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持永堯民・元自治事務次官

2019年7月9日   岡本全勝

今日は、持永堯民・元自治事務次官のお別れ会に行ってきました。
私が自治省に入って、県庁での2年間の勤務・勉強を終えて戻ったところが、財政局財政課でした。最初の課長は津田正さん(後の自治事務次官)で、次が持永さんでした。私とは、20歳違いです。
20歳代半ば、駆け出しの事務官には、課長はとても遠い存在でしたが、お二人とも、かわいがってくださいました。行儀を知らない元気な若者を心配して、指導してくださったのだと思います。

財政課では、翌年度の全自治体の地方財政の見通しをつくります。毎年、歳出総額に対して、歳入が不足します。それをどのように埋めるか、大蔵省と協議して対策をつくるのが、課長の仕事です。
課長がメモを元に口頭でおっしゃる項目を、私が文章にします。「課長、それだと、ここがうまくいきません」と問題点を指摘すると、「君が考えろ」とおっしゃいました。知恵を絞って案を考え、了解してくださったことが、よい思い出です。よくまあ、20歳上の課長に反論していたものです。それを、許してくださいました。

放課後の飲み会に課長補佐と一緒に誘ってくださって、ご自身の経験談、特に苦労話をしてくださいました。
その後、私は28歳で県の課長、39歳で県の部長になりましたが、その際に先輩の経験談がどれだけ役に立ったか。困ったときに、「先輩の苦労に比べたら、私の苦労なんか大したことないなあ」と、自分に言い聞かせることができました。旧内務省の伝統でしょう。
次官を退官されてからも、折に触れて、話を聞いてくださいました。話を聞いていただくだけで、安心できるのです。

私が官僚としてここまでこれたのも、持永課長をはじめとする先輩たちの指導のおかげです。たぶん、空の上から「全勝くん、まだまだだなあ」と笑っておられるでしょう。
感謝とともに、ご冥福をお祈りします。

周囲がつくる「あの人の能力」

2019年7月8日   岡本全勝

菊池寛の「形」という短編小説をご存じですか。短い話で、インターネットで読むことができます。新聞で紹介されていたので、読み直しました。

戦国時代、ある槍の達人は、その陣羽織と兜を見ただけで、敵が恐れをなすほどでした。
彼は、初陣に出る若武者から頼まれて、陣羽織と兜を貸します。借りた陣羽織と兜を身につけた若武者は、大きな手柄を立てます。それを眺めて、自分の形だけですらこれほどの力をもっていることに、彼は大きい誇りを感じます。
ところが、彼自身はいつもと違う形をしていたため、敵が恐れずにかかってきます。そして、命を落としてしまいます。

仕事ができる人(Aさんとします)は、ある程度に達すると、これと同じことが起きます。他の人(Bさん)が言っても、周囲はその意見を尊重しないのに、Aさんが同じことを言うと、みんなが納得するのです。もちろん、とんでもない愚策なら、評判を落としますが。部下も交渉相手も、「Aさんが言うならよいだろう」と、収まります。これが続くと、ますますAさんの能力は高く評価されます。雪だるまのようにです。

リーダーシップにも、この要素があります。本人の能力が優れていることは必須ですが、周りがそれを評価するかどうかにもよります。部下と周囲の人が、その人の指導者ぶりを評価することが、リーダーシップです。この人について行こうと思うかどうかです。「私がリーダーだ」と叫んでも、部下がついてこないようでは、リーダーシップは発揮できません。リーダーシップは、フォロワーシップにもよるのです。
すると、良い部下を持つこと、良い部下を育てることが、リーダーシップの要点です。

小野善生著『フォロワーが語るリーダーシップ 認められるリーダーの研究 』(2016年、有斐閣)など、フォロワーからのリーダーシップ論もいくつも出版されています。

原稿は続くよどこまでも~、その2

2019年7月8日   岡本全勝

原稿は続くよどこまでも~」の続きです。もちろん、この表題は「線路は続くよ どこまでも~」のメロディーで読んでください。

執筆に際しては、具体事例と抽象的考察とを組み合わせることに、気を遣っています。具体事例だけだと主張にならず、抽象的主張だけだと理解してもらえません。
大学の先生の公共政策論や社会論は、その分析の鋭さに感心するのですが、私たちの実生活と離れている場合も多いです。日本社会、近代社会を分析し記述すると、抽象的にならざるを得ないのでしょうが。「その分析とご指摘はもっともですが、明日から私たちはどのようにしたらよいのでしょうか?」と質問したくなります。
私の論考は、復興や行政の現場で体験し考えたことなので、現場密着型です。しかし、そこから問題点と今後の方向性を提示しなければなりません。「公共を創る」と銘打ったのですから。

読み物として、読者に読んでもらえるような工夫も必要です。学術論文ではありません。
専門誌への連載という「制約」もあります。1回に載せる分量を、ほぼ同量にそろえる必要があります。きっちりと3ページとか4ページに収める必要はないのですが。今回は1ページ分で、次回は5ページ分になるのは、編集長が困ります。
で、まとめて送った原稿を、数回に分割してもらいます。ほぼ均等にならないときは、文章の構成を再考します。とはいえ、そんなにうまく行かないので、途中で切って「続く」と入れてもらいます。

頑張った甲斐あって、第1章3(1)と(2)をほぼ書き上げました。(3)を書いて、第1章を完成させます。書きためて余裕を持っておかないと、毎週締め切りに追われるようでは、精神衛生上よくありませんからね。