スーパーマーケットで考えるマイケル・サンデル

食品の安全を確保するため、食品中の放射性物質の基準が、4月1日から改められました。簡単に言うと、これまで1キログラム当たり500ベクレル以下であったものを、100ベクレル以下にと厳しくしました。すなわち、200ベクレルの魚は、売ってはいけなくなりました。
ところが、より高い安全を売り物にする商店にあっては、国の基準よりさらに厳しい基準で品揃えをしています。たとえば「我が店では、国の基準の半分である50ベクレル以下の商品しか扱いません」と宣伝するのです。
これは、より安心を求める消費者の求めに応じようとするものです。

排気ガスの少ない自動車や消費電力の少ないテレビが、消費者に喜ばれるのと同じです。これはよいことですよね。
ところが、農水産物の場合は、少し事情が異なります。水揚げされた80ベクレルの魚は、スーパーに引き取ってもらえなくなります。水産業としては困るのです。

さて、ここからがマイケル・サンデル教授の出番です。
あなたが、スーパーの店長だとします。あなたの弟が被災地で漁師をしていて、「兄貴、80ベクレルの魚を買ってくれ」と売り込んできたらどうしますか。もちろん、原発事故以前は、その魚を買い付けていました。
さらに、隣のライバル商店が、「国の基準より厳しい自主基準」を売りにしている場合は、どうですか。

(注)大手スーパーのイオンでは、主な食品を50ベクレルとしています。農林水産省では、業者が自主検査する場合も、国の基準に従うことを求めています(平成24年4月20日通知)。