ニクソンとキッシンジャー外交、2

現実主義というと、現実にとらわれ、現状を所与のものと考える、と思ってしまいます。すると、何も変えることができません。
そうではなく、理想は直ちには実現できないが、各国の利害が錯綜するなかで、少しずつ理想に近づける・自国の利益を進めるというのが、ここに言う現実主義です。そこでは、現実に流されるのではなく、何ができるかを想像し、策を打っていきます。その反対は、想像力がなく、現実に流され、その場限りの取り繕いをする「その場主義」でしょうか(反省)。
彼らの現実主義は、想像力を持って、かつ現実的な対策を打つという、能動的なものです。理想主義と同様に、理想は持っています。違いは、できることから行うのか、できないことを言うのかの違いでしょう。
政治を、可能性の空間と考えるか、決められたこと・運命と考えるかの違いです。「政治とは可能性の技術である」とは、ドイツの大宰相ビスマルクの言葉です。そのためには、想像力の大きさと、打つ手の確実さが必要です。これは、大政治(ハイ・ポリティクス)に限らず、どの世界も同じでしょう。
さて、本書は、新書版の分量で、ソ連との戦略兵器削減条約、米中和解、ベトナムからの撤退という大きな外交戦略を分析しています。その結果、わかりやすいですが、生々しさまでは書けていないようです。
ところで、二人三脚で進められたニクソン・キッシンジャー外交ですが、2人はかならずしも仲が良かったわけではありません。これについては、カール・バーンスタイン、ボブ・ウッドワード著『最後の日々―続・大統領の陰謀』を紹介しました(2013年3月20日の記事)。