動画を倍速で見る若者たち

5月28日の朝日新聞読書欄で、宮地ゆう・副編集長が副編集長が、稲田豊史著『映画を早送りで観る人たち』(2022年、光文社新書)を取り上げていました。「余裕ない若者の「自己防衛策」

・・・映画などの動画を早送りで見る習慣が、若者の間に広まっているという。多くの人が、「一体何のために?」と思うだろう。だが、「いまどきの若者は……」と切り捨ててしまう前に、まず本書を読んで欲しい。お金も時間も余裕もなく、SNSやリアルな社会からプレッシャーを受けて生きる世代の姿が痛々しいほどに浮かび上がる。
著者が行った大学生の調査では、倍速の視聴を「よくする」という人は35%、10秒ごとに飛ばす視聴を「よくする」という人は50%いたという。
彼らはSNSで友人との話題について行くために数をこなす必要がある。だから、手っ取り早くあらすじを知りたがる。
2時間の映画をゆっくり見ていた世代とは経済状況も違う。大学新入生の仕送りによる生活費は、約30年前の約4分の1。授業もバイトもあり、娯楽にかけられる時間やお金は圧倒的に少ない。時間の無駄だったと思わないよう、あらすじを知った上で作品を選ぶ。ストレス過多の彼らは、難解な作品、感情を乱される作品は求めていない。
こうした受け手の変化は、作る側にも影響し始めている。沈黙で感情を表現するなどという場面は早送りされてしまう。「苦しい」「痛い」といった登場人物の心の声まで字幕にして、わかりやすい物語を作る・・・

5月26日の読売新聞も取り上げていました。「広がる「倍速視聴」メリットと不安
・・・「ウルトラマンマックス」やアニメ「サザエさん」などのシナリオを手がけた脚本家の小林雄次さん(42)も現状に不安を感じている。
主人公がピンチに追い詰められた末に勝利するから感動が大きくなるように、脚本家は視聴者をひきつけるため、ストーリーに緩急をつける。ところが、暗い話は「停滞」、沈黙シーンは「無意味」と捉えられる――。そんな風潮を危惧しているという。小林さんは、「映像作品は『時間の芸術』とも言う。見たいところだけを見ると、作者の意図が伝わらない」と複雑な心境を明かす。
倍速視聴によってコミュニケーション能力の低下を招く可能性もある。

玉川大脳科学研究所教授の松田哲也さん(認知神経科学)によると、人は作品の登場人物のやり取りから、実生活に役立つ対人スキルなどを学ぶという。例えば、「いいよ」など同意の返事一つとっても、相手の返答までの間や目線の動き、頬のこわばりなど、様々な情報から同意の程度を読み取ろうとする。倍速だと細かい情報を見落としてしまい、推察力などを習得する機会を無意識のうちに失うそうだ。
松田さんは、「倍速視聴は効率的だが、得られる情報量は減り、感情移入しにくくなる場合がある。その功罪を理解して使うことが大切だ」と助言する・・・

6月10日の朝日新聞文化欄「倍速視聴、現代を生き抜く戦略 時間のコスパ重視、20代49%が経験」も、取り上げていました。