海外メディアの日本報道

(海外メディアの日本報道)
朝日新聞8月20日オピニオン欄、キャロル・グラック教授(コロンビア大学)へのインタビューから。
「参院選でも大勝した安倍政権について、米メディアでも右傾化を懸念する意見が見受けられますが」という問に対して。
・・実は、うんざりしているんです。過去数カ月間の日本に関する報道で、ナショナリズムや軍国主義といった言葉が実に多く使われています。世論調査の結果を考えれば、そんな心配はないことがわかるのに。
日本に関する海外メディアの報道は極端で、しかも浅い。日本がすぐに軍国主義になることはないし、憲法9条への支持はまだ強い。なのにメディアは安易にラベルを貼る。橋下徹大阪市長の慰安婦発言も好例です。まるでウイルスのように、あの種の発言は広まる。日本人の多くは発言に賛同しているわけではないのに、米国人はそれを知らない。
以前から感じているのですが、日本はいつも極端な言葉で形容されます。経済問題でもそうです。1980年代には「世界を支配する」、90年代には逆に「日本は終わった」と報じられ、その後、日本はほとんど無視された。安倍首相が再登板してアベノミクスを言い立てると、おお、欧州ができなかったことをした、再び日本に注目しよう―。私は歴史家だから確信していますが、世の中は決して、極端から極端へは変化しない。歴史は、短距離走者ではないのです・・

「前回政権時、安倍首相は『戦後レジームからの脱却』を掲げていましたが、これはどう思いますか」に対して。
・・同種のことを言い始めたのも、別に安倍首相が最初ではありません。戦争が終わって70年近く経つというのに、いまだに「戦後」という言葉を使っているのは日本だけ、という点は実に興味深いですが。
日本が戦後という言葉を使い続けた理由は、それだけ、この体制が安定したものだったからでしょう。諸外国では、このように使われる言葉を見つけられません。その理由のひとつは米国です。米国が、日本の記憶とシステムを『冷凍』していたから。そして日本にとっては、それが快適だった。おかげで天皇は象徴となり、民主的で平和な国家が続いている、と・・
この項、続く。