加藤秀俊先生、違った視点・独自の視点でものを見る

加藤秀俊先生が、『加藤秀俊社会学選集』(2016年、人文書院)を出版されました。
私は学生の頃、加藤先生や梅棹忠夫先生を代表とする京都大学人文研の先生方の本、松田道雄、清水幾太郎、山本七平さんなどの世相や日本人論を読みふけりました(「私の読んだ本 残す・残さない」)。大学の授業や学術書では教えてもらえない「日本社会」が、そこにはありました。その鋭いものの見方に、感銘を受けました(私も若かったですし。「私の読んだ本」)。
加藤先生は、デイヴィッド・リースマン『孤独な群衆』を翻訳され、中公新書の末尾(奥付の次のページ)に付いている「刊行のことば」は、加藤先生が32歳の時に書かれた文章だそうです。

1月9日の読売新聞文化欄に、小林佑基記者が「世の中そう変わらない」として、加藤先生のインタビューを載せています。
・・・そこから浮かび上がってきたのは、この50年間の「変らなさ」だ。交通や通信分野では大きく変化したものの、日常生活や人間関係など日本人の基本的な生活文化は、そう変わっていないと指摘・・・変わらぬ理由として挙げるのが日本語の存在だ。共通言語が生活習慣に影響し、文化を固有のものにしているというのだ・・・
・・・他方、様々な母語があるがゆえに異文化との衝突は避けられないとも・・・だからこそ、西洋を絶対視していたかつてのアカデミズムには批判的だ。「我々の頃は、カントやヘーゲルを読むことが教養と言われていたが、生まれた土壌が違うのだから役に立たなかった」。それよりも人生訓などが詰まった落語を聞いたり、夏目漱石や司馬遼太郎の作品を読んだ方が、よほど教養になるというのが持論だ・・・

86歳になられた加藤先生のお写真も載っています。