年別アーカイブ:2017年

慶應義塾大学、地方自治論第5回目

2017年5月12日   岡本全勝

今日は、慶応大学で地方自治論の講義。今日も大勢の学生たちが、熱心に話を聞いてくれました。教師にとって、学生たちの真剣なまなざしが、講義の際の一番のご褒美です。
前回の授業で、いくつも的を射た質問をもらっていたので、今日の授業もそれへの回答から始めました。良い質問は、うれしいですね。
私の授業は「通信教育」ではないので、学生たちの反応を確かめつつ、話を進めています。地方自治の知識だけなら、教科書を読めばすみます。生の授業の勝負は、本を読んだことを前提に、それにどれだけの「付加価値」をつけることができるかです。配付資料も、工夫をしています。
今日から、国と地方の役割分担に入りました。実態がどうなっているか、法律の定めはどうなっているか、ここまで進んだ分権の歴史、そしてあるべき姿は・・・。
ここは、自治論の主要テーマの一つです。

連休前に課した小レポートを、提出してもらいました。合計79人が提出してくれました。さて、これをすべて読まなければなりません。レポートは、書く学生も大変ですが、読む教師はもっと負担が大きいです。

不人気な政策を通す方法

2017年5月11日   岡本全勝

5月4日の日経新聞経済教室欄、新川敏光・京都大学教授の「シルバー民主主義を考える
不人気政策のリスク分散」から。
・・・政治家の「予想される反応」に基づく行動パターンはその政策がどれだけ人気があるかに左右される。有権者の間で人気の高い政策の場合、政治家は手柄を争う。社会保障・福祉の拡充は間違いなく人気政策なので、選挙時にはどの政党も争ってその拡充を訴える。人気取りのためには、負担には触れないほうがいい。
こうしてわが国では、1980年代に行財政改革が始まるまで、財政的維持可能性を考慮せずに給付拡充が繰り返された。73年に「福祉元年」が唱えられた当時を振り返れば、「老人問題」が注目されるようになり、高齢者への公的支援の拡充は全国民的支持を得ていたといえる。
再選を目指すうえで人気取り以上に重要なのが、不人気政策にコミット(関与)しないことだ。人は、受けた恩は3日で忘れても、足を踏まれた痛みは一生忘れないといわれる。政治家はまず有権者の足を踏まないように気をつけねばならない。社会保障給付の引き下げや資格要件の厳格化は代表的な不人気政策であり、非難を受けやすいため、政治家は関与を嫌う。

しかしどうしてもそうした政策に関わらねばならないとしたら、政治家は様々な戦略を用いて非難を回避しようとするだろう。まず不人気政策を再定義することが考えられる。例えば人気のある政策で支持を取り付けておいて、その政策により不人気政策を正当化する。80年代に行財政改革の旗の下で、老人医療費無料化の廃止、健康保険被保険者本人の自己負担導入、基礎年金導入、拠出給付関係の見直しなどが実現した。
次に官僚や審議会などを前面に押し出して、政治家の存在を目立たないようにすること、すなわち政治家の可視性を低下させることが考えられる。政治家が批判の矢面に立たないようにするのである。
段階的な政策遂行は、政策効果の可視性を低下させる効果を持つ。最終的な効果が非常に不人気なものでも、それが明らかになったときには、もはや非難すべき相手が誰だか分からなくなっているか、既に政治の舞台から退場しているといったことになる。
さらにスケープゴート(いけにえ)戦略がある。手柄争いの結果、制度に欠陥が生じても責任を受益者に押し付けて非難する。高齢者バッシングや専業主婦バッシングにはそうした傾向がみられる・・・

原文をお読みください。

明るい公務員講座・中級編23

2017年5月10日   岡本全勝

『地方行政』連載「明るい公務員講座・中級編」の第23回「職場管理の知識(1)組織のリスク」が発行されました。今回からは、趣を変えて、あまり教えてもらえない職場管理の知識を書きます。

第1回は、組織のリスクへの対応です。法令違反は、私が言うまでもなく、してはいけないことです。それに、公務員は一般人より高い倫理が求められています。しかし、近年のはやり言葉に、「法令遵守」があります。民間では、偽装を繰り返していた企業。役所では、きちんとした仕事をしていなくて批判を受けた社会保険庁・・・。
あなたが法令違反をしてはいけないだけでなく、部下職員がそのようなことをしないように気を配る必要があります。長年その職場で習慣になっていた「ずる」を是正するのは、難しいですよね。しかし、ばれたら、あなたは申し開きはできません。もう一つ最近の言葉に「内部通報」があります。いわゆる「たれこみ」です。隠し事は、必ずれると思ってください。

今回の内容は、次の通り。
知らなかったでは済まされない、法令遵守、甘えは許されません、公務員倫理、公益通報制度、不当要求。

企業の社会責任、青柳さんのインタビュー

2017年5月10日   岡本全勝

4月30日の河北新報「トモノミクス」に、青柳光昌さんのインタビューが載っています。
・・・東日本大震災で芽生えた企業の復興CSR(企業の社会的責任)は、熊本地震でどう生かされたのか。日本財団の職員として、二つの大災害で企業と被災地の橋渡し役を務めた社会的投資推進財団(東京)の青柳光昌代表理事に聞いた・・・
・・・初動は東日本大震災に比べ、格段に早かった。災害に対する企業の準備や構えのレベルは上がっている。水や食料、生活必需品を被災者に届けることに議論の余地はない。災害支援はCSRの柱になっている。
問題はその次の復旧、復興期の段階。企業が本業を通し、支援を続けられるかどうかが問われている・・・

なぜ日本国憲法は改正しなくても済むのか

2017年5月9日   岡本全勝

5月2日の朝日新聞オピニオン欄「憲法を考える、70年変わらない意味」、ケネス・盛・マッケルウェイン東大准教授の発言「少ない分量、詳細は個別立法」から。
・・・国際的に比較して、日本国憲法の目立った特徴は、全体の文章が短いことです。英訳の単語数は4998語で、最も長いインドは14万6千語、平均は2万1千語。日本よりも短いのはアイスランド、モナコなど5カ国だけです。
もう一つの特徴は「長寿」です。70年間一度も改正されていない日本の憲法は、現行憲法としては世界一です。2位はデンマークの63年です。
長期間、日本の憲法が改正されなかったのは、憲法9条をめぐって国論を二分した議論が続いてきたような政治の状況だけでなく、憲法そのものの構造的な理由があったと考えています・・・

・・・まず、分量が少ない日本国憲法は、多くの国では憲法本体に書かれている選挙や地方自治など、統治に関する項目が「法律で定める」とされている場合が多い。ノルウェーのように憲法で選挙区まで定めている国と、公職選挙法を60回近く変えても、憲法を変える必要のない日本とでは憲法改正についての条件が異なるのは当然でしょう。
一方で、人権については、制定当時の国際水準からみると、多くの記述がなされており、先進的でした。そのため、例えば男女同権についての新たな規定を憲法に追加するといった切実な必要性がありませんでした。
短いですが、「人権」には手厚く、「統治」は法律に任せていることが、改正の必要がなかった大きな理由だと考えられます・・・

原文をお読みください。
マッケルウェインさんは、5月3日の読売新聞「憲法施行70年」にも、「9条の現状 とても深刻」を寄稿しておられます。