コボルトその8

アナグマ商会あらわる
「あたちはちゅてきな精霊ちゃん、おほほ、おほほ、どですかぽん(ポン)」
 コボルトちゃんが巣穴の中でぽんぽんを撫でながら「ぽんぽん節」を歌っています。この歌は精霊に古くから伝わっている歌で、「どですかぽん」と歌うたびに「ポン」とおナカを叩いて拍子をとる歌です。
「おほほー、ちゃいきんはお供えモノもたっぷりあるし、チアワセでちゅ」
 その時、巣穴の外で、「ごめんくださ~い」と声がしました。
「なんでちょ。謝っていまちゅね」
とコボルトちゃんが巣穴から顔を出しますと、見慣れないドウブツがいます。
「おマエ、ナニモノでちゅか。何故アヤマっているのでちゅか」
「わたしは妖精やドウブツのみなさまに手広くご利用いただいておりますアナグマ商会のアナグマでございます。今日はコボルトさまが最近ご景気がいいと伺いまして、さらにご景気がよくなるすばらしい当社の金融商品のご紹介にあがりました」
と、アナグマは礼儀正しく挨拶しました。
「キンユウ商品? おいちいのかちら?」
 アナグマはにやりと笑いました。どうやら聞きしにまさるおバカさんの精霊のようですので、いいエモノだと思ったのです。
「えー、では、わたしどもの金融商品をご説明いたします。ひとつには預託事務を行っておりまして、わかりやすく説明いたしますと、わたしどもにお客さまが百円のおカネをお預けくださいましたら、一月で五パーセントの利率で運用いたしますので、つまり、百円が百五円になるわけでございます。毎月毎月五円が手に入るわけなのです」
「へー。・・・でも、あたちヒャクエン無いから関係ありまちぇんね」
「いえ、大丈夫でございます。わたしどもはご融資の方も承っております。利率は一月でわずか十五パーセントでございます。ですから、お客さまが一円の現金もお持ちでなくても、わたしどもの融資口座から百円をお借りいただいて、その百円をそのままお預けいただけばいいわけです。これが当商会のヒット商品「モトデナシー」でございます。「モト
デナシー」をご利用いただけますと、コボルトさまには毎月毎月五円が支払われます。一方融資の方は半年〆でございますから、半年経ってから毎月十五パーセントの複利分をお返しいただければいいだけなのです。いかがでございますか。今なら御新規さま大サービスセールで、来月分の五円が今月手に入るサービスも実施中ですよ」
とコトバ巧みに持ち掛けました。
「へー。・・・ゴエンってどんなモノなの?」
「こういうモノでございますよ。今契約いただいたらこの場で今月分を差し上げます」
 アナグマはカバンの中から五円玉を出してコボルトちゃんに見せます。
「おほほー、どんな味なのかちら」
 コボルトちゃんはアナグマの手にしていた五円玉をぱくりと口に入れ、舐めたりぼりぼりと噛んだりしていましたが、やがてバラバラになった五円玉を吐き出しました。
「なんでちゅか、これー。固くて食べられまちぇん。ちょれにニガ~い。こんなモノをもらっても何の得にもなりまちぇん。とっとと帰りなちゃ~い」
と、アナグマを追い返してしまいましたそうです。  (採集地:ホッホハンバー地方)