連載「公共を創る」第129回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第129回「日本における政治・社会参加の現状考察」が、発行されました。

現在の社会における不安を減らすため、社会参加や他者とのつながりをつくることの重要性について述べています。前回は個人にとってのつながりの重要性を説明しました。今回は、社会の側から見た、各構成員と他者とのつながりの重要性を考えます。
この連載では、暮らしやすい社会を考える際、「社会の財産」を分類して、自然資本(自然環境)、施設資本(インフラ)、制度資本(サービス)のほかに、関係資本(人の信頼やつながり)、文化資本(住民が持つ能力や気風)の重要性を指摘しています。他者との信頼関係、さまざまな中間集団、助け合いといった地域の慣習、政治を支える精神など、関係資本と文化資本は他の資本と違って目には見えませんが、その存在は安心して暮らすために重要な要素です。そして、施設資本や制度資本が行政や企業によってつくられる「もの」であるのに対し、それらは住民の日々の行動と意識の中でつくられる「関係」であり、維持される「場」であると言えます。

「みんなちがって、みんないい」という言葉をよく耳にします。人それぞれに考え方が違います。それはお互いに認め合う必要があります。しかし「だから別々に暮らしましょう」では、社会での共同生活は成り立ちません。違いを前提とした上での、共同作業が必要なのです。「私の勝手でしょ」が成り立たない部分があることを認識し合い、社会参加していくことが必要なのです。言い換えるとするなら、「みんな違って、みんなで助け合って、みんないい」でしょうか。

他者とのつながりをつくること、社会参加することは、各人にとって負担にもなります。社会関係資本も民主主義も、一度つくればできあがる制度でなく、常に努力し続けなければならない運用なのです。