危機で試される制度と組織

サミュエル・ハンチントン著『軍人と国家』(邦訳1979年、2008年新装版、原書房)の訳者まえがきで、市川良一氏が、つぎのようなJ・F・ケネディの言葉を紹介しています。
「平和な時代には、どんな制度でも間に合うであろう。しかし、危機に機能しうる制度のみが生き残る」。
ケネディ大統領がどの場所でこの発言をしたか、まだ調べていません。孫引きで、申し訳ありません。
この本は、政治と軍事(軍隊)との関係(政軍関係、シビル・ミリタリー・リレーションズ)について書かれたものです。戦前の日本政府と陸海軍が第二次世界大戦で、このテストに失敗しました(制度というより、組織ですが)。
しかし、私には、今回の原発事故での政府の原子力規制関係組織が、真っ先に浮かびました。事故を防ぐことができなかったということとともに、事故が起きた後の対応についてもです。もっとも、旧軍にあっては、廃止されるだけでなく憲法で禁止されました。原子力保安院については、機能を廃止できないので、原子力規制委員会とその下の規制庁になりました。

官僚の一人として、今回の失敗の原因を考えるとともに、ほかの組織(制度)で同様の失敗を起こさないようにしなければなりません。
そのものの例とは言えませんが、近いところでは、薬害エイズの防止に失敗したことで、厚生省薬務局が解体され、金融危機にうまく対処できなかったことで、大蔵省銀行局と証券局が金融庁に分離されました。BSE牛問題で、農林水産省の機構改革が行われ、内閣府に食品安全委員会ができました。