年別アーカイブ:2021年

隈研吾さん、手直ししながら町を作り替える

2021年1月10日   岡本全勝

1月1日の朝日新聞東京版に、「建築家・隈研吾さんに聞く 首都リノベーション時代へ」が載っていました。ネットは1月5日掲載のようです。

――東京の歩みをどう見ていますか。
東京を含め20世紀の都市は、モータリゼーションによって多様性が奪われたと言っていい。特に東京は多様性の強いヒューマンな街でした。明治までは歩きを中心に街全体が編成され、道も狭かった。
戦後は自動車が主役になり、世界のスタンダードに追いつかなければと、過剰適応をした。いわばモータリゼーション・コンプレックスが都市を変えてしまった。日本橋のように高速道路を街のど真ん中に持ってくるなど、街区が道路によって完全に途切れてしまいました。もう一度、歩ける街に戻すことが必要になっています。

――手がけている品川の開発コンセプトは。
目指すのは、「ウォーカブルな街づくり」。品川駅から900メートルくらいの歩ける距離で、元車両基地の長さを生かし、1本の人間のためのストリートをデザインするという意識です。始めにプロムナード(遊歩道)を主役としてどう造るべきかの議論があり、その後に建物がデザインされた。まずタワーありきの従来の都心型開発とは逆の発想です。

――これまでとは違う視点が求められますね。
行政にもディベロッパーにも建築家にも、これからはスクラップ・アンド・ビルドではなく、少しずつ手直ししながら街を磨いていく時間的思想、文化的思想が求められます。行政の関わりは、緑化や公開空地と引き換えにした容積率緩和だけ、ディベロッパーはより高く建てる、という時代はもう終わり。建築基準法も取り壊しと新築を前提としていたのが、用途変更がしやすい基準へと変わっていくはずです。
それには文化的リーダーシップが求められます。京都市が、閉校した校舎を新たな街づくりに活用している政策などは好例です。歴史的文化財でなくても、少し古くていい建物はたくさんある。そこをカッコよくしたい人はたくさんいる。そうした改築にインセンティブを設ける。コロナ禍以降の都市計画ではより一層、文化的思想への転換が不可欠なのです。

新宗教

2021年1月9日   岡本全勝

島薗進著「新宗教を問うー近代日本人と救いの信仰」(2020年、ちくま新書)を読みました。
創価学会、霊友会、大本、黒住教、金光教、立正佼成会、PL教団、天理教、真如苑、生長の家・・・さらに、オウム真理教もありました。いくつも名前が挙がりますが、私も多くの人たちも、その実態は知りません。既存宗教は、歴史で習ったり、葬式などで付き合いがあります。この本は、それら「新宗教」の概要を教えてくれます。

それらを4期に分類して、どのように受け入れられたかを説明します。
第1期 幕末維新から明治中期までに教団の基盤ができた新宗教
第2期 明治後期から大正期に発展し、戦前社会に大きな影響を及ぼした新宗教
第3期 戦後に発展し、大教団となった新宗教
第4期 1970年代以後勢力を伸ばした新宗教(新新宗教)

なぜ、既存宗教ではなく、これらの新宗教が庶民の心をつかんだのか。社会の背景と、各教団の布教の仕組みを解説します。納得です。
既成秩序が揺らぐ、経済成長が始まる、地縁血縁が薄くなる、貧富の差が進むなどなど、近代日本社会の変貌がその基盤にあります。
つらいかつ変えることが困難な中世社会では、あの世の信仰が庶民を救います。しかし経済が動き出すと、あの世ではなくこの世での利益を願い、また他者とのつながりを求めます。
経済成長を達成すると、その役割が小さくなります。現代では、大教団が信者数を減らしています。

増える教員の精神疾患

2021年1月9日   岡本全勝

12月22日の産経新聞が「公立校教員の精神疾患休職が過去最多 業務の増加、複雑化が一因か」を伝えていました。それによると、令和元年度に鬱などの精神疾患で休職した公立学校の教員数が5478人に上り、過去最多になりました(文部科学省、人事行政状況調査)。
精神疾患による病気休職者数は男性が2382人、女性が3096人。約92万人の全教員に占める割合は0.59%です。年代別では50代以上が最多で1789人で、30代や40代も1400人前後に上っています。若い教員だけでなく、経験豊富な先生にも多いのです。

平成30年度に精神疾患を理由に退職した公立小中高校の教員は27年度と比べ、いずれも増加しています(3年に1度の調査、学校教員統計調査中間報告)。
小学校の病気による離職者は661人、その中で精神疾患は457人です。中学校では、病気離職者は360人、うち精神疾患は242人です。

連載「公共を創る」第68回

2021年1月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第68回「日本は大転換期―どうつくるか、新しい時代の通念と道徳」が、発行されました。
前回から、日本社会の通念と道徳が、経済成長を経て変化していることを議論しています。

かつての村の暮らしには、貧しい時代の生活哲学がありました。物を大切にすることや、勤勉であることです。そして、村での教えに、明治以降は新しい意識が乗りました。「みんなで努力して豊かになろう」「欧米をお手本に追い付こう」という考え方です。それを表現した言葉が、向都離村(故郷を離れ、都会で学問や就職をすること)、立身出世(仕事などで成功し、世間に認められること)です。
しかし、この伝統的通念と道徳は、世間の変貌によって変化を余儀なくされます。伝統的な通念と道徳が、現在に必ずしも適合しません。そして、世間で生きていくための知識と判断力を、どこでも教えてもらえなくなりました。

社会の通念によって、個人の信念ができます。他方、近代科学を教えられても、多くの人が程度の差はあれ神や仏を信じています。不運にしろ幸運にしろ、人の力を超えたものを信じたいときや、科学を超えた説明を必要とすることがあります。そして、良い成果が出るようにお願いをし、占いを信じます。人間の力や自然科学を超えた存在を信じるのが、宗教です。

日本社会の低迷、経営者の高齢化

2021年1月8日   岡本全勝

12月26日の朝日新聞「けいざい+」「脱・おじさん企業文化下 マトリョーシカ現象に警鐘」から。

・・・「日本社会はなぜ低迷しているのか」
明治維新にもヒントを求めた。新しい国づくりを担ったのは、西郷隆盛や大久保利通ら30~40代だった。しかし、次第に組織の形が整うようになると、全体の利益よりも組織の利益が優先された。戦後から現在までの歩みと重ね合わせ、「再び組織の力が強まっている」と結論づけた・・・

・・・メンバーは経営者の年齢に着目した。
大企業の社長・最高経営責任者の平均年齢は、日本が63歳なのに対し、米国は58歳、欧州は55歳。若手はなかなか重要な役職につくことができない。金融庁などによると、東証1部上場企業の取締役のうち50歳未満は10%。女性も7%にとどまる・・・