カテゴリー別アーカイブ: 2017年春学期・地方自治論Ⅰ

慶應義塾大学、地方自治論Ⅰ成績評価

今日も、朝から書斎にこもって、地方自治論試験の採点をしました。94人です。
第1問は、ほとんどの人が、よい答案を書いていました。地方自治の意味を理解してもらえれば、この授業の最低線は越えてもらえました。
第2問は、正しく書けていたのは、半数くらいでしょうか。国政における三権分立は、皆さん頭にたたき込まれているのでしょうが、憲法が定める地方自治によって、自治体にも分割されています。その中での水平的分立があります。地方議会は、国会の下部機関ではありません。また日本は単一国家であり、連邦制ではありませんから、地方自治体(地方政府)が中央政府と完全に対等になることはありません。
第3問は、それぞれの考え方を聞く問ですから、各人ごとに結論が違って当然です。ただし、議院内閣制と二元代表制の比較については、問の文章にも出てくるので、触れる必要があります。それらに触れず、町村総会について述べている答案がありました。また、制度の羅列で終わっていて、その得失を述べていない答案は、評価が低くなります。自分の考えを書くことは、慣れていないようですね。

せっかく正しい答えを書いていながら、余計なことに言及している答案がありました。これでは、分かっていないな、と思われます。
満点に近い、すなわちS評価の答案もいくつかありました。

慶應義塾大学、地方自治論Ⅰ試験

今日は、慶應大学に、地方自治論の試験の監督に行ってきました。
今回の試験は、記述式3問です。
第1問は、自治の基本を問う問題です。これは、ノートさえしっかり取っておれば、転記で済むものです。
第2問は、普通の教科書にはあまり出てこない、しかし日本国の政治制度を考える際には重要な論点です。私の授業を受けていたら、簡単に書けます。
第3問は、最近のニュースに絡めた問題です。これも授業で取り上げてありますから、それを基に書けます。もっとも、考えを述べなければならないので、頭を使います。
自筆のノート、私が授業で配ったレジュメと資料の持ち込みを許しました。暗記でなく、基本的なことを知っているか、学んだことを基に考えることを試しました。

ほとんどの学生の答案は、A4の答案用紙に、表裏びっしり書かれています。
これから、94人の答案を読んで採点します。これもまた、重労働です。
公共政策論のレポート採点は、68人のほぼ半分まで済ませました。

慶應義塾大学、地方自治論第14回目

今日は、慶應大学で地方自治論、第14回、最終回の講義でした。
これまでの授業のおさらいをしました。これまで配ったレジュメの総目次を配って、全体像を振り返るとともに、何が重要かをお話ししました。それが、期末試験の傾向と対策になります。

その後、アンケートを書いてもらいました。この授業で何を学んだかと、私の授業についての評価です。公共政策論と同じです。81人の学生が出席し、A4用紙にびっしりと書き込んでくれました。
「この授業で学んだこと」は、私の意図通りの反応が返ってきました。自治論については省略するとして、私の経験を踏まえた説明が理解されていました。
「ほかの授業では、理論ばかりを聞いていましたが、実態を合わせて聞く授業は初めてでした」「大学の授業では制度を習いますが、運用を聞くのは初めてです」「理論だけでなく現実を聞いて、身近に感じることができました」「政治の授業で、戦後政治を聞くことはありましたが、今を聞くのはなかったです」とも。
また、公務員の実態、面接の対策、社会人のマナーの話も、評判が良かったです。

「私の授業についての評価」は、次のようなものでした。
毎回、前回学生が出した質問に答えたことは「一方向でない授業で良かったです」という反応が多かったです。他方で、「毎回の質問への回答が長すぎます」「回答のいくつかは、先生のホームページに載せてはどうですか。時間の短縮になります」という意見もありました。
大型連休に課した小レポートについて、「講評してくださったのはありがたかったです。初めての経験です。どのように書けば良いかがわかりました」という意見。
「新聞を読むようになりました」という学生が結構いました。「岡本先生のホームページの解説を読んでニュースを読むと、さらによくわかりました」とも。
「レジュメが簡潔でわかりやすかったです」という意見と、反対に「レジュメが簡潔過ぎます」という意見もありました。これは、意図して簡潔にしてあります。隙間は、学生に書き取ってもらうためです。重要なことは、自分で書くことで覚えることができます。
「配られる資料が多くて整理するのが大変でした」「板書の図を使った説明がわかりやすかったです」という意見とともに、「板書をもう少し丁寧にしてください」という意見もありました。「話に脱線が多い」「ノートを取るのが難しかった」という意見もありました。
「朝の1限でしたが、起きて出席できました。それだけの価値がありました」と言ってくれる学生が数人いました。「遅刻してくる学生には腹が立ちましたが、彼は先生の話を聞いていないという損をしているので、まあ許します」という感想も(笑い)。

相反する反応があるので、全員に満足してもらうことは無理です。院生相手なら、本は読んでくることを前提に、内容も難しくしても大丈夫です。しかし学部生を相手にすると、一定の基礎知識と重要な点は教える必要があります。「次回の授業の準備のために、教科書の××ページを読んでくること」と義務づける方法もありますね。
もらった意見は、次回の参考にします。

水曜日(公共政策論)、金曜日(地方自治論)とも、14回ずつ休み無しで勤めることができました。これは、自分を褒めてやりたいですね。毎週、レジュメと配付資料を用意することは、結構負担でした。かつて使った資料を再利用できると思っていたのですが、駄目でした。ほぼすべてを、最初から作り直しました。
これまでの経験と、授業を進めていくうちに、話すポイントを絞るようにしました。若いときは、あれもこれも教えたいと思ったのですが、大量かつ多分野の詰め込みは、学生には頭に残らないでしょう。特に公務員にならない学生は、地方自治制度のすべてを知る必要はありません。自治の基本、現在の制度が唯一のものではないこと、時代の変化とともに課題も変わってくることを理解してもらえれば良いのだと、割り切りました。その代わり、重要な点やトッピックは、新聞記事などを配って、掘り下げて解説しました。

慶應義塾大学、地方自治論第13回目

今日は、慶應大学で地方自治論、第13回の講義でした。
地方公務員について、お話ししました。特別職と一般職の違い、その人数と分野別の人数などの基礎データを示しました。教育関係と福祉関係が多いことに、みんなびっくりしていました。
公務員特有の規制(労働基本権の制約など)とともに、採用、異動、昇進、人事評価の実態についても、お話ししました。教科書には書かれていないことです。実務家教員なのでお話しできる内容だと思います。特に、懲戒処分を受けたこと(管理不行き届きですが)の話は、経験者でないと話せないですよね(苦笑)。

学生諸君へ
次週は、いよいよ最終回、おさらいです。これまでに配ったレジュメと資料を持ってきてください。

慶應義塾大学、地方自治論第12回目

今日は、慶應大学で地方自治論、第12回の講義でした。
今日は、住民論、住民自治論です。法律の定めによる住民の権利義務の説明とともに、市役所に対する主体と客体の関係を説明しました。主体とは、「主権者」として、選挙やその他の手段を使って、自治体(役所)を統制することです。客体とは、行政サービスの客体となることです。

しかし、これらの説明は、自治体や市役所を「他人」として扱っています。自治であるのは、住民がともに地域をよくしようとすることです。
そこで、近年広がってきている「協働」という概念を説明しました。例えば、町内の道路脇の花壇の手入れです。市役所に要求して市の事業として花壇を手入れしてもらう。市役所は、業者に委託して花を植え替えたり水をまいてくれるでしょう。しかし、町内会が、自分たちの家の前の花壇の手入れを引き受けたら、市役所はその分、手を引くことができます。花の種代くらい補助してもよいでしょう。「私、要求する人。市役所、それに応える人」という発想は、市役所と住民を対立したもの、サービスの提供主体と客体としてしか見ていません。

協働には、もっと広い意味があります。自治会でありコミュニティ、地域自主組織、さらには各種の地域活動です。ママさんバレーボールも、スポーツ少年団も、祭りも、地域での住民のつながりを支えています。自治会という旧来型包括的なつながりから、機能別のつながりが増えてきています。
この対極が、無縁社会です。孤立、孤独死、さらには災害が起きた際に、地域のつながりの強さが見えます。ふだんは「面倒なこと」と思われる近所づきあいも、いざという時は強力な助けになります。
学生からの感想には、「身近なことでよくわかった」という記述が多かったです。

早いもので、これで12週が過ぎました。あと、実質2週間です。