年別アーカイブ:2022年

コメントライナー目次

2022年1月4日   岡本全勝

2022年1月から、時事総合研究所の「コメントライナー」に寄稿しています。コメントライナーは、時事通信社が契約購読者に毎朝配信する、署名入り解説記事です。官僚の経験を生かして、報道では見過ごされている事実や、報道とは少し違った分析を書くようにしています。

2022年
1月6日「若手官僚の不安と不満
3月1日「管理職の必須知識
4月19日「『コロナ禍』を『コロナ成果』に
6月7日「憲法改正は地方自治の規定から
7月29日「小さな政府論の罪
9月16日「最低賃金決定に見る政治の役割
11月7日「社風をつくる、社風を変える
12月27日「それは首相に質問すること?

2023年
2月13日「人事評価、職場と職員を変える手法
3月24日「首相秘書官の現実と課題
5月11日「「行政文書」は正確か
7月10日「一身にして二生を過ごす
8月10日「マイナカード問題と組織管理
10月12日「役所にも人工知能がやってくる
12月14日「日本型職場の功と罪

2024年
2月22日「工程表のない政治
4月26日「管理職を育てる組織へ
7月4日「転職自由社会が与える衝撃
9月10日「行政改革と縮み思考から卒業を
11月18日「日本を支えた意識の劣化

2025年
1月30日「現代日本特殊論
4月10日「選挙投開票にも「働き方改革」を
6月19日「日本の政治はなぜつまらないのか
8月18日「英語が国語になる日
10月27日「官製雇用格差を止めよ
コメントライナー目次2」に続く

巨大情報通信企業の情報開示

2022年1月4日   岡本全勝

12月24日の日経新聞、ファイナンシャルタイムズ、ラナ・フォルーハーさんの「テック大手、広く収益開示を 個人情報の価値反映」から。

・・・米国のアルファベットやアマゾン・ドット・コム、メタ(旧フェイスブック)といったプラットフォーム大手や、マイクロソフトが利用者に関する多くの情報を追跡しているのは周知の事実だ。
ただ、検索から電子商取引、SNS(交流サイト)、クラウドコンピューティングまで、これら企業が運営するプラットフォームで得る情報からいかにして利益を得ているかはあまり明らかではない。彼らが握る情報量の多さに対し我々、利用者の知る量はあまりに少ない。この非対称性は、大手テックへの核心的批判の一つとなっている。
米欧の規制当局は、テック大手がこの情報の非対称性を武器に消費者や企業顧客に不利な状況を作り出している点を問題視し、調査している。

英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)のイノベーション公共目的研究所(IIPP)が12日に発表した報告書は、テック大手への逆風をさらに強める内容だ。これによると、テック大手は米証券取引委員会(SEC)の年次報告書(10K)の開示規則を逆手にとって、本来なら提供すべき詳細な財務情報の開示を回避しているという。
米オミダイア・ネットワークが資金を提供したこの研究プロジェクトでは、UCLの研究者のイラン・ストロース氏、ティム・オライリー氏、マリアナ・マッツカート氏、ジョシュ・ライアンコリンズ氏がSECの開示規則がデータを収益化するIT大手の事業モデルに適しているかを調べた。結論はあまり適してないというものだった。
消費者物価を企業の独占力の尺度とする米国の現反トラスト法(独占禁止法)が、無料でサービスを提供する代わりに利用者のデータをテック企業が得る手法が横行する今の時代に不向きなように、SECの現在の開示規則も大量の個人情報を使って巨額の利益を稼ぐ監視資本主義には適さない。

根本的問題が2つある。第一は、今の金融規制当局は財務情報にしか目を向けていない点だ。テック大手は無料でサービスを提供し、利用者の増加がさらなる利用者増につながるネットワーク効果を発揮できる規模まで利用者を増やすことで自社のあらゆる製品やプラットフォームからデータを収集、それを収益化している。財務情報しか開示せずにすむおかげで、テック大手は市場を支配している実態を隠して利益率を上げ、様々な不公正な方法で自社プラットフォームの優位性を高めることが可能になっている。
第二にテック大手など多様な事業を抱える複合企業のセグメント開示に関するSEC規則は、プラットフォームで収集するデータに秘められた巨大な価値を認識していない。今の規則は収益を直接的に生む製品しか対象にしていない。テック大手を理解していれば誰でもわかるが、膨大なデータを集積し、それを収益化できる点に価値がある・・・

テレワークの課題、企業調査

2022年1月3日   岡本全勝

12月29日の朝日新聞経済面に「テレワークの課題は?利点は? 主要100社調査」が載っていました。
・・・テレワークの利点と課題が、主要100社を対象にした朝日新聞のアンケートで浮かび上がった。多くの企業が「従業員の負担軽減につながった」とする一方で「コミュニケーションの希薄化」に悩んでいる。オンラインでの対話を進めたり、どこで働くかの判断を社員に委ねたり。働き方の模索が続く。

調査は11月後半に実施しテレワークの利点と課題を複数挙げてもらった。
その結果、利点では「通勤の負担軽減」(96社)、「ワーク・ライフ・バランスの向上」(85社)が目立った。「不要な業務や会議が洗い出された」という回答も48社あった・・・
・・・ 一方の課題は「社内コミュニケーションの希薄化」を挙げる企業が多く、86社にのぼった。
住友ゴム工業の山本悟社長は「新入社員や転入者などへの教育は在宅勤務では難しい」。三井物産の堀健一社長も「他部署などとの偶発性の高いコミュニケーションはオンラインでは難易度が高い」と話した・・・

・・・テレワークはコロナ下で急速に広がった。昨年4月に、政府が「出勤者の7割削減」を経済界に求めたことが一因だ。経団連は今年11月、一律の要請は経済活動を妨げるなどとして「7割」の目標を見直すよう提言。政府はこれに応じ、数値目標を撤廃した。
働き方評論家で千葉商科大准教授の常見陽平さんは「働き方の傍流だったテレワークが、コロナ禍で一気に主流になった。十分な議論は重ねられていないし、問題が出てくるのは当然。実際どうだったのかを検証すべき時期にきている」と指摘する。
その上で「テレワークも出社も、うまく交ざればいい。交ぜ方を各社、各部門、各個人でいかにコントロールできるかということが論点だ」と話す・・・

佐伯啓思先生「資本主義の臨界点」2

2022年1月3日   岡本全勝

佐伯啓思先生「資本主義の臨界点」」の続きです。
・・・ところが、高度な工業化による大量生産・大量消費による経済成長は、先進国では1970年代には頂点に達する。そこでその後に出現した「成長戦略」は何かといえば、80年代以降のグローバル化、金融経済への移行、それに90年代の情報化(IT革命)であった。先進国は、グローバル化で発展途上国に新たな市場を求め、新たな金融商品や金融取引に利潤機会を求め、ITという新技術にフロンティアを求めた。そして、その結果はどうなったのか。
それらは、ほとんど先進国に富も利益ももたらさなくなりつつある。グローバル化は中国を急成長させたが、米欧日などの先進国は、成長率の鈍化、格差の拡大、中間層の没落などに悩まされる。モノの生産から金融経済への移行は、金融市場の不安定化と資産の格差を生み出した。情報革命は一握りの情報関連企業に巨額の利益を集中させた。いわゆるGAFA問題である。明らかに新たなフロンティアは限界に達しつつある。

今日、先進国は、一方では、格差問題の解消へ向けた所得再分配に舵をきるといい、他方では、改めて新興国の市場を取り込むグローバル化と、デジタル技術の革新に活路を求めている。結局「グローバリズム」と「イノベーション(技術革新)」を成長に結びつけ、その成果をもって格差を是正しようというのである。
では「グローバリズム」と「イノベーション」は成長を可能とするのだろうか。話はそれほど簡単ではない。グローバリズムは、今日、国益をめぐる国家間の激しい競争へとゆきついた。成長戦略や経済安全保障を政策に組み込んで国益を積極的に実現することが国家の責務となった。自由な市場競争どころではない。新重商主義とでもいうべき国家主導の経済戦略なのである。

また、イノベーションが経済成長を実現するなどと気楽に構えるわけにはいかない。今日のイノベーションは確かに一企業の生産効率を高め、労働コストを低下させることは事実であろう。しかしそれが意味するのは、勤労者の所得の低下である。少なくとも総所得が上昇するとは考えにくい。ということは、総消費は増加せず、GDP(国内総生産)の増加はさして見込めないであろう。
かくて、AIやロボットや自動運転装置等のイノベーションは目覚ましく、確かにわれわれの生活を変えるであろうが、だからといってそれが経済成長につながるという保証はどこにもない。新技術が大衆の欲望フロンティアを開拓して大量生産・大量消費の好循環を生み出した高度成長の60年代とはまったく異なっている。
とすれば、空間、技術、欲望のフロンティアを拡張して成長を生み出してきた「資本主義」は臨界点に近づいているといわざるをえない。「分配」と「成長」を実現する「新しい資本主義」も実現困難といわざるをえないだろう・・・

・・・近代社会とは、人間が、己の活動や欲望について無限の拡張を求める社会であった。科学や技術によって自然を支配し、それを自らの自由や欲望の拡張に向けて改変する時代であった。そこに無限の進歩があるとみなした。資本主義は、近代人のこの進歩への渇望に実にうまく適合したのである。
そして今日われわれは、人間の外部に横たわる自然を改変するだけではこと足りず、AIや遺伝子工学、生命科学、脳科学等によって、われわれ自身を改変しようとしている。これらの新しいテクノロジーによって一層の自由や富や寿命を手に入れようとしている。本来的に有限で、いわば「死すべきもの」である人間が、無限で「永遠なるもの」へと接近しようとしているようにも見える。人間が人間という「分限」を超え出ようとしている。近代の欲望は、まだ「有限性」の中にあって少しずつフロンティアを拡張するものであった。だが最近の技術は、それさえも超え出てしまったのではなかろうか。
皮肉なことに、人間の「有限性」を突破しかねない今日の技術のフロンティアにあって、先進国は経済成長の限界に突き当たっている。われわれはようやく「資本の無限の拡張」に疑いの目をむけつつある。とすれば、われわれに突き付けられた問題は、資本主義の限界というより、富と自由の無限の拡張を求め続けた近代人の果てしない欲望の方にあるのだろう・・・

私の書き初め

2022年1月2日   岡本全勝

お正月といえば、かつては、書き初めがありましたよね。毛筆がすたれた現在では、少なくなったのでしょうか。
私にとっての書き初めは、原稿書きです。これは、風情がありませんねえ(苦笑)。

新聞社などから、1月掲載用に短い記事を2本、求められていました。締めきりはまだ先なのですが、抱えて年を越すのは嫌なのと、片付けることができるものから片付けないと他のものも進まないので、年末に原稿を出しました。一安心。
他にも原稿依頼や講演の依頼を受けていて、準備が必要なのですが、それは後回し。

まずは、連載の続きに、めどをつけなければなりません。ということで、新年早々、「公共を創る」の執筆に取り組んでいます。
今回も専門外の分野で、私の頭の整理や、事実の確認に時間を費やしています。それとともに、文章の構成に悩んでいます。ある項目を、あっちに持っていったり、こっちに持ってきたり。いつものことです。
このような執筆は、先が読めない、いつまでにどれくらい書けるか時間の予定が立たないのです。方向はある程度定まっているのですが、地図のない、道の分からない道を歩いているようなものです。それでも、年末に悩んでいた一つの壁を突破できたので、少しははかどるでしょう。壁というより、泥沼から抜け出て小さな峠にたどり着いて、先が少し見えたという表現がよいですかね。

そのほか、このホームページの記事の執筆もあります。これは思いついたときに書いて、貯めてあります。