年別アーカイブ:2020年

日本美術を見せる

2020年1月24日   岡本全勝

以前から疑問に思っているのですが。
日本美術を専門にした大きな美術館がありません。山種美術館三井記念美術館泉屋博古館など、小ぶりで良い民間の美術館は、いくつもありますが。

国立には、東京国立博物館、国立西洋美術館、国立近代美術館はあるのです。国立日本美術館はないのです。たぶん、こういうことだと思います。
文物については、博物ということで、国立博物館でも集めた。美術は、西欧の美術を紹介するために、力を入れた。他方で、日本美術は、国家が集めなくても、身の回りにたくさんある。ということではなかったのでしょうか。

欧米でも、美術館、博物館は、よその国から集めてきた珍しいものを展示したようですから。美術品は、購入者や支援者がないと、政策は成り立ちません。スポンサーです。王侯貴族やお金持ちです。
で、日本でも、藩主や財閥、お寺が持っていました。いくつかの美術館はその系統です。維持できなかったものは売られて、散逸あるいは美術館に収まりました。

なぜ、このようなことを指摘するのか。海外からの訪問者に、「日本美術を見るならここに行きなさい」と紹介する場所に悩むからです。
日本美術をたくさん所蔵している美術館は、東京国立博物館、京都国立博物館、九州国立博物館のようです。
東京国立博物館は、それなりに日本の文物を紹介するには良いのですが、分野が広すぎます。ハニワから刀までありますからね。近年開かれる特別展も良い企画があるのですが、焦点を何に絞っているのか、わかりにくくなっています。日本人を相手に、珍しいものを見せるのか。その際に、外国人はどう扱っているのかです。

外国人、あるいは日本人でも若い人に、日本美術を見せる施設や工夫が欲しいです。実物はいくつもの美術館に分散保管されているとして。系統だって見せる施設。そしてこの時代ですから、インターネットで多くのものを見ることができる仕組みです。
日本美術だけでなく、伝統芸能の世界も、外国人観光客に近寄りやすくなっているのでしょうか。

聖徳太子の絵姿

2020年1月23日   岡本全勝

日経新聞朝刊文化欄の「美の十選」、ある主題で専門家が選んだ古今東西の美術品を10点見せてくれます。「へえ、こんな視点があるのだ」と、楽しみにしています。
今回は、八條忠基・綺陽装束研究所主宰の「装いがまとう意」です。

1月22日は「聖徳太子及び二王子像(唐本御影)」でした。皆さんご存じの、聖徳太子の絵です。読んでもらうとわかりますが、聖徳太子の姿とは、全く違うようです。
太子が被っている冠が黒い「漆紗冠」になったのは、682年。手に持つ笏は719年からです。聖徳太子が亡くなったのは622年です!
また、平安時代後期に、「唐の人が描いた」といわれていたとのこと。
ええ加減なものですね。まあ、そもそも太子は、生前には「聖徳太子」とは呼ばれていなかったようですし。

聖徳太子が生まれたとされる橘寺は、わが家の近くでした。飛鳥川をはさんだ隣の集落です。お寺の庭で、遊びました。

建物の「センター」という言葉

2020年1月23日   岡本全勝

アルファベット日本語」の続きにもなります。
施設につけられる「センター」という名称は、紛らわしいと思いませんか。
文化センター、ショッピングセンター、保健センター、コミュニティセンター、研修センター・・・あなたの周囲にも、たくさんあるでしょう。

国民生活センター、シルバー人材センター、子育て支援センター、年金相談センター、ビジターセンター、血液センター、医療センター、研究センター、就職情報センター、このような公共的なものの他に、会社の名称や支店などにつけている場合があります。
建築住宅センター、××会社サービスセンター、コールセンター、××フラワーセンター、××メモリアルセンター、××チケットセンター、

英語のcenterからきたのでしょう。辞書を見ると、「多くのものごとが集まること。集中」「ある地域の特定の業務を集中させた場所、施設、部門を示す語」とあります。
かつては、このカタカナ語は目新しく、格好良く見えたのでしょう。しかし、このように多用されると、「普通名詞」に近くなっています。そして、陳腐に感じます。
何か良い日本語への切り替えは、できないでしょうか。多くの場合は、「会館」「所」「窓口」などで置き換えができそうです。

若い人は「センター」と聞くと、大学入試のセンター試験か、AKBの最前列中央(センターポジション)に立つ女性を思い浮かべるのでは(私はAKBを知らないのですが)。

アルファベット日本語、新聞表記

2020年1月22日   岡本全勝

日本語の中のアルファベット」の続きにもなります。
1月20日に行われた総理大臣の施政方針演説、ここにもアルファベット語がいくつも使われています(原文は縦書きです。それで、数字が漢数字になっています)。

AI、IT、Wi‐Fi環境、IoT、5G、ポスト5G、Society 5.0、Beyondゼロ、CSF、ASF、下請Gメン、DV、EU、TPP、ASEAN、RCEP、G20、G7、CO2、JR常磐線。
産業や技術の分野を中心に、社会が進んでいることを実感します。

さて、施政方針演説は、衆議院と参議院の本会議で、総理が読み上げられます。では、速記者はどのように、文字に起こすのか? 耳で聞いた言葉を文字に起こすなら、これらの言葉の多くはカタカナになるでしょう(まだ確認していません)。

新聞社は、翌日の紙面で全文を掲載しています。その際に、どのように表記したか。
朝日新聞は、原文のままのようです。

日経新聞は、JR常磐線、AI、Wi‐Fi環境、Beyondゼロなどは、そのままです。他方、Society 5.0は、ソサイエティー5.0と、カタカナにしています。豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)のように日本語を補っている場合もあります。

読売新聞は、AI(人工知能)、TPP(環太平洋経済連携協定)、豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)、IT(情報技術)、(次世代通信規格の)5G 、DV(配偶者や恋人からの暴力)のように、多くのアルファベット語に日本語や日本語による補足をつけています。ただし、Wi‐Fi(ワイファイ)、Society(ソサイエティー)5.0、Beyond(ビヨンド)ゼロのように、読み仮名を振っただけの言葉もあります。

新聞社も、悩んでいるでしょうね。中学生や高校生でも分かる文章を書くことが、新聞記事の原則です。CSF、ASF、IoT、5G、Society 5.0、DV、RCEP、Beyondゼロといった言葉で意味が分かる人は多くはないでしょう。あなたは、子供に説明できますか。

イギリスが偉大だったのは例外の時代

2020年1月22日   岡本全勝

1月18日の朝日新聞オピニオン欄。ケンブリッジ大学名誉教授、デイビッド・レイノルズさんのインタビュー「英国、解体の足音」から

・・・英国の歴史を500年単位で見ると、偉大な大国だった18、19世紀は例外です。小さな島国で、資源も限られ、衰退しているのがむしろ定番でした。海洋が重視される時代になり、海軍と商業船団の発達のおかげで世界中の資源にアクセスし、奴隷の力も借り、英国は大英帝国に成長したのです。蓄えた富で産業革命を起こし、19世紀半ばに産業経済大国となりました。「英国は偉大だ」という意識は、こうした経緯と結びついています。

ただ、この国のサイズでその力をずっと維持できるわけではありません。その後の英国の展開は、没落というより、定位置に戻っただけ。にもかかわらず、「世界での地位を失った」かのような感情が残りました。それを利用して「英国を再び偉大な国に」との選挙スローガンを打ち出したのがサッチャー首相です。彼女が率いる保守党にとって、偉大さの喪失は見過ごせなかったのです・・・