カテゴリー別アーカイブ: ワシントン特派員

ワシントン特派員「稲熊君」です。稲熊君は、私の元部下です。今、ワシントン大使館に勤めています。随時載せますので、乞うご期待。
ワシントン特派員報告終了
このHPを豊かにしてくれていた、ワシントン特派員が3年間の勤めを終えて、帰国しました。よって、特派員便りも終了します。ありがとうございました、稲熊君。(2005年4月17日)

レーガン元大統領の国葬

6月5日に93歳で死去したドナルド・レーガン元米国大統領の国葬が、11日11時30分から、私の職場からも程近いワシントン大聖堂で行われました。ゴルバチョフ、サッチャーなどという懐かしい名前と共に、日本からは中曽根元首相が国葬に参列しました。大統領経験者の国葬としては、1973年のジョンソン元大統領のとき以来、31年ぶりです。
11日は、連邦政府機関も証券取引所も休みだったのですが、残念ながら私の職場は平常どおり。当日は、主要道路の封鎖、いつもよりずっと多い警官&パトカーの数、上空を飛ぶヘリコプターなどが、「厳戒態勢」であることを感じさせていました。
日本でレーガン元大統領の死がどのように扱われたのかは知りませんが、米国においては、レーガン元大統領の死後、氏が残した業績を検証する追悼番組、新聞の特集記事等が、「これでもかっ~」というくらい相次ぎました。毎日の新聞の2~3面以上を必ずレーガン元大統領の記事が占め、毎日のニュースでもその大部分が氏にまつわるニュースに充てられていました。
もちろん、その論調は、冷戦の終結を導いたこと、「レーガノミックス」による成果等レーガン元大統領に対する賞賛一色。「二十世紀で最も偉大な大統領に列せられる」「ベスト3に入る大統領」など、最上級の賛辞が贈られていました。
レーガン元大統領の遺体を収めた棺は、9日にカリフォルニア州からワシントンに運ばれ、連邦議会の議事堂に安置されており、11日の国葬当日まで夜を徹して一般弔問が行われました。弔問に訪れた人は全米各地から数十万人、弔問に並び始めて弔問が終わるまで6,7時間かかるとのことでした。このことからも、元大統領の死に対する米国民の感情がどれほどのものであったか、理解してもらえるのではないかと思います。
今や、レーガン元大統領のスローガンであった「小さな政府」や「規制緩和」は、日本を含む各国の政策の主流になっています。しかしながら、、私が大学で経済を学んだ1990年前後には、その経済政策は、「ラッファー曲線」という変な経済理論を基に財政赤字を急増させるとともに、貧富の差を増大させるなど(少なくとも私が大学にいたころには)どちらかといえば否定的に捉えられていたような気がします。また、レーガン時代の「強いアメリカ」を彷彿させるブッシュ現大統領の外交政策も、支持の声がある一方、多くの批判を受けているのも事実です。
11日は朝から、「3大ネットワーク」すべてが国葬の生中継していました。ミーハ-な私は、「なぜ故レーガン元大統領はこんなに人気があるんだろうか」「やはり亡くなったときにその人の悪口を言うことはないよね」などということを考えつつ、小雨の中、オフィスから少しだけ外に出て、同じように最後の見送りをする多くのアメリカ人とともに、マサチューセッツ通りを通り抜ける故レーガン元大統領を乗せた車列を眺めたのでした。

大統領予備選 ~その1~

2004年はアメリカ大統領選挙の年。共和党の大統領候補者はブッシュ現大統領で決まりですが、民主党は1月から各州で自らの大統領候補者選びの作業(予備選)を進めています(7月末に開催される民主党の全国大会で正式な大統領候補が決定されます。)。
民主党の大統領候補者選びには、プライマリー(予備選挙)とコーカス(党員集会)という2つの方法があります。
まずプライマリーですが、これは政党登録者による「選挙」であり、通常朝から夕方まで各州の投票所で投票が行われます(第一の段階としては郡よりも小さな地区レベルで行われます。)。
他方、「コーカス」は政党登録者による「集会」です。同集会については、①集会参加者が自分の支持する候補者ごとのグループに分かれる、②分かれたグループの人数に基づき、さらに上位の予備選へ各グループが派遣できる代議員数を決定する(各地区の予備選の後、各郡における予備選が行われ、最後に州の予備選が行われます)といった形で進められるということ以上の情報を持ち合わせていないのですが。
寒い冬の平日夕方(6時半ごろから)に党員が集会場に集まり、わいわいがやがやいいながら自分の党の大統領候補を決めていくというのはなかなかおもしろい制度じゃないかと思ったりします。
ちなみに、今年のアイオワ州(地区レベル)のコーカスへの参加者数は約122,000人。1992年の予備選では約30,000人、2000年の予備選では61,000人だったといわれていることから、今年の大統領選への興味は高いといえるのではないでしょうか。
1月19日のアイオワ州での予備選(地区レベルのコーカス)により開始された民主党の大統領候補者選びは、10以上の州で一斉に予備選が開催された3月2日の「スーパーチューズデー」の結果、ケリー上院議員が民主党の大統領候補者として指名を受けることが確実になり、ほぼ終結しました。
昨年末の段階における各種世論調査では三番手以降と目されていたケリー上院議員ですが、最初の予備選の地オハイオ州でトップとなったことにより「モーメンタム」をつけ、その後の予備選でも勝ちつづけました。
インターネットを駆使した選挙戦術(資金集めを含む)、イラク戦争反対、ブッシュ減税撤廃の主張等により昨年末の世論調査ではトップを走っていたディーン前バーモント州知事、労働組合に強い支持基盤を持ちディーン氏の一番のライバルと目されていたゲッパード下院議員は、早々と有力候補のリストから消えていきました。
米国では世論調査機関等が発達しており、選挙の事前予想が積極的に行われておりますが、まあどこの地でも選挙の予想というものは当てにならないということなのでしょう。
ケリー上院議員が民主党の大統領候補者に事実上決まったことに伴い、今年秋の大統領本選に係る世論調査(ケリー対ブッシュ)が盛んに行われるようになってきました。
米紙USAトゥデー、ギャラップ社などが2月に行った世論調査結果によると、ブッシュ大統領とケリー上院議員の間で現在大統領選が行われた場合、ケリー氏に投票すると答えた人が55%でブッシュ大統領の43%を12ポイント上回っており、AP通信が4日発表した世論調査結果によると、米大統領選でケリー上院議員がブッシュ大統領と争った場合、大統領の支持率が46%、ケリー氏は45%となっています。

久しぶりワシントン特派員

鳳来町のお父さん、お待たせしました(すみません、町名を間違えていました。ワシントンから抗議が来ました)。優秀な息子さんから特派員報告が来ました。次のような挨拶付きです。
「遅くなりましたが、「まめ月記12月号」を送付いたします。12月に入り、ちょっとビッグな仕事が入り、本当にバタバタしておりました・・・。
ここで、「まめ月記来年の決意」なるものを述べさせていただければ、2004年に入りましたら、米大統領選挙等を詳細に報告する所存でございます。ご期待ください。それでは、皆さん、よい正月をお迎えください」ということです。期待しましょう。

ホリデーショッピング

本日(12月23日)米国商務省が発表した11月の米個人消費支出は、7兆8958億ドル、前年に比べて0.4%増とのこと。相変わらず米国の個人消費は好調なようです。
11月第4木曜日のサンクス・ギビング・デーの次の日(通称「ブラック・フライデー」)からクリスマスにかけては、米国消費者が最も買い物をする季節。特に日本の正月の初売りにも例えられるブラック・フライデーは、米国では1年で最も小売業の売上げが多い日といわれています。ブラック・フライデーにあわせ、店側は、事前の広告はもちろん、早朝(朝6時等)からの開店、様々な割引(早いもの勝ち、早朝割引等)をオッファーし、消費者もそれに応えます(笑)。
この雰囲気を味わってみようとブラック・フライデーの当日に近くの大型ショッピングモールに出かけてみましたが、その賑わいはものすごいものでした(報道に寄れば、米国小売最大手のウォルマートでは、今年のブラック・フライデー1日の打ち上げが15億2千万ドル、1日の売上げとしてはこれまでの最高を記録したとのこと)。いつもは、簡単に見つかる駐車スペースもなかなか見つからないくらいの混みようでした(通常大型ショッピングモールには何千台分もの駐車スペースが用意されております。)。日本でいえば、正月初売りやバーゲンの初日といったイメージに近いでしょうか。
それ以来、ほぼ毎週末に近くのショッピングモールをのぞきに行っているのですが、大きな買い物袋を持って歩き回る人の数に変化はないようです。購入しているのは主にクリスマスプレゼントとクリスマス関連商品(ツリー、オーナメント等)でしょうか。米国人のクリスマスにかける意気込みは本当に凄まじいものがあります。
ちなみに、ワシントンDCエリアにもティファニーなどの高級店が存在しており、12月21日(日)にリサーチのために訪れてみたところ、それはそれは大変な混みようで、ラッピングに並ぶ人の数は20人を下らないという状況でした。どこも同じですね。
それでは、我が家はこのホリデーショッピングシーズンに何を買ったかと言えば、特別なものは何も買っていません。なぜなら、クリスマス後にはもっと安くなることを知っているからです。もちろん、既に”いいもの”は売れてしまって残り物しかないかもしれませんが、残り物の中にある「福」を探す旅に出たいと考えています。ただし、このような考えが日本経済をいつまでも停滞させる原因なのかもしれません。  
(陰の声:美人の奥さんにティファニイでペンダントを買ってあげれば)

米国まめ日記10

カリフォルニア州知事選挙
 10月7日に行われたカリフォルニア州の知事リコール投票&知事選挙の結果、現職だったデービス知事(民主党)のリコールが成立するとともに、後任知事として映画俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が選出されました(ちなみに、今回の現職知事のリコールは、1921年にノースダコタ州で成立したのに続き史上2度目だとのこと)。
 今回の現職知事のリコール運動は、カリフォルニア州の電力危機、巨額の財政赤字等に対するデービス知事の「無策&愚策」に対する住民の不満が蓄積していた中、カリフォルニア州知事に色気を見せる共和党のダリル・カイサ下院議員により始められました。
 リコール運動の結果、約160万の署名が集まり、10月7日のリコール投票&知事選挙が設定されたのでした。
 カリフォルニア州では知事の前回の選挙の得票数の12%の署名を集めればリコールが成立するらしく、今回の場合、約90万の署名でリコールが成立することとなっていたそうです(日本に比べリコールの垣根は相当低い?)。
 今回の知事選挙には、8月9日の締切日までに135人(!)の立候補者が届け出ました。ある報道によれば、247人が届け出たが112人は書類不備で不適とされたとのこと。ちなみに、「3500ドル(約42万円)の保証金と65人の推薦があれば、立候補できる」とのこと(日本と比べ立候補の垣根は低い?)。
 その中には、シュワルツェネッガー氏、現職副知事のブスタマンテ氏(民主党)、マックリントック上院議員(共和党)などの有力候補者とともに、人気ポルノ誌『ハスラー』の創刊者ラリー・フリント氏(61)、「巨乳候補」のアンジェリンさん、ホームレスなども含まれていました。
 このまま選挙戦がスタートし、10月7日に投票が行われるのかと思っていたところ、この投票に対し、異議をとなえる訴訟が提起されました。
 「誤りの多いパンチカード方式では、ちゃんとした選挙ができない(2000年大統領選挙のように・・・)」と主張する「全米自由人権協会」が提起したもので、この主張を一審の連邦地裁は支持、一端は投票日が来年3月以降になるかと思いきや、連邦控訴裁がこれを覆し、予定通り10月7日に選挙が実施されることになったのでした(連邦控訴審判決が出たのは9月23日)。
 セクハラ・スキャンダル、政策の不明確さに対する批判等にもかかわらず、リコール選挙の結果、アーノルド・シュワルツェネッガー氏が次点の候補に100万票以上の大差をつけて知事に選出されました。立候補者締め切りの際には、「米国の民主主義も極限まで来てしまった」と報じるメディアもありました。
 しかし、私はこの結果を見ても、「アメリカ人ってほんとバカだなあ」とは思いませんでした。少なくとも私は、米国人は、単なる有名人だということでシュワルツェネッガー氏を選んだのではなく、「「既存の政党に任せていては何も変わらない」から、しがらみのないこの(有名)人にとりあえずやらせてみようか」と考えたのではないか、それはどっかの国の状況と同じだねと思ったのでした。
 ちなみに、知事選挙の後に公表されたニューズウィーク誌の世論調査結果によれば、「政治経験のない有名人が全国レベルで政治に関与することは国にとって悪いことだ」と考える人は56%に上るとのことです。