年別アーカイブ:2022年

保険医療、政府に指揮権を

2022年3月4日   岡本全勝

2月21日の日経新聞1面は「保険医療、政府に指揮権を 日経・日経センター緊急提言」でした。

・・・新型コロナウイルス禍が日本の医療体制の脆弱性を浮き彫りにした。日本経済新聞社と日本経済研究センターは医療改革研究会を組織し、有事のみならず平時から患者が真に満足できる医療サービスを受けられるための緊急提言をまとめた。医療機関に政府・地方自治体がガバナンス(統治)を働かせる仕組みや、デジタル技術による医療体制の再構築を促している。
緊急提言は①医療提供体制の再構築②医薬イノベーションの促進③社会保障全般の負担・給付改革――の3つの柱で構成する・・・

このうち、③社会保障全般の負担・給付改革は、これまでも指摘され、実現していない項目です。①医療提供体制の再構築と②医薬イノベーションの促進は、今回のコロナ感染拡大で見えた問題点です。

・・・過去2年あまりのコロナ禍では、コロナ患者の治療に積極的に取り組む医療機関とコロナ患者を忌避する医療機関との二極化が明らかになった。地域によっては感染の急拡大期に医療人材の不足と病棟・病床の逼迫をもたらし、自宅療養を余儀なくされた患者が死にいたるなど深刻な事態をもたらした。
こうした悲劇を繰り返さないために、提言は「健康保険の適用を受ける医療機関や調剤薬局が得る利益の原資は、健康保険料と税財源を元手とする国・自治体の公費が大半を占める。医療提供体制について政府・自治体が一定のコントロール権をもつのは当然だ」と指摘した。
医療機関が自由開業制と診療科を自由に決められる特権的な扱いを受けていることについても「厚生労働省は医療団体に配慮し、長年にわたり改革を怠ってきた」として政策の不作為を問題視している・・・

社会や組織の問題点は、危機の時に顕在化します。もちろん事前に対応しておけばよいのですが、なかなかそうはいきません。社会と政府が試されるのは、危機の時に見えた問題点を、改善できるかどうかです。自然災害については、阪神・淡路大震災と東日本大震災で、かなり改善されました。

日本語を大切に2

2022年3月3日   岡本全勝

日本語を大切に」の記事に、読者から反応がありました。
・・・うちの母(89)を初めてワクチン接種に連れて行ったとき、背中にSTAFFと書いてある人たちを指して、「あれなんて書いてあるがけ。何する人たちけ」ときいてきました。
「スタッフ、って書いてあるがよ。お世話係の人たちや」と教えましたが、世話の対象である高齢の母には、世話係であることが伝わらないのでした・・・

原文は富山弁なので、本人の了解なしに「共通語」に翻訳すると次のようになります。
・・・うちの母(89)を初めてワクチン接種に連れて行ったんやけど、背中にSTAFFと書いてある人たちを指して、「あれ、なんて書いてあるねん。何する人や?」と聞くんよ。
「スタッフって書いてあるで。お世話係の人やわ」と教えましたが、世話の対象である高齢の母には、世話係であることが伝わらへんのでした・・・

追記
この記事について、「関西弁は西の共通語だから、西と東の中間にある富山弁が共通語です」と指摘がありました。

在宅勤務での意思疎通確保

2022年3月3日   岡本全勝

2月21日の日経新聞「働き方innovation 生産性上がっていますか(3)」「メルカリ、在宅でチーム力 離れても密に意思疎通」から。

・・・テレワーク普及で職場の一体感が薄れがちの中、チームをどう構築するか。注目されるのが、同じ目標へ結束する「チームビルディング」だ。在宅勤務率9割のフリマアプリのメルカリは、互いを知るプログラムや多くの部活動を設けている。生産性を高めるにはまず意思疎通から。コロナ禍でその重要性が増している・・・

・・・心理学者が考案した「タックマンモデル」によると、チーム力の強化は生産性向上に直結する。チームは最初の「形成期」は様子見の段階で、次の「混乱期」は個性や意見がぶつかりあう。衝突を乗り越える第3段階の「規範期」で個人の役割やルールが明確に。第4段階の「達成期」で同じ目標へ個々が能力を発揮し、成果を手にする。
メルカリは同様の概念に基づきチーム力の向上を図ってきた。21年6月期通期には連結最終損益で上場以来初の黒字を達成。一体感を目指した組織づくりが原動力となっている。
一方でテレワークが増えるにつれ課題も生じた。新型コロナウイルスの感染拡大も踏まえ勤務地などを自由に選べる制度を導入、今では1千人以上の社員の約9割が在宅勤務する。やり取りはオンライン中心で業務上の話に終始しがち。行き違いが起き、雑談からの新たなアイデアが生まれにくくなった。「誰にどう聞けばよいのか分からない」。不安を抱える新入社員や転職者もいた。

こうした中、21年に取り入れたのがチームコミュニケーションワークだ。
遠隔ではオフィスと違い細かな指示を出すのは難しい。そこで社員それぞれに、具体的な仕事の進め方や目標を定量的に定める「OKR(目標と主要な成果)」を意識させる。円滑な意思疎通で互いの働きを確認しながら、在宅勤務でも高い生産性をあげていく。
労務部門の打越拓也マネジャーは「互いに信頼関係が基盤にないと、全員が活躍できる環境づくりはできない」と強調する。今後も活用を増やす考えだ・・・

本田由紀著『「日本」ってどんな国?』

2022年3月2日   岡本全勝

本田由紀著『「日本」ってどんな国? ――国際比較データで社会が見えてくる』( 2021年、ちくまプリマー新書)が、お勧めです。

帯に「私たちの「普通」は世界では「変」だった」とあります。家族の形、性別役割、学校での学び、友達、仕事などについて、統計数値を元に世界比較をしています。そして、日本の「普通」が、いかに世界とは変わっているかが示されます。
かつては、日本の特殊性は日本優秀論としてもてはやされたのですが、今や日本特殊論は日本の経済停滞、社会の不安の原因となりました。あれほど売れた「日本人論」が最近では、本屋に並びません。このホームページでは、高野陽太郎著「日本人論の危険なあやまち」を紹介しました。

ちくまプリマー新書は、中高生を対象としているのでしょうか。簡潔にまとめられていて、大人にとっても読みやすいです。長く書くのは体力があればできますが、簡潔にまとめるには知能が必要です。
なお、同じように数値で日本の現状を分析した本に、橘木俊詔著 『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』(2021年、講談社現代新書)

進まない学校でのデジタル教育

2022年3月2日   岡本全勝

2月15日の日経新聞に「学校パソコン、もう返したい 教師の本音「紙と鉛筆で」」が載っていました。

・・・義務教育の子どもにパソコンやタブレット端末を1人1台ずつ持たせる「GIGAスクール」構想が空回りしている。国の予算でばらまかれた端末を持て余す現場からは「もう返したい」との声も出る。日本の教育ICT(情報通信技術)はもともと主要国で最低レベル。責任の所在がはっきりせぬまま巨額の税金を投じたあげく、政策が勢いを失いつつある。
「紙と鉛筆でなければ頭に残りませんよ」。神奈川県の中学校にICT支援員として派遣された山本真理さん(仮名、40代)は、中堅教師から本音を聞かされた。日々の業務が山積みの学校現場にとってGIGAスクールは「国から降ってきた話」であり、前向きに受け止めるムードになりにくい。
一部の若い教師が関心を寄せても、学年や教科で足並みがそろわなければ「保護者から『不公平』というクレームがくるかもしれない」といった組織の論理が優先されがちだ。山本さんは「結果的にパソコン授業をやりたくない先生やデジタル機器を扱うのが苦手な先生に合わせる流れができてしまう」と実態を明かす・・・

そこに、地方分権と教育委員制度が指摘されています。
・・・教室や家庭で端末を具体的にどう使うか国に強制力はなく、成功事例を積み重ねて社会の支持を広げるしかない。端末は25年前後に更新時期を迎える。責任体制を明確にして政策を再起動しなければ、めったに使われないパソコンに巨額の税金を費やし、子どもたちの教育機会も奪うことになる・・・
・・・■日本の地方教育行政 戦後日本の教育行政では、都道府県や市区町村ごとの教育委員会が幅広い権限を握ってきた。ところが、審議の形骸化やいじめ事件への対応などが問題になり、2015年の法改正で首長が教育委員会のトップである教育長を任命する仕組みになった。GIGAスクール構想が軌道に乗るかどうかも首長の動きに左右される面がある。
首長には教育委員会と協議して教育の目標や施策を「大綱」にまとめる権限がある。萩生田光一前文部科学相は21年4月、端末が未配備だった自治体の首長に直接連絡したと明らかにした。「ぼーっとしている自治体」「納品はされたが学校ではなく自治体の倉庫にあるという首長もいた」などと言葉の端々に不満をにじませた・・・

でも、教育委員会制度は、戦後の占領政策でアメリカから輸入した制度です。アメリカでのデジタル教育は進んでいるのですから、制度の問題ではないでしょう。新しいことを受け入れない教員、教育委員会の体質に問題があるのでしょう。