改革を望まないドイツ国民。良いときには改革はできない

10月20日の日経新聞「日曜に考える。メルケル首相3選、欧州の安定は」、ドイツの新聞ツァイト紙の共同発行人、ヨーゼフ・ヨッフェさんの発言から。
「選挙結果の評価について」
・・現職首相の陣営の得票率が前回より8ポイントも伸びたのは歴史的だ・・議会はかつてなく同質になる。首相会派から左派党まで4政党が左寄りの社会民主主義だ。
強く面倒見のいい国を求める合意が社会に芽ばえ、競争重視で小さな政府や低税率を追うリベラル主義の理念の選択肢が大きく埋没した。現状維持を求め、急激な変化や10年前のような構造改革を望まない国民感情がある・・
「メルケル首相の人気について」
・・まさに有権者が望む存在だからだ。冷静と安定を絵に描いたような女性で冒険も方向転換もしない。ムティー(お母ちゃん)と呼ばれるような人柄だ・・
「ドイツに改革は不要なのか」
・・2020年代を見据えた改革は当然必要だ。生産性上昇が停滞し、輸出に頼る中国のようにいびつな経済構造で、補助金頼みの雇用も多すぎるからだ。債務水準も高すぎる。いまやドイツの大学は世界50位が最高。イノベーションの能力も高くない・・
・・だが次の政権が行動を起こすのは疑わしい。現状維持こそ素晴らしいのだ。ドイツは幸運児。失業率は低く、太平でよく運営されている。良いときに変えようとは思わないのが問題だ。危機意識からしか変化は生まれない・・