有能な上司、間違いの指摘は鋭い。けれど・・

かつて、このような上司を見たことがあります。
部下が案を持っていくと、A課長(としておきましょう)は、的確に間違いを指摘します。鋭い指摘なので、その能力に部下は感心します。それが何回か繰り返されます。そのたびに、的確な指摘があって、ますますその上司の能力に感心します。ところが、部下は何か釈然としないのです。毎回、良い指摘をされるのですが、その起案は、前に進まないのです。
部下が別の上司(Bさん)に相談したところ、Bさんは一言で表現しました。「Aさんは、自分ではペンを持たないだろう」と。そうなのです、A課長は部下の間違いは指摘してくれるのですが、修正案を出してはくれないのです。「自分で考えろ」ということなのでしょう。でも、何回も差し戻しが続くと、時間は経つし、部下はだんだんやる気をなくします。
もう一つの例を出しましょう。Cさんも、部下が案を持ち込むと、鋭い指摘をしてくれます。ただし、Cさんは代案を出したり、進むべき方向を示してくれます。それも正しい導きなので、部下は「さすがCさんだ」と、感心します。仕事も進みます。
ところが、横から見ていると、Cさんの部署は、必ずしも成果を上げていないのです。なぜか。それは、Cさんが部下が持ち込んだ案には、すばらしい指摘や助言をしてくれるのですが、その部署が何をすべきかを示さないからなのです。
毎年同じような業務をしている部署なら、仕事のテーマは部下に任せて、前年通りにしておれば成果が上がるでしょう。しかし、多くの部署で、課題はどんどん変わっていきます。でも、部下は、前年通りの仕事しか上げてきません。新しい課題を把握して、その課題にどう取り組むか。それを、部下に示さないと、去年通りの仕事は良くできたけれど、新しい課題は放置されたままになります。それでは、その部署としては、期待に応えていないことになります。
前年通りなら、部下に任せておけばすみます。しかし、新しい課題を見つけ、それへの取り組みを指示するのが、上司の務めです。
時々思い出しては、自分がAさんやCさんにならないように、自戒しています。