます。元は1990年に雑誌に連載されたものですが、当時の日本はバブル経済に踊っていました。やがて来る衰退に、警鐘を鳴らしておられたのです。

大国の盛衰を語る際に、16世紀をスペインとポルトガル、17世紀をオランダ、18世紀・19世紀をイギリス、20世紀をアメリカが覇権を持ったと見るのがわかりやすい説明です。オランダの場合は、それまで他国の支配下にあった、そして自然条件にも産物にも恵まれない小国が、どうして世界の大国になったのか。歴史家だけでなく、興味があります。そしてなぜ、衰退したのか。学ぶべきことがあります。
一国の盛衰は、国内要因とともに、対外的な要素もあります。競争相手がいないときや、競争相手に勝って覇権を取ります。しかし、豊かになることで製造業から金融業に移行し、また挑戦することが少なくなり、産業力が低下します。他方で、他国から挑戦を受けた際に、舵さばきを誤って負けていきます。指導者たちは、対外的な危機とともに、それを認識していても統一できない国内意見とも戦わなければなりません。この項続く。

なぜ「正しい」政策ができないのか

2026年6月3日   岡本全勝

5月15日の日経新聞オピニオン欄、門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストの「なぜ「正しい」政策ができないのか」から。

・・・政府は補助金を出して燃料油価格を抑えている。これに対しては①富裕層ドライバーも得をする不公平②財政負担の増大③需要抑制に逆行④脱炭素化とも矛盾――など多くの批判がある。
日経本紙が4月に実施した経済学者50人のアンケートでは、「ガソリン価格を抑えるための補助金支給は、縮小または撤廃するのが望ましい」という考えに、43人が「強くそう思う」「そう思う」と回答している。「そう思わない」は1人だけだった。
経済政策を巡り経済学者の意見がこれほど一致するのは珍しい。この政策の是非はもはや論点ではないということだ。論ずべきは、経済学者がそろって批判する政策がなぜ実施されているのかであり、その理由と対応策を示すのが経済論壇の役割である・・・

・・・コロナ禍に見舞われた2020年に、10万円の特別定額給付金が一律支給された。経済的な損害が大きい人に絞って30万円を支給する案もあったが、迅速に実行できないことが大きな壁となった。
その反省もあり、マイナンバーカードなど行政のデジタル基盤は、ある程度整備されてきた。しかしリアルタイムの所得把握などは進んでおらず、6年たったいまも、30万円支給案を実行できるかどうかは甚だ疑問である・・・

立命館大学で講義2

2026年6月2日   岡本全勝

立命館大学で講義」の続きです。
大学から、出席した学生約100人からの感想文と、13人からの追加質問が届きました。講師が話しっぱなし、学生は聞くだけという授業より、効果があるでしょう。

感想文はそれぞれに長いもので、目を通すのが一苦労です。でも、私が伝えたかったことが理解されていたので、まずは満足です。
・大震災の際に政府がこんな対応をしていたことに驚いた。
・公務員は決められたことをするものだと思っていたのに、新しいことを考える役割もあることがわかりました。
・公務員の仕事は「集団競技」「接客業」という説明は斬新でした。
・「新聞を読め」と多くの人はおっしゃいますが、その読み方、必要性を教えてもらったのは初めてです。
・困ったときに一人で悩まずに、相談することの重要性を知りました。

写真も送ってもらったので、つけておきます。

走ることを目的としてしまう

2026年6月2日   岡本全勝

5月26日の朝日新聞オピニオン欄「公害の原点」、保阪正康さんの発言「目標に一直線、先を考えぬ国民性」から。

―専門の昭和史研究で、水俣病を始めとする公害の問題をどうとらえていますか。
「私たちの国は、昭和の時代に二つの実験をやったように思います。一つは、1931年の満州事変から戦争に突き進んで敗戦に至るまで。もう一つは戦後の60~74年、池田勇人首相が『所得倍増』を打ち出して高度経済成長を推し進め、オイルショックで急停止するまでの時代のことです」
「同じ14年間で、国を破局に導き、かたや世界第2位の経済大国に駆け上がった。ポジとネガとも言える『相似形』の時代についてずっと考えてきました」

―何が見えてきましたか。
「ひとたび目標を設定すると、そこへ向かって直線的に一心不乱に走り続ける国民性です」
「短期間で国を劇的に変えるエネルギーを発揮する一方、そのプロセスで発生した問題や障害は見て見ぬふりをする。将来にどう跳ね返ってくるかは考えない。二つの時代にはそのような共通点があります」

―水俣病は現在も解決をみていない問題ですが、これまでの経緯から何を教訓とすべきでしょうか。
「国全体が目標に向かって突き進む時、国民の多くにある種の陶酔、満足感が呼び起こされます。国が教えることに倣い、従っていれば軋轢が起きず、責任も取らなくていい。いかに自分でものを考え、自立する意識を持つかが大事だということです」
「イギリス人は歩きながら考え、スペイン人は走ってしまった後で考える、という国民性を表すジョークがあります。それでいうと、日本人は走ること自体を目的にしてしまって、走る前も走った後も考えない。それは昭和だけでなく、今も変わっていないのではないでしょうか」