イギリス、EU離脱国民投票の意味

朝日新聞7月14日オピニオン欄「英国、欧州、そして世界」、オックスフォード大学教授のティモシー・ガートン・アッシュさんの発言から。
・・・この国がいかに分断されているか。(国民投票の)6月23日に、分断を覆い隠していたカーテンが一気に引きはがされたのです。スコットランドとイングランド、富裕層と貧困層、北部と南部、高学歴が残留で、低学歴が離脱・・・。私の息子たちは30代ですが、父親世代が我々の未来を奪ったと怒っています。この分裂と怒りを克服するために、この先2、3年はかかるでしょう・・・

「そもそも英国は、欧州なのでしょうか」という問いに対して。
・・・最古の世界地図といわれるプトレマイオス図の中世版(15世紀)以来、英国は常に欧州の一部として描かれています。日本がアジアに居続けているように。
問題は地理的、歴史的、文化的に帰属するかではなくて、特定の政治目標を共有するかどうか、ということなのです。アジアとの決定的な違いはそこにある。アジアには一つの政治目標はなく、中国によるアジア観、米国によるアジア観などが混在しています。
欧州は、世界で最も政治経済的な統合が進んだ地域であり、統合が欧州全体の政治目標です。だから問題は、英国が帰属するかどうか、ではなくて、統合の動きが前進するか、後退するかです。第2次大戦後以来の欧州統合の動きは、いままさに後退しはじめたといえます。それは世界にとって極めて深刻な状況です・・・