年別アーカイブ:2011年

全国の避難者数調査

2011年6月15日   岡本全勝

今日、全国の避難者の数を公表しました。全国の地方自治体の協力を得て、どの市町村に、どのような施設(体育館、旅館、仮設住宅など)に避難しておられるのかを調べたのです。これは、初めてのことです。実は、これが結構大変なのです。
まず、どの市町村に避難しておられるか。原発事故関連市町村からの避難者については、福島県が調べています。しかし、そのほかの避難者を含めた全体像は、正確なところはわかりませんでした。発災以来、警察の発表による「避難所の避難者数」に頼っていたのですが、警察も各市町村からもらった資料を集計しています。市町村ごとの把握対象が違うので、必ずしも統一がとれていなかったのです。しかし、混乱したときに、それは仕方のないことです。
今回調べたら、北海道から沖縄まですべての都道府県、約1,000の市区町村に避難しておられました。全国の市区町村の数が1,750ですから、いかに広範囲に広がっておられるかわかります。3県の外に避難している人は、約5万人もおられます。

次に、どのような施設に避難しておられるか。私たちは避難者と聞くと、体育館などに毛布をひいて避難している人を想像します。しかし、旅館に避難した人や、公営住宅、仮設住宅に入った人もおられます。住宅に入られた方は、自宅から出ているという意味では避難者ですが、ひとまず落ち着かれました。
ところが、これも各市町村ごとに把握の仕方が違うので、そう簡単ではありません。例えば、在宅避難者(自宅にいるが食事を避難所にもらいに来ている人など)を把握している団体と、そうでない団体があります。調査結果によると、いわゆる避難所におられる人は、約4万人です。

これまでの災害では、多くの方が元の市町村に避難されていたので、このような問題は生じませんでした。今回の災害は大きく、このような調査が必要になりました。
職員たちが、その必要性に気がついてくれました。すなわち、避難者は全国のどこにおられるか。これは、政府が把握するしかありません。もう一つは、各市町村ごとのとらえ方がまちまちで、仮設住宅に入っている人も含まれている場合があることに気がついたのです。この人たちを避難者の数字に含めると、避難所がいつ無くなるかが見えないのです。
全国の市町村に協力をいただかなければならないので、調査票はなるべく簡略化しました

自信をつけたアジア各国

2011年6月14日   岡本全勝

速い速度で変化する社会や経済を追いかけるために、なるべくそれらの本を読むようにしているのですが、時間が取れなくて、買ったまま積ん読も多いです。そしてそれらの本は、1~2年も経てば、時代遅れになるものも多いです(反省)。最近は新幹線での出張が増えたので、少し時間が取れます。もっとも、疲れて寝ていることも多いですがね(これまた反省)。
NHKスペシャル取材班『NHKスペシャル 灼熱アジア』(2011年、講談社)は、私の問題関心に合う本でした。2010年の8月と11月に放送された番組を、本にしたものです。タイの経済発展と買収される日本企業、中東でのエネルギーをめぐる闘い、インドネシア市場の争奪戦、中国の環境市場を巡る日韓の闘いを取り上げています。
1997年の通貨危機、2008年のリーマンショックで大きな打撃を受けながら、復活できない先進国をよそ目に、大きな成長を続けるアジア。そのアジアの勃興に対し、減速する日本企業がテーマです。
そこにあるのは、後発国の追い上げを見ながら、なお自信を持っていた先進国日本は、過去のものになったということです。日本に追いついただけでなく、ある部分では追い抜いた韓国と中国、彼らの自信。まだ一人当たりGDPは少ないながらも、先進国へのコンプレックスを払拭し自信をつけたアジア各国の姿です。

日本だけがなぜ、欧米にキャッチアップできたか。かつて日本人は、日本の優秀さや後発国のメリットを指摘しました。しかしそれは、一面しか見ていませんでした。私は、一人当たりGDPの各国の軌跡を示すグラフで説明する際に、「日本がキャッチアップに成功したのは、日本の優秀性によるが、日本だけがこのメリットを享受したのは、アジア各国が経済発展に目覚めなかったからだ」と解説しています。韓国は北朝鮮との対峙、中国は共産党の政治優先、インドシナ半島はベトナム戦争など、政治を優先し経済開発を後回しにしたのです。彼らが政治的安定を得て、経済開発に舵を切った時、日本の一人勝ちは終わりました。
手前味噌に言うと、日本が「政治より経済が重要だ。独自路線は必要ない、欧米にまずは追いつけばよい」というお手本を見せたのです。
幸いなことに、その時点では日本は世界のトップグループに仲間入りしていました。
私は、ヨーロッパは歴史的背景とともに、同程度の豊かさなので共同体ができるが、アジアはいつのことになるやらと、考えていました。しかし、いずれ近い将来に、アジア各国が同じような豊かさになるでしょう。その時に、日本は何で優位性を保つか。また、対等協力の関係ができたことを、どう活かすかが、次の課題です。

進むがれきの片付け

2011年6月13日   岡本全勝

被災地では、大量のがれきが発生し、その片付けが大きな課題になっています。100年分のゴミが発生した町もあります。市町村によって進捗状況は違いますが、どんどん片付けが進んでいます。
職員が、片付いている状況がわかる写真を、掲載してくれました。岩手県釜石市と大槌町の同じ場所で、3月下旬と最近の状態を比較したものです。車で移動中に撮ったものです。すなわち、たくさん撮影したものから、同じ場所を選び出したのです。ご苦労様でした、Nくん。
「遅れている」と指摘を受けているのが、仮設住宅建設、がれきの処理、義援金などの配分です。関係府省と調整し、対策を打ちました。

被災地現地での会議

2011年6月12日   岡本全勝

11日土曜日は、岩手県釜石市で、被災市町村との意見交換会でした。復旧、復興に際し、どのような点が問題になるのか、国として何をすればよいのか。直接、意見を聞こうという趣旨です。現行制度のどこが使い勝手が悪いのか、東京にいたのではわかりません。また、市町村も、なかなか言い出しにくいでしょう。特区をつくるなどの構想もでていますが、何を変える必要があるのか。それを探るためです。
今回は、総理も出席されました。来週は、宮城県内で2か所、岩手県内でもう2か所開催する予定です。

12日日曜日は、仙台市で、孤独死(孤立死)を防ぐための有識者会議を開きました。仮設住宅での孤独死は、阪神淡路大震災の時も、大きな問題になりました。今回の被災地は高齢者、単身生活者が多いのです。これまでの経験を生かし、どうしたら防ぐことができるかを検討し、関係者の皆さんに理解してもらうためです。
復旧・復興は、道路の補修や家の再建といったハードだけでなく、このようなソフトも重要です。しかし、人間関係は難しいです。若者の引きこもり対策をやっているNPOなどが、活躍しています。
3月11日の発災以来、3か月が経ちました。仮設住宅の建設も進み、復旧や復興に重点が移りつつあります。

これらの会議は、1週間に満たない短期間で、準備をしました。また、各界の方に出席していただきます。そして、場所は東京ではありません。これだけの会議を設営してくれた職員、県庁、市町村の方に感謝します。
私は、金曜日の夜に盛岡に入り、土曜は釜石まで往復。岩手県は広いので、かなり距離があります。夜は盛岡泊まり。そして、日曜朝に仙台に移動しました。今週もよく働きました。金曜日定例の資料更新をご覧下さい。
振り返ると、この仕事について以来、先週と先々週の日曜日に、お休みを頂きました。二日だけですか。まだまだ、たくさん仕事があるということです。

政府の組織設計

2011年6月9日   岡本全勝

職場の管理職として、どうしたら楽しく仕事ができて良い成果を出すことができるか、長年考えてきました。『明るい係長講座』を書いたりもしました。自治大学校長として、あるいは講演に呼んでいただいて、しゃべったりもしました。早く、一冊の本にまとめなければと、思っているのですが。
職場管理や職員養成とともに、職場の組織をどう設計するかも、私の関心の一つです。霞ヶ関では、各省の内部組織をどう設計するか、各省をどう編成するか、そして内閣官房や内閣府をどう設計するか。これは大きな課題です。2001年に省庁改革を行い、現在の形になっています。その時もいろいろ勉強しました(『省庁改革の現場から』)。
今回の被災者生活支援本部事務局を立ち上げ、運用する際にも、考えることが多かったです。
民間企業と比べて、あるいは地方自治体と比べても、国家行政機構の組織設計、特に内閣の周りは、改善の余地があると考えています。まず、経営企画室(部)に当たる組織がありません。民間企業では、考えられないでしょう。次に何を売るかを考えることが、最も重要なのですから。地方自治体なら、企画部か首長直轄の政策立案機関があります。
また、人事と組織の戦略を考える人事部や組織設計部がありません。各省にはあるのですが。そしてそのような組織設計を考えている人や組織がいないのです。これらについては、別途、書きましょう。

本屋には経営学や、組織論の本がたくさん並んでいます。それらは民間企業向けで、行政機構の設計について書いた本は、見あたりません。それは仕方ないとしても、なかなか参考になる本が見つかりませんね。

(職位から見た組織論・出世とともに何が必要となるか)
その論点とは外れますが、稲葉祐之ほか『キャリアで語る経営組織―個人の論理と組織の論理』(2010年、有斐閣)は、管理職論としてわかりやすく、有用でした。目次を見てもらうとわかるように、職員が入社して、異動し出世し、社長になる過程ごとに、組織論のテーマを解説してあります。中堅の公務員が読んでも、役に立つと思います。平職員と管理職、さらにはトップでは、見方が変わり、必要な知識も違うのです。平職員の時には上司を批判していたのに、いざ自分が課長になったら、「そうだったのか」と納得することがあります。
ある程度の歳になり、ポストに就くと、リーダーシップ論や管理者論を、本を読んだり経験で知っておられるでしょう。この本を読むと、それらが体系的に整理できます。