1914年と2014年の類似

第一次世界大戦が始まった1914年から、今年で100年です。第一次世界大戦を振り返る企画がされるなあと思っていたら、実世界が1914年に似てきたという指摘が出ています。例えば、日経新聞経済教室4月16日、中西寛京大教授「第1次大戦前、不吉な相似」。わかりやすい解説が、東京財団に載っていました「欧州とアジアにとっての1914年と2014年」。
それらが指摘する要点、そして現在にもある程度共通する点は、次のようなものです。
・当時、国際貿易が拡大し、相互依存が高まったのでもう戦争は起こらないと識者は考えていたのに、貿易量の多い英独の間に戦争が起きたこと。
→現在も国際化が進展し相互依存が進んでいるが、それだけでは、戦争を防ぐことはできないのではないか。
・関係国の誰もが、そんな大きな戦争を望まなかったのに、世界大戦になってしまったこと。
→意図せざる戦争は、起きる可能性がある。
・当時のドイツと同様に、中国が覇権国に挑戦する経済力をつけつつあること。
→近年、アメリカの覇権が揺るぎだしている。
・イギリスの覇権が揺るぎだし、次なる覇権国になるアメリカに、まだその用意がなかったこと。
→現在は、経済大国中国の国際社会での役割と意図が、不明確である。
・現在のロシアと中国は、西欧各国と違う政治体制・政治哲学にあること。
→西欧先進国の国内政治と国際政治は21世紀に入っているが、他方で19世紀の状態にいる国がある。
→各国は今もなお、国際関係(世界の常識や評判、理想)よりも、国内事情(政権基盤、力学、世論)で行動する。
・クリミアでのロシアの振る舞いが、力による国境変更を実績にしてしまったこと。
→東ヨーロッパだけでなく、アジアも不安定さを増している。

さて、この不安定を、人知によって制御できるか。2008年の世界金融危機は、各国の協調によってある程度押さえ込むことに成功し、1929年の世界恐慌の再来にはなりませんでした。世界金融危機と国際政治(国家間紛争)の危機は、ともに統一権力(世界政府)がないことによって生じ、増大し、制御が難しいです。国際金融や国際経済の場合は、カネという「共通言語」と経済という「共通利害」があるので、国際紛争より話が簡単だとも言えます。
それに比べ、国際政治では、表(公式の場)での議論や発言と、裏(密室)でのやりとりに大きな違いがある場合があり、また裏での発言も本音とは別の場合もあります。それが「政治的」であるゆえんです。