連載「公共を創る」第150回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第150回「現代日本の新しい対立軸」 が、発行されました。前回から、現代日本の、新しい対立軸を考えています。

私が考える第1の対立軸は「非正規格差」です。第2の対立軸は「保守と革新」です。といっても、かつてのような復古的な右翼と、革命を目指す左翼の対立ではありません。
かつての日本社会の安定と経済成長を支えた、日本的経営、労働慣行、「標準的家庭」、男女の偏った役割分担などを忘れられない人たち(保守)と、それを変えようとする人たち(革新)との違いです。

以上の二つの対立軸と交叉するのが、もう一つの軸である「排斥」と「包摂」、多様性を認めるか否かです。国民の中に多様性を認めるとともに、困難を抱えた人を包摂しようとする考え方と、少数者を排斥するないしは自己責任を求める考え方の対立です。

ここに挙げた3つの対立軸は、現在の日本社会に生まれている亀裂です。しかし、個々の問題は議論されていますが、まだ社会を分断する対立軸として認知され、克服のための進行方向が共有されていないようです。対立の両側が組織化されていないことと、それぞれの立場を代表する理論や進行方向(理想像)が示されていないせいでしょう。それを拾えていない政党政治にも、問題があります。

これで、第4章2(3)「社会をよくする手法」を終えて、次回から、3(1)「社会の変化と行政の役割」に入ります。(3)「社会をよくする手法」は、もっと簡単に終わると考えていたのですが、意外と長引きました。