年別アーカイブ:2022年

お酒好きは、出社する

2022年12月2日   岡本全勝

11月21日の日経新聞に「出社再開 「お酒好き」から 在宅派との交流が課題」が載っていました。

・・・企業がポストコロナ時代の働き方を探るなか、オフィス街に戻りつつあるのはどんな人か。日本経済新聞が携帯電話の位置情報と趣味や職業などの属性を分析したところ、「お酒好き」な人は朝から出社する傾向が強いことがわかった。「飲みニケーション」の健在ぶりがうかがえる一方、出社派と在宅派の交流という新たな課題も浮かびあがる。
ドコモ・インサイトマーケティング(東京・豊島)の協力を得て、平日のオフィス街にいる人の特徴を探った。NTTドコモが運営するポイントサービス利用者から許諾を得て集めたデータから趣味や既婚・未婚、年収などの属性と位置情報を分析した。
オフィス街の人口は回復しきっていない。新型コロナウイルス流行前の2019年9月と今年9月を比べると、東京駅や新宿駅周辺などの平日昼間の推計人口は2~3割少ないまま。在宅勤務を続ける人も多いとみられ、郊外の住宅地域はコロナ前よりも人が増えた場所が目立つ。
出社を再開した人にはどんな特徴があるのか。さまざまな属性ごとの傾向を分析したところ、目を引いたのが趣味による違い。ドコモ・インサイトマーケティングの加藤美奈さんは「お酒が好きな属性を持つ人は、他の属性に比べてコロナ前と近い水準まで戻りつつある」と指摘する。
東京・大手町のオフィス街でお酒好きの人の平日正午の推計人口は今年9月には1万1000人と、減少率は19年9月から11%にとどまった。「スポーツやアウトドア好き」は32%減、「料理好き」は23%減。国内の他の都市でも同様の傾向がある。

お酒好きはなぜオフィスに戻ってきたのか。東京都心の商社で働く男性は「仕事終わりに同僚や仕事相手と飲みに行けるようになり、ちょっとした相談がしやすくなった」と話す。インフォーマルな人間関係を築く「飲みニケーション」の復権がうかがえる。
リアルな接点を求める傾向は役職や年齢が上がるほど高い。管理職以外の「平社員」と管理職や役員の地位にある人の推計人口を比較したところ、平社員はコロナ前の70~80%と平均並みだが、管理職や役員は5ポイントほど高かった・・・

酒好き、異業種交流会好きの私としては、納得します。ただし、次のような指摘もあります。
・・・ただ、アフターコロナの飲みニケーションには注意も必要だ。ツナグ働き方研究所(東京・千代田)所長の平賀充記さんは「出社派と在宅派が無秩序に混じる『まだらテレワーク』で互いに疑心暗鬼になる弊害がある」と話す。在宅勤務者抜きで話を進めれば、従業員の分断を招く。日本生命保険のアンケート調査では職場の飲み会は不要と答えた人が5割を超えた・・・
これは、コロナにかかわらず、ふだんでも好きな人とだけ飲みに行くことで生じています。職場外の人なら選んでよいのですが、職場内では気をつけないと、そのような場が嫌いな人や事情のある人がのけ者にされる恐れがあります。

オンライン会議の有効性

2022年12月1日   岡本全勝

コロナ禍で在宅勤務が広がり、オンラインでの会議も増えました。
私は、役所の仕事の多くは在宅勤務では能率が上がらず、職員の不安や悩みに答えることができないと考えています。なにより、新採職員や異動してきたばかりの職員の教育はできないと思います。
もちろん、出社しなくてもできる業務はあります。統計表の作成などは、どこにいてもできるでしょう。ただし、業務の進め方が分かっている職員や、困ったときに相談できる職員でないと、うまくいかないでしょう。

もう一つ、オンライン会議の有効性を再確認しました。財団の理事会など、遠くの人との会議です。
集まっての会議では、参加者の日程調整や会議室の確保など手間がかかりました。オンライン会議はお互いに便利ですね。そこまで出かけていく必要がないのですから。地方から東京に来るのは、1日仕事です。オンライン会議なら、その時間帯だけ空けておけばよいのです。そして、このような会議は、事前に資料を送ってもらい、疑問点を確認しておけば、しゃんしゃんと終わります。
かつては、参加者にそのような経験がなく、通信環境や機材も整っていませんでした。いまはそれも普及して、簡単につなぐことができるようになりました。

電子メールが普及し、電話しなくても情報のやりとりができるようになったときの便利さを思い出します。

外国出身高校生の日本語学習

2022年12月1日   岡本全勝

11月21日の日経新聞に「外国出身高校生の日本語学習 官民連携の教室、進路描く」が載っていました。

外国出身の高校生らの支援が課題になっている。日本語が不自由なままで学習や進路選びで困難を抱える生徒も少なくない。高校と教育委員会、NPO(非営利組織)が協力して手助けしている現場を訪ねた。
10月下旬の土曜日。神奈川県立川崎高校(川崎市)の教室に14人の若者が三々五々集まった。中国、フィリピン、ネパールなどの出身で、同市や横浜市北東部の高校に通う生徒たちだ。
川崎高では毎週土曜日、日本語学習支援教室が無償で開かれている。この日は日本語指導員ら10人の運営スタッフが生徒を迎えた。
教室は午前、午後の2部制だが1日通しで学ぶ生徒も多い。学習内容は一人ひとり違う。「げた箱」「体育館」といった初歩的な単語を学ぶ生徒もいれば、日本語能力試験で最高難度のN1レベルの問題に挑む生徒もいる。ある女子生徒は大学の推薦入試を前に、志望理由を書く作業に真剣な表情で取り組んでいた。

教室は2020年7月に開始。認定NPO法人の多文化共生教育ネットワークかながわや県教委、川崎高など4つの拠点校の協力で運営されている。同NPOによると、3者連携の取り組みは全国でも珍しい。
発足の背景にあったのは外国出身の生徒らの高校中退率の高さだった。18年度の文部科学省調査によると、日本語指導が必要な生徒の中退率は9.6%で全公立高校生の1.3%(17年度)を大きく上回った。
21年度調査では5.5%と改善したが全公立高校生(1.0%)との差は大きく、就職者のうち非正規の職に就いた割合も4割と非常に高かった。高校を中退すれば一段と不利になるだけに、中退防止の取り組みは「安全網として大きな意味を持つ」(同NPOの高橋清樹事務局長)。

外国出身の生徒たちには日本語力以外のハンディもある。進路選択や将来のキャリアを描くのに必要な情報の不足や、ロールモデルとなる"先輩"の不在だ。
そこで川崎高の教室では大学生が指導に加わっている。

文系の発想、理系の発想

2022年11月30日   岡本全勝

実用の学と説明の学」の続きです。自らの反省でもあります。
私が大学で習った法学は、実定法の解釈学です。実際の事案に現行法令に当てはめて結論を出します。どの条文に当てはまるかです。ところが現実には、法律が想定していない事態が起きます。その場合も、なんとかして現行法令に当てはめることができないか、いろいろと屁理屈を考えるのです。
「法律に書いていないことが起きた場合は、新しい法律をつくる」という発想がありませんでした。立法学は学ばなかったのです。法律を変えずに解釈で切り抜ける代表例は、憲法9条でしょう。

「実用の学と説明の学」で、社会学の多くは分析にとどまっていて提言が少ないこと、「批評の学」にとどまって「実用の学」になっていないと批判しましたが、法学も政治学も解釈と批評にとどまっていると、同じことが言えます。

かつて「理系の人間から見ると、文系の先生は過去の分析が主で、過去から現在を見て、現在で止まっているように見える。未来のことはあまり語らない。一方、工学は、現在の部分は産業界がやっているで、工学部はいつも5年先、10年先の未来を考えていないと成り立たない」という発言を紹介したことがあります。「過去の分析と未来の創造と:官僚の限界

公務員が新しい事態に直面して、「法律に書いていません」「予算がありません」「前例がありません」と発言するのは、「新しいことに関わるのは面倒くさい」という性癖とともに、このような解釈学思考に染まっているからかもしれません。行政には「過去との対話」でなく「未来との対話」が重要なのです。「過去との対話と未来との対話

アメリカ政府への信頼度の低下

2022年11月30日   岡本全勝

11月18日の日経新聞経済教室は、渡辺靖・慶応義塾大学教授の「トランプ氏前面に反発強く 中間選挙後の米国」でした。
今回のアメリカの中間選挙については、共和党の大勝利という事前予測が外れました。その点についてはたくさんの評論がなされています。この記事で注目したのは、それとは別の、政府への信頼度の低下です。記事に1958年から2022年までのアメリカ政府への信頼度が図になって載っています。
当初70%を超えていた信頼度は、60年代と70年代に急速に低下し、20%台になります。80年代は40%台に復活しましたが、90年代初頭には19%に低下します。2000年初めに54%に急上昇しますが、その後低下して現在は20%程度です。
この要因には、政治や行政の要因だけでなく、アメリカ経済や国力の好不調があると思われますが、大きな問題です。日本も同様なことが指摘できるでしょう。

・・・もっとも、米国の歴史は分断と対立の歴史であり、合衆国憲法の前文に記された「より完全な連邦」は一度も実現したことがない。独立や憲法制定を巡っても激しい政争があった。さらに言えば、建国の指導者らは三権を分立し、さらに議会を二院に分割し、州の権利を拡大することで、いわば分断や対立を意図的にビルトインしたともいえる。「決められない政治」によって権力者や世論の暴走を防ごうとしたわけだ。
ただ、だからといって、今日の状況を「よくある話」と片付けてよいとは思えない。例えば公民権運動やベトナム反戦が盛んだった1960年代は騒乱の時代でもあったが、政府への信頼度は高く、64年には77%を記録している。その後、01年の米同時テロなどの有事の時期を除き、総じて右肩下がりを続け、近年は20%前後の歴史的低水準にとどまっている。

長年、米政治をけん引してきた民主・共和両党の主流派(中道派)は信用を失い、「反ワシントン」を掲げるアウトサイダー候補が「変革」の担い手として待望されるようになった。この点はオバマ氏もトランプ氏も同じで、いわば政治不信の時代の産物といえる。「国民の和合」を求めたオバマ氏の試みは挫折し、国民を「我々」と「やつら」に分けたトランプ氏の試みは分断を加速させた。
コロナ禍のような国民の生命(いのち)と財産(くらし)を脅かす国家的危機を前にしてもワシントンが求心力を取り戻すことはなかった。民主党では左バネ、共和党では右バネが強まるなど、主流派と争うポピュリズム(反エリート主義)が遠心力を増し、両党のアイデンティティーを揺さぶっている。米国が分断と対立を繰り返してきたことは確かだが、近年の状況は質的により深刻に思える。
バイデン氏は半世紀にわたり国政に携わり、ワシントン政治を熟知している大統領だ。同氏がどこまで政治に対する信用や主流派の求心力を回復できるか・・・