年別アーカイブ:2010年

国際社会の統一

2010年10月3日   岡本全勝

ジェームズ・メイヨール著『世界政治-進歩と限界』(2009年、勁草書房)を、先日読み終えました。著者は、イギリス・ケンブリッジ大学教授で国際政治学者です。国際関係論では、アメリカが圧倒的な地位を占めていますが、それに対し、英国学派の代表的学者だそうです。
彼は、変化より継続を重視し、国際社会は冷戦の終結などによって修正はされてはいるが、根本的な変化は起こっていないことを主張します。そして、国際社会の民主化は、主張され試みられた割には、進んでいないことも。革命主義や理想主義より、現実主義(リアリスト)です。
ソリダリスト的要求(連帯主義的要求。主権国家を超えて、世界全体が立憲主義的に統一されるべき)に対して、伝統的なプルラリスト(多元主義的)価値観を支持します。主権国家の存在を、重視するのです。もちろん、手放しではなく、道徳的であるべきという条件をつけてです。近年行われた、他国への人道的介入を踏まえての議論です。
確かに、世界秩序が統一され、国際規範が「押しつけられる」ようになると、もし間違いや弊害が生じた場合に、抵抗するすべがありません。金融、経済、情報などが国際化し、どんどん主権国家を侵食しています。私は、日本では戦国時代の群雄割拠が統一されたように、また西欧でも領邦国家が次第に統一されたように、国際社会も徐々に統一されるのだと考えていました。もちろん、その道筋は簡単ではありませんが。
しかし、経済などの統一の動きと、世界秩序や国際規範の統一とは、分けて考えなければならないということでしょう。世界の安全と繁栄のために、そして全世界の人たちの幸せのために、より立憲的に国際社会を統一する努力を重ねるべきですが、その設計には慎重な配慮が必要です。

国際交流の成功事例・JETプログラム

2010年10月2日   岡本全勝

10月1日朝日新聞オピニオン欄、ウィリアム・ブリアー元アメリカ国務省日本部長の発言「日本を広める第3の波」から。
・・グローバル化がますます進む今日の日本に欠かせない国際交流事業がある。JETプログラムという、米国人青年らによる小中学、高校での英語補助学習などを通して、日本の若者に国際社会の窓を開けるユニークかつ大胆な実験だ。最近、このプログラムが政府の事業仕分けの見直しの対象にされているようだが、JETこそ日本政府が最も成功し、どの国もつくり得なかった対市民外交の一つであると強調したい。
JETを通じて米国、その他の先進英語圏などから参加した多くの若者たちは、日本を好きになり、日本語を話し、日本人や文化を理解してきた。この若者たちは米欧世界における日本研究の「第3の波」をもたらしている、と私は言いたい。
米国における第1波は、19世紀後半にあった。米国人美術収集家たちが日本美術商と協力し合い、ボストン美術館やワシントンのフーリア美術館に優れた日本コレクションを収蔵した。日本の美と文化は米国人を魅了し、最初の日本研究を打ち立てた。
第2波は、悲劇的な第2次大戦の結果として出てきた。戦時中、米政府は主に日本人捕虜の尋問のため、何千人もの日本語話者を育てた。多くは戦後、米国に戻り、新たな興味を抱いて日本研究に取り組んだ・・
1987年に始まったJETは第3の波を引き起こし、新たな世代を生んでいる。JETを卒業した米国青年たちは、以前とは全く異なった日本および日本人観を持って帰国する。多くは日本に好感を持ち、米国内でそれを伝える重要な役割を果たしている・・
米国のフルブライト基金や英国のローズ奨学金もあるが、日本はJETこそ政府の国際教育事業の最大の成功事例と誇るべきである・・
JETプログラムについては、こちらをご覧下さい。

日本の競争相手は欧米から中韓へ

2010年10月2日   岡本全勝

10月1日朝日新聞オピニオン欄「円高、怖くない」から。
野口悠紀雄さんは、名目為替レートは1995年以来の円高だが、日米の物価上昇率の違いを調整した実質円ドルレートでは円安であることを指摘し、
・・今でも実質レートで見れば、適正水準に比べかなりの円安です。この程度の円高で悲鳴を上げているようでは、日本の輸出産業の競争力はかなり落ちているといえます。すでに「輸出立国」という経済モデルが崩壊しているのです。輸出立国モデルが崩れた後に日本が目指すべきモデルは何か。それはITや先端的金融など生産性の高いサービス産業を中核とした経済だと考えます。
米国では1995年から2009年の間に、製造業の雇用者数が約540万人減少した一方で、サービス産業は約1,820万人も増えました。特に、「金融」「ビジネスサービス」「教育・健康」など付加価値の高いサービス産業3部門での雇用の増加は1,057万人にも上りました。人材が製造業からサービス産業にシフトしたわけです・・
政府がやるべきことは、競争力を失った輸出産業の生き残りを為替介入などで助けることではない。円高によって工場の海外移転が進み、国内雇用が失われるのは不可避です・・むしろ、ITや金融分野で有能な人材を育成するための支援が必要です・・

加護野忠男さんの発言から
・・企業の元気を奪っているさまざまな規制を取り除いてほしい。真っ先に手をつけるべきなのは、企業経営を監視するコーポレートガバナンス(企業統治)の制度です・・二つ目は、労働時間や残業についての規制緩和です・・
私の主張は少数意見かもしれませんが、そこまで言うのは、競争相手が変わったからです。90年代までは欧米企業がライバルで、日本は「働き過ぎだ」と批判されました。欧米は労働時間短縮に熱心だったので、日本は規制を強化しても戦えました。
いまや競争相手は中国や韓国と言っていい。中韓の企業は経営判断が速いし、政府も多方面から企業を支えています。現場の働きようも尋常ではありません。欧米と競争した時代の規制を維持していたら、日本は勝てません・・
詳しくは、原文をお読み下さい。

2010.10.02

2010年10月2日   岡本全勝

今日は、日本大学大学院の講義第3回目。だんだん調子が出てきました。一つには、講義が具体の内容に入ってきたことです。私がこれまで考えてきたことや、いま問題意識を持っていることをお話しするので、どんどん調子が出ます。省庁改革、分権改革、三位一体の改革、経済財政諮問会議など、いくつもの改革に参加し、見せてもらったことに感謝しなければなりません。もちろん、総理大臣秘書官という経験も。
もう一つは、院生さんたちも、私の授業に慣れてきて、反応や発言がどんどんかみ合ってきたからです。

自治大卒業式

2010年10月1日   岡本全勝

今日は、自治大学校で卒業式がありました。3課程合同です。
税務専門課程・税務会計コースは、通信研修が3か月、宿泊研修が3か月です。このコースは簿記会計を中心として、試験に合格すると、税理士試験の科目が一部免除されます。よって、大変厳しいコースです。
税務専門課程・徴収事務コース(8月19日記事参照)は、地方税徴収の幹部を養成するコースです。6週間の宿泊研修です。先にも書きましたが、ロールプレイング(9月7日の記事)など、実践的な研修をしています。
第1部第2部特別課程は、通信研修4か月、宿泊研修3週間です。長期間に家庭を空けることが難しい女性を主な対象としています(9月8日の記事)。
今日の卒業生は、合計260人余り。全員それぞれに、卒業証書をお渡ししたいのですが、これだけの人数では時間がかかるので断念。
皆さん、充実したお顔でした。涙ウルウルの方も、何人か。講堂を出てからも、立ち去りがたいようでした。最高水準の難しい講義や、頭と口を使う演習など。それぞれに大変だとおっしゃいます。当然です。それが、皆さんの力になるのですから。明日からは、地方行政の第一線で活躍してもらいます。がんばれ、卒業生。