経済成長、早さと社会の変化

1月10日に、高齢化に要する時間が、国や地域によって異なることを書きました。「高齢化社会、社会の変化と意識の変化」。

1月4日の日経新聞経済教室に、猪木武徳・大阪大学名誉教授が「大転換に備えよ。競争と再分配、豊かさの鍵」を書いておられます。そこに、各国の経済成長の「早さ」が図示されています。産業革命後の経済成長で、1人あたりGDPの倍増に要した年数です。
イギリス58年(18後半~19世紀前半)、アメリカ47年(19世紀半ば)、日本34年(19後半~20世紀前半)、韓国11年(20世紀後半)、中国10年(20世紀後半)です。
先生は、次のように書いておられます。
・・・一般に後発国の経済成長は「後発性の利益」によりかなり高いスピードを示す。高度経済成長の軌道に乗る時期が遅いほど成長は早く、その終わりが訪れるのもまた早い・・・
高度成長により日本は豊かになりました。また、その早さで自信を持ちました。しかし、アジア各国が同様の道を進んだことで、日本だけの特殊なことではないとがわかりました。

そして、ここで指摘したいのは、「かかった時間の長さ」です。急速な高度成長は、多くの日本人に、田舎を出て都会へ出て行くこと、両親とは違う道を歩むことを求めました。結果として豊かになったのですが、故郷や家族と離れて初めての土地で初めての仕事に就くことには、大きな不安があったことでしょう。そして、地域社会もまた大きく変貌しました。豊かさの光の影には、多くの不安や悲しみもあったのです。この変化が徐々に起きたものならば、「ご近所の××さんところも・・・」とか「お父さんやおじさんも・・・」と近くに見本があってその不安は和らげられたでしょう。
急速な変化、それは経済成長であれ高齢化であれ、個人と社会に大きな影響、それも負の影響をも与えます。その変化をどのように「吸収」するか。変化の大きさとともに、変化の早さも、政治や社会が考えなければならない大きな要素です。