日経新聞社説に取り上げられました。

今日は13年目の、3.11でした。日経新聞の社説「東北の復興支え次の震災に生かせ」に、私の発言を取り上げてもらいました。

・・・能登の復興で生かすべき東北の教訓は持続性の高い街づくりだ。観光などで民間投資を呼び込める地域産業のあり方と、人口減少を考慮したコンパクトな街づくりを構想することである。
宮城県女川町は居住地を高台に移し、港周辺で若い世代を中心に観光の街づくりを進めている。当初は住民が流出し、20年分の人口減少が数年で一気に進んだ。その後は観光地として投資や移住が増え、人口減は鈍化した。街の持続性は高まったといえよう。

東北の復興に携わった岡本全勝・元復興次官は「街の将来を担う若者のいる市街地や中心集落は残すべきだが、高齢者がほとんどの小さな集落は集約することもやむを得ない」と提言する。東北には300を超える集落移転の事例があり、参考にしてほしい。
東北では人口の見積もりが甘く、防潮堤が守る地区やかさ上げした土地に空き地が目立つ。自治体は住民をとどめようと復興を急ぐが、当初は戻りたいと考えた住民も冷静に将来を考える段階になると心境を変えがちだ。丁寧に住民の意向を確かめ、長期的な視点で街づくりを考えたい・・・

NTT西の情報漏洩、自治体8割「流出元知らず」 

先日紹介した、西日本電信電話の元社員による個人情報持ち出し事件「情報不正持ちだし、対策の不備と組織文化」。3月4日の日経新聞が、被害にあった自治体の8割が、漏洩元の企業を把握していなかったこと、知っていたのはゼロだったと伝えています。「NTT西系漏洩、自治体8割「流出元知らず」

・・・NTT西日本子会社から900万件超の個人情報が流出した問題を巡り、被害にあった自治体の8割超が漏洩元の企業を把握していなかったことが、日本経済新聞の調査で分かった。情報を取り扱う業者の監督は法律などで義務付けられているが、昨年10月の問題発覚後も実態を「把握すべきだった」と回答したのは3割にとどまった・・・
・・・同社に住民情報の取り扱いを委託した自治体側の対応についても、専門家は「個人情報の管理が企業任せになり、委託先の監督を義務づける法の趣旨が骨抜きにされている」と指摘する・・・

詳しくは原文をお読みください。皆さんの自治体、あなたの部署では、大丈夫ですか。

『47都道府県・地質景観/ジオサイト百科』

鎌田浩毅先生の新著『47都道府県・地質景観/ジオサイト百科』(2024年、丸善出版)を紹介します。同社が出している「47都道府県百科シリーズ」の一つのようです。

地震や火山活動が活発になって、地学への関心が高まっています。宣伝文には、次のように書かれています。
「現代社会で関心の高い地震・火山についても言及し、また迫力ある図版も交えながら、全国の特徴的で珍しい地質景観/ジオサイトを興味深く解説する。
「地質と地質景観の基礎知識」を第I部に配置することで、誰でも抵抗なく読み通せる内容構成
各都道府県にどのような地質景観があるかがすぐ探せる都道府県別編集
知りたい地質景観がすぐに探せる充実した巻末索引
考古学、化石採掘、天文学、地震・火山、地球科学などの研究をこれから始めようとしている人にとっても知っておくと役立つ内容満載」

図鑑なので、調べやすく、読みやすいです。
参考「鎌田先生の解説、能登半島地震の仕組み

朝日新聞「能登へ、首長の教訓」

朝日新聞夕刊連載「現場へ!」、3月4日の週は「能登へ、首長の教訓」でした。大震災当時に苦労された首長さんが出ておられました。

この方々と一緒に、現地の惨状を見て、当初は途方に暮れました。いつになったら、がれきの山が片付くのやらと。もっとも最初は、膨大な避難者の生活支援で、先のことは考えられませんでした。それから、一つずつ片付けていったことを思い出しました。

首長さんの中には、お亡くなりなった方、引退された方も多いです。
あれから13年が経ちます。原発被災地では多くの地域で、まだ復興は緒に就いたばかりです。

追悼、五百旗頭真先生

五百旗頭真先生が亡くなられました。いくつかの報道機関から、発言を求められました。3月8日の朝日新聞では、少し取り上げられました。「五百旗頭さん、残した哲学 「創造的復興」被災者に光/批判すべきは批判
・・・神戸大名誉教授の政治学者で、東日本大震災復興構想会議議長や防衛大学校長を務めた五百旗頭真さんが6日、急性大動脈解離で死去した。80歳だった・・・
五百旗頭さんが復興に携わった被災地を中心に、悼む声が相次いだ。
2011年、東日本大震災の翌月に発足した復興構想会議。議長となった五百旗頭さんは「創造的復興」を掲げた・・・
・・・ともに10年近く復興行政に携わった岡本全勝・元復興庁事務次官は「政権内に防災・減災の哲学を植え付けた」と五百旗頭さんの功績を語った・・・

先生の復興に関しての功績は、復興構想会議提言で、戦後の災害復旧思想を転換してくださったことです。戦後の復旧・復興行政は、元に戻すこと、同じ災害での被害を防止することを基本としてきました。公共施設や住宅は元に戻します。防潮堤を復旧する際には、過去の最も大きな津波を防ぐことができる高さにしました。しかし、千年に一度の津波を防潮堤で防ごうとしたら、とんでもない大きさの防潮堤が必要になります。そこで、防潮堤と逃げるを組み合わせた復旧に転換したのです。防災から減災へです。それによって、高台移転や町のかさ上げを行いました。
これがなければ、東日本大震災からの復興は現地で意見が分かれ、混乱した可能性がある。その点では、復興哲学を転換したという大きな功績です。これは、住民の意見を聞く政治家も、官僚にも難しいことでした。

先生はまた、構想会議の提言をまとめるだけでなく、引き続き復興推進委員になって、その提言が実行されるか見届けてくださいました。何度も、現地を見ていただきました。多くの政府審議会は、提言して終わりが多いのですが、お目付役も果たしてくださいました。
ご冥福をお祈りします。