年別アーカイブ:2022年

社風を変える

2022年3月9日   岡本全勝

2月26日の日経新聞オピニオン欄、上杉素直さんの「社風変革、覚悟の「踊り場」」から。
・・・組織文化論に詳しい佐藤和・慶大教授によると、日本企業のカルチャーはとりわけ濃い。終身雇用でメンバーの入れ替わりが少なく、文化が守られやすい。採用や評価も同じ気質を求め、風変わりな社員もいずれ社風に染まる。
カルチャーに沿った行動パターンが確立されると、あうんの呼吸が成り立ち、冗長な指示は要らなくなる。業務の効率を考えればプラス要素が大いにある。半面、その怖さも知らなければならない・・・

・・・「不祥事の多くは悪意が原因でない。社会の変化に気づかず、規範に反する行為を慣性で繰り返す無意識から生じる」。佐藤教授の分析にはうなずかされる。
たとえば、システム障害を連発したみずほフィナンシャルグループはその企業風土を金融庁に糾弾された。「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という指摘が正しいとして、そこに悪意は存在しない。
善悪で割り切れないからむしろややこしいともいえる。不祥事にまみれてカルチャーの刷新を誓うが、結局変革がかなわず、失敗を繰り返すケースはみずほに限らない。こびりついたカルチャーの「解凍」は簡単ではない。

だが、企業が自らカルチャーを解かし、改めるのは不可能でないはずだ。「企業文化を変える」と正面から唱えた損害保険ジャパンの取り組みは示唆に富む。
損保業界は厳しい環境にある。人口減少でパイが減り、自然災害の増加でコストが膨らみ、デジタル化で競争は激しさを増す。経営者が危機感を高めるところまではよくあるストーリーだ。
そこからの行動がユニークだ。西沢敬二社長が2018年、特別チームに命じたのは、いわば自画像を描き直す作業だった。合併を繰り返して誕生した損保ジャパンが誇れる強みは何か。大きく5社の源流にどんな精神が宿ったか。その上で、未来に向けてどんなカルチャーをめざすのか。
めざすカルチャーは、乱暴にいえば、従来の流儀をひっくり返すものだ。損保ジャパンはもともと上意下達のノルマ主義で知られ、市場シェア日本一が社員の誇りだった。このトップダウン型から、お客を基点としたボトムアップ型への転換が始まった・・・
続きは原文をお読みください。

サントリー・みらいチャレンジプログラムの記者発表同席

2022年3月8日   岡本全勝

今日は、サントリーのみらいチャレンジプログラムの記者発表に同席するために、福島県庁まで行ってきました。
この企画は、2021年から始まっています。私も、福島県分の審査員になっています。今日は、2022年度の募集を始めるにあたって、説明会を実施しました。

9日の福島民報と福島民友が、写真入りで伝えてくれました。ありがとうございます。

先日、2021年の助成先からの中間報告を読んだのですが、人と会う、人を集める企画が多いので、このコロナ禍でそれぞれ苦労しておられます。

病院経営の自由と緊急時の政府の役割2

2022年3月8日   岡本全勝

病院経営の自由と緊急時の政府の役割」の続きです。2月22日の日経新聞「コロナが問う医療再建(上)」「医療、強すぎる「経営の自由」 患者本位へ政府関与を」から。

・・・こうした医療体制で行政ができるのは診療報酬や補助金などお金で医療機関を誘導するくらいしかない。自由という名の「放任」が現体制の本質だ。
その結果、診療科による医師の偏在、少子高齢化に対応した病床の再編、高齢者に寄り添うためのかかりつけ医機能の強化といった、積年の課題への対応も遅々として進んでいない。

こうした機動力と統制を欠いた医療体制では国民の健康や命を守りきれないという現実を突き付けたのがコロナ禍だ。政府・与党は「経営の自由」にメスを入れ、医療のガバナンスを確立する必要がある。
保険診療を担う病院や診療所は税と保険料を財源とする診療報酬で経営が支えられている。たとえ民間でも高い公益性が求められるはずだ。感染症対応など公共政策上の重要課題を遂行するために厚労相や知事の指揮下に入るように法律で位置づけるのは当然だ。
マイナンバー保険証やオンライン診療といったデジタル対応も任意とするのはやめ、保険医療機関の責務としなければならない。
公的な医療インフラの一角を担う存在として保険医療機関の役割や責務を問い直す。こうした改革が医療再生の第一歩となる・・・

明治以来の日本国政府は、供給者側に立っていました。インフラ整備と産業振興だけでなく、教育や医療もです。生徒や患者を相手にするのではなく、学校や病院を相手にしています。公共サービスを普及するには、その方法が効率的だったのです。しかし、それが行き渡ったら、行政も転換する必要があります。私が、生活者省を提案するのは、そのためです。

『デカルトの誤り』

2022年3月7日   岡本全勝

アントニオ・R・ダマシオ 著『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 』(2010年、ちくま学芸文庫) が、勉強になりました。

宣伝の文章には、次のように書かれています(一部略)。
「著者自身が携わってきた症例や歴史的症例をもとに、著者は、日常生活の折々の場面で求められる合理的な意思決定には、そのときの身体状態と不可分に結びついている情動と感情の作用が不可欠であることを明らかにした(「ソマティック・マーカー仮説」)。神経科学の第一人者が、いまもさまざまな形で社会に浸透しているデカルト的心身二元論を強く批判しつつ、有機体としての心‐脳‐身体の関係を解くベストセラー」

私たちの脳は、理性的に物事を判断する前に、感情や情動で判断しているようです。人類が生物として進化する過程で、理性より先に身体的反応が発達し、それで生き残ってきたのです。怖いものに遭遇したら、あなたはどのように行動しますか。あらゆる場合を想定して、安全な方法を計算するより、まずは逃げろです。
子供の発育を見ても、最初に感情や欲求があって、理性はその後に身につくものですよね。そして、私たちは他人を外見で判断します。理性で確認する前に、見た目で好き嫌いを感じます。
情動や感情があって理性がない症例はありますが、理性があって情動や感情がない症例はないのだそうです。理性は、情動や感情につながっています。まずは、私たちにとって有用か害か、好きか嫌いかで判断するようです。納得しますわ。
「デカルトの誤り」とは、心身を分けて考えた(心身二元論)デカルトへの批判です。

そして、理性は感情を完全には制御できません。知らずと涙が出て、顔が赤くなり青くなり、鳥肌が立ち、手が汗をかき、心臓がばくばくします。ほとんどの場合、止めようと思っても止まりません。この問題は、先日の記事「心は放っておくと暴走する」につながります。
そして、私たちの職場でも有用です。瞬間湯沸かし器と呼ばれる人や、部下を怒鳴る上司がいます。理性だけでは止められないのですね。拙著『明るい公務員講座』202ページに、感情の暴走を止める方法を書いておきました。

門外漢には、読み通すこととすべてを理解することは難しかったですが、概要をつかめたら良しとしましょう。

病院経営の自由と緊急時の政府の役割

2022年3月7日   岡本全勝

2月22日の日経新聞「コロナが問う医療再建(上)」「医療、強すぎる「経営の自由」 患者本位へ政府関与を」から。
・・・「命と健康を守るため、もう一段の対応が必要だ」。1日夕、後藤茂之厚生労働相は日本医師会の中川俊男会長に発熱外来の拡充を要請した。コロナ感染が疑われる患者が増え、翌日以降まで診察できないケースが続出したためだ。

変異型「オミクロン型」の感染力が強いのは確かだが、日本の外来診療にはもっと診察する能力があるはずだ。診療所は全国に10万施設、内科系に限っても7万施設とコンビニエンスストアの店舗数(約5.6万)をはるかに上回る。
だが実際に発熱外来として登録されたのは3.5万施設。うち1.2万施設は都道府県が公表する発熱外来リストへの掲載を拒んでおり、公表施設に患者が集中してしまう。
「多くの発熱患者がくると一般患者の診察と両立できなくなる」。都内のある診療所は非公表の理由をこう語る。こうした「半身」で構える診療所を除くと、稼働率は全体の2割強。総力戦とはいえない。

厚労相から医療界への要請はコロナ下で何度も繰り返された光景だ。そもそも、国民の医療アクセスが閉ざされる緊急事態なのに、なぜ命令や指示ではなく、要請しかできないのか。
問題の源流は1961年の国民皆保険制度の創設にさかのぼる。皆保険で急増した医療ニーズを引き受ける形で民間の診療所が増え、政府もそれを歓迎した。
82年まで25年間、日医の会長を務めた武見太郎氏は開業医の利益を重視し、政府と対峙した。医師が外部干渉を受けずに活動する「プロフェッショナル・フリーダム」を掲げ、政府の介入をことごとく阻んだ。
診療報酬増額を求めて全国一斉休診に踏み切るなど、歴代の厚相以上に医療政策に影響力を発揮した。開業医を中心とする医療体制はこの時代に確立され、「経営の自由」は民間医療機関の既得権になった・・・
この項続く
参考「保険医療、政府に指揮権を