年別アーカイブ:2022年

頼み事が来たら「はい」と言う

2022年6月17日   岡本全勝

6月2日の日経新聞夕刊「人間発見」、舞台プロデューサー 吉井久美子さんの「ブロードウェーで生きる 4」から。

・・・「ウエスト・サイド物語」や「オペラ座の怪人」など数多くの名作の制作や演出を務めたブロードウェーの巨匠、ハロルド・プリンス氏(故人)。同氏の半生を振り返る「プリンス・オブ・ブロードウェー」(2017年上演)を手がけた。
雲の上の人だったハルとの初対面は忘れもしません。劇場で紹介してもらったとき、私のような若手のあいさつに、ハルはさっと立ち上がるのです。同じプロデューサー同士、対等だという彼の気配りでした。当時とてもうれしかったと後に伝えたら「そんなの当たり前じゃないか」と笑っていました・・・

・・・ハルから学んだことはたくさんありますが、一つは「何に対しても『NO(ノー)』から入らないこと」です。もちろん無責任に引き受けてはいけませんが、仕事でも何でも頼み事がきたら最初に「YES(イエス)」と言う。
ハルは他人に「YES」と言ってもらえる話し方も心得ていました。おだてられると頑張ってしまうのは私の元来の性格かもしれませんが、人間はポジティブな気持ちが原動力となるものだと思います・・・

現代社会の時間泥棒

2022年6月16日   岡本全勝

『モモ』という童話を読まれたことがありますか。ドイツの作家ミヒャエル・エンデの作です。1973年にでていますから、私は大人になってから読みました。あらすじは、本を読むなり、インターネットで見てください。
大人たちが、時間を節約することに熱心になり、逆にゆとりをなくすという話です。現代社会の時間に追われる私たちを風刺しています。すばらしい内容なのですが、子どもには難しいと思います。

豊かになるための手段が、そのうちに目的になり、本来の目的が失われることがあります。お金がそうでしょう。豊かな生活を送るために、お金を儲ける。ところが、お金儲けが目的になって、豊かな生活が送られなくなるのです。時計もそうです。計画的な時間配分をするために作った時計。ところが、その時計によって私たちの行動が管理され、振り回されるのです。

最近では、スマートフォンが典型です。便利のための道具なのに、朝から晩までスマホに支配されています。
「常時接続」という言葉があります。専門的には、コンピュータが常にインターネットと接続状態にあることをいいますが、私たちの日常生活では、携帯電話やスマートフォンにメールや電話がいつでもかかってくることに使えます。
コンピュータの常時接続なら、自分の都合に合わせて使えばよいのですが、スマートフォンの場合はそうはいきません。時と所をかまわずかかってきます。無視すればよいのですが、気になって見てしまいます。持ち運びが簡単なので、屋外でも、電車中や歩きながらでも、応答します。「何か来ていないか」「すぐに返事しないと」と不安になるようです。そして、自分の時間を取られてしまいます。

スマホの画面を見て、指で操作をしていると、「何かをやっている感」があります。これもくせ者です。やっている感ですが、時間も脳もスマホに支配されています。時間泥棒は脳泥棒でもあります。
スマホにのめり込んでいると、人に会う、旅行に行く、本を読む、商店街に行く、運動をする・・・。そのような行動と選択をしなくても良いのです。自分の行動を支配されています。

便利さを求める。それは心身ともに豊かな生活を送るための道具だったはずです。しかし、見る人をとりこにする刺激的で面白い内容、いつでもどこでも使えるという便利さが、使う人から時間と考えることを奪っています。作った物に使われる逆説。
「すき間時間にできます」とは、そんなわずかな時間までもが、スマホに取られてしまうのです。究極の「時間泥棒」です。

動画を倍速で見る若者たち

2022年6月16日   岡本全勝

5月28日の朝日新聞読書欄で、宮地ゆう・副編集長が副編集長が、稲田豊史著『映画を早送りで観る人たち』(2022年、光文社新書)を取り上げていました。「余裕ない若者の「自己防衛策」

・・・映画などの動画を早送りで見る習慣が、若者の間に広まっているという。多くの人が、「一体何のために?」と思うだろう。だが、「いまどきの若者は……」と切り捨ててしまう前に、まず本書を読んで欲しい。お金も時間も余裕もなく、SNSやリアルな社会からプレッシャーを受けて生きる世代の姿が痛々しいほどに浮かび上がる。
著者が行った大学生の調査では、倍速の視聴を「よくする」という人は35%、10秒ごとに飛ばす視聴を「よくする」という人は50%いたという。
彼らはSNSで友人との話題について行くために数をこなす必要がある。だから、手っ取り早くあらすじを知りたがる。
2時間の映画をゆっくり見ていた世代とは経済状況も違う。大学新入生の仕送りによる生活費は、約30年前の約4分の1。授業もバイトもあり、娯楽にかけられる時間やお金は圧倒的に少ない。時間の無駄だったと思わないよう、あらすじを知った上で作品を選ぶ。ストレス過多の彼らは、難解な作品、感情を乱される作品は求めていない。
こうした受け手の変化は、作る側にも影響し始めている。沈黙で感情を表現するなどという場面は早送りされてしまう。「苦しい」「痛い」といった登場人物の心の声まで字幕にして、わかりやすい物語を作る・・・

5月26日の読売新聞も取り上げていました。「広がる「倍速視聴」メリットと不安
・・・「ウルトラマンマックス」やアニメ「サザエさん」などのシナリオを手がけた脚本家の小林雄次さん(42)も現状に不安を感じている。
主人公がピンチに追い詰められた末に勝利するから感動が大きくなるように、脚本家は視聴者をひきつけるため、ストーリーに緩急をつける。ところが、暗い話は「停滞」、沈黙シーンは「無意味」と捉えられる――。そんな風潮を危惧しているという。小林さんは、「映像作品は『時間の芸術』とも言う。見たいところだけを見ると、作者の意図が伝わらない」と複雑な心境を明かす。
倍速視聴によってコミュニケーション能力の低下を招く可能性もある。

玉川大脳科学研究所教授の松田哲也さん(認知神経科学)によると、人は作品の登場人物のやり取りから、実生活に役立つ対人スキルなどを学ぶという。例えば、「いいよ」など同意の返事一つとっても、相手の返答までの間や目線の動き、頬のこわばりなど、様々な情報から同意の程度を読み取ろうとする。倍速だと細かい情報を見落としてしまい、推察力などを習得する機会を無意識のうちに失うそうだ。
松田さんは、「倍速視聴は効率的だが、得られる情報量は減り、感情移入しにくくなる場合がある。その功罪を理解して使うことが大切だ」と助言する・・・

6月10日の朝日新聞文化欄「倍速視聴、現代を生き抜く戦略 時間のコスパ重視、20代49%が経験」も、取り上げていました。

神戸防災技術者の会で講演

2022年6月15日   岡本全勝

14日は、K-TEC(神戸防災技術者の会)に呼ばれて、神戸で講演しました。夜18時半からの講演に、たくさんの人が集まってくださいました。
神戸防災技術者の会」は、阪神・淡路大震災の復興を経験した神戸市の職員たち(退職者と現役)がつくっておられる会です。その経験を活かし、防災の普及活動などをしておられます。東日本大震災でも、経験と技術で復興の支援をしてくださいました。今もしばしば現地を訪れるなど、被災地とのつながりを大切にしています。

お礼を込めて、話してきました。東日本大震災では、孤独防止など阪神・淡路大震災を教訓にしつつ、他方で街が飲み込まれたり全町が避難しなければならないという違いにも配慮しました。発災直後の私たちの合い言葉は、「阪神・淡路大震災を参考にしつつ、参考にしない」でした。

阪神・淡路大震災から27年が経ち、経験していない若者も増えています。教訓は語り伝えられていますが、実際に体験したり見たりとは、違います。引き継ぐことは、時間とともに難しくなります。

中小企業ではまだファックス

2022年6月15日   岡本全勝

先日「電子化の進め方、いまだにフロッピーディスクが使われていた」を書きました。企業では取引は電子化されていると思っていたのですが、ファックスでのやりとりが、まだ多いのだそうです。5月30日の日経新聞「中小企業、なおFAXの山 40年未完の電子受発注

・・・官民挙げて「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が叫ばれても、中小企業の事務机からファクスの山が消えない。日本では1970年代から企業間取引の「EDI(電子受発注)」システムが動き出したが、2次、3次の下請けは蚊帳の外のまま。中小企業の大多数が不在のDXではサプライチェーン(供給網)の生産性は底上げされない・・・

記事で取り上げられている鋼材加工メーカーは、約400社の取引先を抱え、ファクスで届く注文書を6人の社員がその内容をコンピュータに手作業で入力しているのだそうです。
指摘されている問題は、次の通り。
・中小企業はまだファックスを使ってやりとりしている。
・大企業は電子受発注しているが、業界によって仕様が異なり、接続できない。