インフラ工事以外の復興支援を、どう認知してもらうか

今日は、石巻市に行ってきました。
まず、NPOのセーブ・ザ・チルドレンの活動を、見せてもらいました。この団体は、世界の子どもたちを支援することを任務としていますが、東日本大震災も対象にしています。石巻市もその一つです。子どもたちと遊んでいる現場を見るのかと思ったら、市内の子育て関係者の会議でした。子ども・子育て支援制度が新しくなり、これまでの保育園や幼稚園だけでなく、NPO等がやっていた子育て支援活動も国費支援の対象となります。それを地元のNPO関係者にも説明する会議です。内閣府からは西田君(去年まで復興庁で私の部下でした)が来て、熱弁をふるっていました。
幼稚園や保育所では漏れ落ちる子育て支援、子どもの相手を、NPOや個人が補ってくれています。これは全国共通ですが、被災地では特にその必要があるのです。しかし、国の制度に乗っていないので、誰がどこで何をしてくれているか、全体像は把握できません。
これまで、市役所の対象(業界)に入っていなかったこれらの団体に、どのように国の支援制度を周知するか。これが難題です。セーブ・ザ・チルドレンが、その役割を担ってくれているのです。資金の支援の前に、情報の支援が重要なのです。また、いずれ市外からの支援団体は、「撤退」します。地元の団体が自立することが、復興ですから。その過程の一つです。
次に、石巻市役所で、応援に入っている職員と意見交換をしました。他の自治体からの派遣職員は、100人を超えているのですが、この方々は今回は勘弁してもらって、そのほかの仕組みで行っている職員たちです。
一つは、企業からの派遣。もう一つは、ワークフォー東北で行っている職員。もう一つは、復興庁が採用して市町村に駐在している職員です。合わせて10人ほどいるのですが、なかなか情報交換する機会がありません。しばしば会う市長や副市長との挨拶はサッサと切り上げて、この職員たちと意見交換をしたのです。激励をかねて、仕事の内容や困っていることなどを聞いてきました。
ほとんどの方が、民間企業経験で来ています。役所の流儀は、とまどいます。「はんこが多い」「挨拶がない」とか。他の自治体経験がある人も、石巻市役所の流儀とは違います。志は高いのですが、それだけでは、市役所の組織内では仕事は進みません。
そのあと、積水ハウスの新採職員研修の現場を、見てきました。積水ハウスは、新採職員研修の場として、被災地でのボランティア活動を組み込んでいます。被災の現場を見て、オリエンテーションを受け、そして仮設住宅の清掃や側溝の泥出しなどの活動をします。
こう書けば簡単なようですが、被災者に迷惑になってはいけない、新採職員でもできる仕事でないといけない。現地での要望とのすりあわせ、宿泊や輸送の準備など、結構な準備も必要です。それを、NPOが仲介しているのです。「なるほどね」と納得し、感心しました。
会社の方から聞きましたが、職員研修に、大きな効果が上がっているとのことです。擦り傷くらいはありますが、事故はないとのこと。いろいろと苦労はあるようですが。
側溝掃除(この場所は、発災以来3年間掃除をしたことがなかったそうです)で、泥だらけになった職員たちを見て、「この後のビールが、おいしいやろうね」と言ったら、「研修ですから、禁酒です」とのこと。失礼しました。
報道では、復興というと、高台移転やかさ上げ工事などが取り上げられます。それに比べ、このような支援活動は、一つひとつが小さい、数字に表せない、写真に撮りにくいので、あまり報道されません。重要な取り組みなのですが。
このような、復旧工事とは違う取り組み、行政ではない支援活動を、どのように世間に知ってもらうか。そして今後の日本社会に根付かせるか。一つひとつは小さな活動ですが、社会を変える大きな流れになるでしょう。そして流れにしたいのです。私としては、長年課題としている「日本の行政の変化」の一つです。
参考、復興庁のNPOとの連携のページ活動事例企業による支援活動