年別アーカイブ:2020年

総花と優先順位と、切る勇気

2020年10月16日   岡本全勝

半年ほど前に書いて放置してあったのですが、「政策の階層」を書いていて思い出しました。

仕事をする際に、やるべきことの優先順位をつける必要があります。
個人でも職場でも、やるべきことややりたいことは、たくさんあります。能力ある人は、そうでない人よりも、たくさんのことを処理することができます。とはいえ、一人でできることは、限られています。すると、優先順位をつける必要があります。
そして、組織として仕事をする場合には、部下や関係者に、優先順位を示す必要があります。

何でもかんでも取り組むというのが、総花(そうばな)です。それに対し、どれを優先するか順番をつけるのが、優先順位です。
優先順位をつけるということは、優先しない項目を決めるということです。すると、その項目の関係者からは、反発が出ます。そこを説得し、納得させる能力があるかどうかが、次の課題になります。すなわち、優先する順位をつけることより、捨てる順位をつけることが重要なのです。
この項続く

井上義久・公明党副代表、復興にかける意気込み

2020年10月15日   岡本全勝

10月13日の公明新聞に、井上義久・公明党副代表、大震災復興加速化本部長のインタビューが載っていました。
井上先生は、政権復帰後から引き続き、公明党の復興加速化本部長を勤めておられます。大震災復興については、自民党と公明党による提言が毎年なされ(初期の頃はもっと頻繁に)、復興の方向性を示してもらっています。
この仕組みを作られたのは、大島理森・自民党復興加速化本部長(当時。現衆議院議長)と井上先生です。毎年被災地を訪問して現状を把握される他、各省の官僚が、時には被災地の関係者が呼ばれ問題点を議論します。ここまで復興が進んだのは、この与党提言の要素も大きかったのです。政治主導の一つの形だと、私は考えています。

・・・被災地では、インフラの整備や街づくりが着実に進められてきました。住民の足となるJR常磐線が全線開通し、復興道路として仙台市から青森県八戸市までをつなぐ三陸沿岸道路も完成しつつあります。津波で壊滅的な被害を受けた地域も、かさ上げが進んで住宅や商業施設などが建ち並ぶようになり、徐々に活気が戻ってきました。
ただ、東京電力福島第1原発事故で被災した地域と地震・津波の被災地域とでは、復興の進捗にばらつきがあるのが実情です。「第2期復興・創生期間」では、そうした地域ごとの課題と引き続き向き合い、解決に取り組む必要があります。
(今年9月の)提言では、被災地全体の課題として「心の復興」を明記しました。被災者一人一人が希望を持って人生を歩んでいけるよう、心のケア事業などの継続を訴えています・・・

・・・どんな災害であっても、復興するという意志があれば、またその意志を継続できれば、復興できるというのが私の確信です。
しかし、担う人も変わります。政治にとって大事なことは、強い意志を持続するための、「法律と組織」を整備することです。
その意味では、公明党の提案で復興庁を設置し、復興基本法、復興特区法、福島復興再生特別措置法などの法律を作ってきたことは復興の大きな原動力となりました。今年の通常国会でも、復興庁の設置期限を10年間延長させる改正法などが成立しています。
福島の再生をはじめ、復興には長い時間がかかります。法律と組織をしっかりと作り、これらに、どう魂を入れていくのかが重要です・・・

人事異動と面談

2020年10月15日   岡本全勝

10月6日の日経新聞夕刊Bizワザは「人事面談 意思を明確に」が載っていました。
・・・「異動はまず面談から始まる」。企業人事に詳しい神戸松蔭女子学院大学の楠木新教授はこう話す。多くの企業では仕事の目標を設定する面談の際に、キャリアの希望や可能な勤務地を尋ねる。そこで「遠慮して明確な希望を伝えない人が多いが、どこでどんな仕事をしたいのか、きちんと話すべきだ」と強調する・・・

・・・実際に異動の打診を受けたときはどのように受け止めればいいか。人材紹介を手掛けるクライス・アンド・カンパニー(東京・港)の丸山貴宏社長は「異動は社内転職として前向きに捉えるべきだ」と話す。特に若手は「身分を保障されて新しい仕事や能力を身につけられる。こんなにありがたい機会はない」と指摘する。
打診された異動が希望通りではない場合も少なくないだろう。怒りや不安が募るだろうが、楠木教授は「退社などすぐに極端なことを考えるべきではない」と話す。自分の適性を他人の方が分かっていることも多いためだ。
まず、上司に異動の理由や自分に期待していることなど、聞きたいことは全て確認しよう。それでも納得できない場合は「異動先の仕事は嫌だ」など否定的な言葉は使わずに「今の職場でこう活躍したい」などと伝える。もちろん家庭の事情など、どうしても受け入れられなければはっきり話そう・・・

どうしても意に沿わない異動ならば、転職も選択肢の一つだ。クライス・アンド・カンパニーの丸山社長は転職の前提として「現在とは違うやりたい仕事があること。もしくは、異動前の職務を今後も続けたいという強い思いがあること」を挙げる。企業が中途人材を評価するのは能力と仕事への思いだ。
まずは世の中で自分の能力や思いがどう評価されるか。他社の知り合いや人材会社に話を聞くなど、情報を集めるのが先決だ・・・

 産業医の奥田弘美さんは、次のようにおっしゃっています。
・・・仕事がどうしても面白くなければ、お金を稼ぐためと割り切るといい。自営業の人以外は組織の中で働く。若い人を中心に仕事を生きがいや自己実現の手段と考える人は多い。ただ、常に思い通りの仕事を任せてもらえることは絶対にない・・・

勤め人には、とても役に立つ教えです。原文をお読み下さい。
人事担当者の悩みの一つは、社員の自己評価と周囲の評価がズレることです。本人は自分のことを1.5倍に評価し、他人を3割減(0.7倍)に評価すると言われています。拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』第10講。

政策の階層

2020年10月14日   岡本全勝

9月25日の朝日新聞、佐伯啓思先生の「この7年8カ月の意味」の続きになります。「安倍政権の位置づけ、激変した世界の中で。その2」で、次の文章を引用しました。
・・・最高の地位にある政治家は、また行政のトップでもある。最高の行政官は、国民の要求に応えなければならず、また国家の直面する目前の問題に対して現実に対処しなければならない。まさに身を粉にして「仕事」をしなければならない。「仕事」をすれば支持率はあがる。だが、政治家とは、世界状況を読み、その中で国家の長期的な方向を示すべき存在でもある。「旗」をたて、その旗のもとに結集すべく人々を説得する「指揮官」でもある・・・

各人が精一杯努力してそれぞれに成果が出ているのに、全体としてはうまく行っていない。小は職場や企業から、大は日本の政治と社会まで、しばしば見られる現象です。理由の一つは、求められる成果に対して、違ったことに頑張っているからです。極端な例は、企画案(粗々な原案でよいから)を求められているときに、文章のてにをはを直すことに時間をかけている場合です。暗闇で鍵を落としたのに、そこから離れた街灯の下で鍵を探すとか・・。

では、日本政治ではどう考えたらよいか。私は、次のように考えています。
その1 評価の基準
日本の政治は、いま何をしなければならないか。たくさんある課題から、どれを優先するか。これは難しい判断です。しかし、簡単に言えば、「10年後から振り返って、あの時(2020年)は正しいことをした」と評価できるかどうかです。「毎年、いろいろ頑張ったのに、なぜこんなことになったのだろう」では失敗です。
10年後から振り返るとしても、経済、財政、社会保障、安全などいろんな分野で測ることができます。これまた簡単に言えば、「国力で世界何位にいるか、国民一人あたり国内総生産で世界何位か」が、最もわかりやすいです。もちろん、経済力だけで、国民の幸せを測ることはできません。しかし、平成以来の日本社会停滞の大きな原因は、経済の停滞です。このまま放置すると、中国、アメリカなどに引き離され、韓国や台湾の後塵を拝するでしょう。

その2 政策の階層
では、総理をはじめ責任者は、何をすればよいのか。それを考える際に必要なことが、政策の階層です。内閣も課長も、さまざまな課題に取り組みます。その際に、優先順位をつけることが必要なのです。
それも、一列に並べることではありません。内閣で言えば、取り組まなければならない課題や政策を「総理が取り組むこと」「大臣が取り組むこと」「局長が取り組むこと」の3層に分けることです。
すると、政策の体系・ピラミッドができます。総理がするべきこと、大臣が取り組むべきこと、局長に任せること。これを判断するのが、総理と総理を補佐する人たちの一番重要な任務です。
「明るい公務員講座」56ページでは、ゾウを捕るのかネズミを捕るのかのたとえで話しました。「講座」では一人の職員の任務として話しましたが、組織の場合は課題をゾウとネズミに分類し、誰にどれを分担させるかです。

マックス・ウェーバーが、心情倫理(信条倫理)と責任倫理を分けました。政治にしろ企業にしろ、「頑張りました」だけではだめで、「これだけの結果を出しました」が判断基準です。この項続く

官庁の人材不足

2020年10月14日   岡本全勝

10月9日の日経新聞「デジタル行政怠慢の20年」「手つかずの人材育成」から。

・・・新型コロナの第1波が日本を襲った4月上旬、民間から厚生労働省のクラスター対策班に加わった人がいる。ビッグデータ分析を手掛けるALBERT(アルベルト)の7人のデータサイエンティストたちだ。
通信会社の位置情報データなどを使い、人同士の接触頻度を分析するのが主な任務。臨時の国家公務員として班に合流した。

だが目にしたのは、データを分析する環境も人材もそろっていない驚きの光景だ。北海道大学や東北大学から参加した研究者や学生らは、各自が持ち込んだパソコンやモバイルルーターでインターネットに接続していた。作業体制の整備が最初の仕事だった。
「致命的な問題だった」と参加した中村一翔氏(33)が振り返るのが司令塔の不在。集めたデータをどう分析し、コロナ対応に生かすのか。データサイエンティストや研究者と意思疎通を図り、全体方針を決める存在が政府にいなかった・・・