カテゴリーアーカイブ:肝冷斎主人

コボルトその6

2015年11月25日   岡本全勝
大魔ジンの恐怖
 カントン伯ギョウザー領の人民は、服がキタナいし、貨幣を持っていないので貧乏だと思われています。また領主のことを「やる気ないしだらしないしヨメももらえないし、最低のやつだ」とボロクソ言います。そういう不満を持っているのに、革命を起こそうとはしません。外から見ると、そこではすごい恐怖政治が敷かれているカモ、と疑われます。
 実際には領主のカントン伯が税金をとるのも面倒くさいと思っているため税金がすごく安いので、クイモノなど生活必需品は豊富にありますし、領民はカントン伯をバカにしきってますからかなり自由なのです。倒すにも値しないと思って放っておいてあるだけなのです。でも、そんな状況は周りの地域のひとから見ると「ありえない」ことにしか思えま
せんので、「やる気がなくてしかも恐怖政治のカントン伯からマズしい領民を救わなければならぬ」という大義名分のもと、ステーキ公ロベルトが軍隊を進めてまいりました。
 カントン伯領は税金が安いのでほとんど軍隊がいません。ステーキ公の軍は破竹の進撃です。侵略をはじめてから三日で、カントン伯のお城を取り囲んでしまいました。
「ここまでは順調だったが、カントン伯ギョウザーは魔法使いともつながっているといわれるから、どんな秘密兵器を使ってくるかわからん。情報収集を怠ってはいかんぞ」とステーキ公は部下を引き締めます。
「まったくであります、さすがはわれらが大公爵さまよ」と部下たちは尊敬を表しました。その時、情報収集に出していた兵士が報告に戻ります。
「われらが偉大な大公爵さま、報告であります。村人をとっつかまえて尋問したところ、今年は豊作だったのに領主が税金を集める手間をメンドウくさがったため、カントン城内にはほとんど食糧は無いのではないか、との情報がありましてあります」という幸先のよい報告です。
 ステーキ公と周囲のモノたちはにやにやします。「よし、このまま取り囲んで兵糧攻めじゃ」
「ただ、ひとつだけ気になる情報がございますであります」
「なんじゃ。申してみよ」
「とるに足らぬ情報なのですが、お城から一匹のゲコが出てきまして、人目を避けるように森の中に入って行ったのでございます。普通ならただのゲコに注意することなどないのですが、何しろカントン城は別名「ゲコ城」といわれるほど魔法のゲコのうわさのあるところ、注意だけはしておこうと思いまして、その後をつけてみたのであります。ゲコは森の中の木のウロのところまで行きまして、外からゲコゲコと鳴きました。すると・・・」
「すると、どうしたのじゃ」
「ウロの中からヘンなオンナのコが現れ、ゲコのコトバを聞き、「わかりまちたー、ちょうがないから大魔ジンと大魔オニでも持っていきまちょう」と答えたのでございます」
 この報告を聞いてさすがのステーキ公の顔が青ざめました。
「な、なにいっ。大魔神じゃと・・・サラセンの魔法を用いるつもりか・・・」
 東方のサラセン国には「大魔神」というでかい魔神がいるといわれています。普段はランプや指輪の中でぐうたらしているらしいのですが、ご主人さまに呼び出されると現れて敵をやっつけてしまうという伝説が伝わってきています。「大魔鬼」の方はそのコブンか何かでしょう。恐ろしい魔界のモノどもを味方にしようとしているのです。
「カ、カントン伯め、わが軍にかなわぬと見て異教徒の魔神と手を組んだのか。・・・モ、モノドモ、われらには正しい神が引っ付いているのであるから臆するでないぞっ」とステーキ公はぶるぶる震えながら言いました。
「ま、まったくでございます、い、偉大なわれらが公爵さま~」と部下たちも賛同いたしましたが、顔が引きつっているのでした。
 カントン伯があろうことか異教徒の魔界のモノどもに援軍を頼んだらしいというウワサはステーキ軍の兵士たちの間にもすぐ広まりました。兵士らは恐怖の面持ちで、手入れもしてないのでボロボロになっているカントン城の城壁を見上げます。そう言うメで見てみると、剥げ落ちた石垣やクモの巣の張った城門もおどろおどろしい雰囲気です。
 夜になるとお城の中からは不気味なゲコの鳴き声が無数に聞こえてきますし、城門からときおり覗く城兵の顔とかはどろ~んとしていて覇気というかやる気がまったくなく、悪魔にタマシイを売ってしまっているようにさえ見えます。
 このような緊張した状態で数日が過ぎた夜のことです。
 遠くからゲコゲコと多数のゲコの不気味な声が聞こえてきました。ステーキ軍の兵士はびびりはじめます。ステーキ公も寝所から出てきまして、恐怖に引きつった顔でゲコゲコに聞き入ります。その間にも、ゲコゲコの声はどんどん近づいてくるのです。魔界の軍隊がついにやってきたのかも知れません。しかも、単なるゲコゲコの声ではなく、
 このコ刻んでどろどろ煮立てて食べまちょう(ゲコゲコゲー)
 このコ煮えたらおさじですくって食べまちょう(ゲコゲコゲー)
という背筋が凍りつくような恐ろしい歌になっているのです。
「す、すぐ近くまで来たぞ・・・」
 みんながすごい緊張したちょうどその時です。お城の城門には古ぼけた塔があるのですが、その上から、カントン側の見張りの兵士が、
「来たぞー、大魔ジンと大魔オニが来たぞ~、助かったぞ~」と叫ぶ声が聞こえました。
「うひゃあ、大魔神だ~」
 ステーキ軍はかなりパニック状態です。
 カントン城内では「おお~」「ハラ減った~」という歓呼の声が上がり、突然ギギギ~と城門が開かれ、松明を手にして多数のゲコや兵隊が出てきました。
「うわ~、大魔神と挟み撃ちだ~」「逃げろ~」
 ステーキ軍は城門から出てくる覇気の無い兵士はともかく多数のイボゲコたちに飛び掛かられて、「わ~ん、イボができちゃうよう」と士気を失ったのです。ステーキ公も「もはやこれまで。引け、引け~」と逃げ出しました。
 城の兵士たちはクモのコのように逃げて行くステーキ公の軍隊には目もくれず、ゲコの歌とともにやってきたひとりのオンナのコを出迎えました。オンナのコは、すごく巨大なニンジンとタマネギを担いだゲコたちを引き連れて城門をくぐりながら言いました。
「おチロのクイモノがなくなったというから、巨大魔法ニンジン(略称大魔ジン)と巨大魔法オニオン(略称大魔オニ)を持ってきてあげまちたー。やちゃいカレーライチュを作って食べて、みんなでカチコくなりまちょー」
 国に逃げ帰ったステーキ公は、恐怖でつるつるになってしまい、子々孫々カントン地方には手を出さないように厳命したということです。   (採集地:ステーキ地方)

 

コボルトその5

2015年11月25日   岡本全勝
コボルト暦
 みなさんは中世の一時期、お百姓さんたちの一部で使われていたコボルト暦をご存知ですか。中世のカレンダーはたいてい毎日、どういう農作業をすべき日かとか、どういう聖人をお祭りすべき日か、といったことが書き込まれていたのですが、内陸部のドリエンヌ地方で使われていた絵入りカレンダーには、特に、三日から四日ごとにコボルトちゃんの印が入っていまして、「コボルト暦」といわれているのです。
 このコボルトマークは何をあらわすものなのだろうか、ということに多くの学者が悩みまして、いくつかの学説が立てられました。
① 中世の精霊信仰に注目したドレスデン学派は、このマークをコボルト信仰で説明しようとしました。代表的な学説は、次のとおり。
「大地の精霊「コボルト」への信仰はドリエンヌ地方で最大であったのじゃ。当時のオロカな民衆たちはひと月の中に何日か、大地のチカラが最大限に発揮される日があると信じ込んでおり、その日に農作業をすると豊かな収穫が約束されると信じておって、これらのコボルトマークはその日を示すモノなのであーる。」
(ドレンスデン大学メッセル教授講演「中世のオロカなものどもについて」)
② 欧州大戦後には、中世のひとたちの考えていた宇宙像から説明しようという学派もありました。代表的な学説は次のとおり。
「当時のひとびとは天王星より外側の惑星を知りませんでした。代わりに、目に見えないナゾの惑星の存在を信じていまして、この星が三日から四日ごとに太陽または月の軌道と交差すると考えられていたのです。その日を示すのがコボルトマークです。コボルトさんは神出鬼没なので、この星のような目に見えないモノの代替物として使われたのです。」
(マイエルツ迷信文化研究所ドンマル副所長「中世のクダらん天文学的発見」)
③ このマークはコボルトちゃんとは違うコかも知れない、という逆転の発想からナゾを解こうとしたのがマルタンヌ文化庁の新鋭の学者たちです。代表的な学説は次のとおり。
「このマークは、コボルトちゃんと別種のケボルトちゃんのマークであり、転写の過程でケが落ちてしまったものにすぎない。中世のひとたちは、三日から四日ごとにヒゲを剃っていたので、このケボルトマークは「髭剃りをすべき日」を示している。」
(マルタンヌ文化庁編「ケボルト文明」)
 しかし、近年、ドリエンヌ地方の農家の土蔵から、秘密にされてきた文書が発見され、これらの学説が誤りであったことが証明されるに至っています。この文書は「メントマリーの手記」と呼ばれ、農家のシュウトメがヨメに主婦としての心構えをコト細かく教えようとしたものですが、その中に「コボルトに注意するんだよ」という一条がありました。
 コボルトは食い意地がはっているからキケンだよ。しようがないから村の各家庭交代で毎日祠にお供えモノをしておくんだけど、オオグイだからお供えモノだけでは足らずに、三日か四日に一回は人家に盗みに来るよ。だから、コボルトが来そうな日には、パンくずや食い残しをテーブルの上に置いておくんだね。それを盗んでいってくれるから、生ゴミ
を出さなくてよくて助かるよ。コボルトも利用できないようじゃ、主婦失格だね。
 これでやっとわかったのです。コボルトマークの日は、コボルトちゃんが盗みに入る可能性のある日を示していたのです。要するに「コボルト注意報」だったのですね。みなさんもコボルトちゃんには気をつけましょう。      (採集地:ドリエンヌ地方)

コボルトその4

2015年11月25日   岡本全勝
目ざましゲコ
 コボルトちゃんは朝起きが苦手です。この日もトモダチのウンデネちゃん(湖や川の精霊です。念のため)と待ち合わせがあったのですが、寝過ごしてしまいました。
「いったいどーゆーつもりよ」とウンデネちゃんはカンカンです。
「ごめんなちゃ~い」とコボルトちゃんはペコペコしたのでした。
 しばらく月日が流れました。またウンデネちゃんと待ち合わせです。
「今度はねぼちゅけチないようにちないといけまちぇん」
 コボルトちゃんは殊勝にも、目覚ましゲコをセットしました。お付のゲコに、
「いいでちゅか、明日の朝、日の出からきっかり一時間後に起こすのでちゅよ」と命令したのです。
 翌朝、日の出から一時間したとき、お付のゲコはゲコゲコと鳴き始めました。巣穴に反響してすごい音になります。それでもコボルトちゃんは起きてきません。
 しかたがないのでお付のゲコはコボルトちゃんの側まで行き、
「ゲコゲコゲーコ」(てめえ、はやく起きろよ)と耳元でがなり立てました。
 しかし、起きません。
「むにゃむにゃ・・・うるちゃ~い・・・」とか言っています。
 ゲコは最後の手段をとりました。コボルトちゃんの首筋にぺたりと冷たい手を引っ付けたのです。
「きゃぴ」とコボルトちゃんは目を覚ましました。しかし、
「ゲコゲコ」(やっと起きたぜ)とほっとしているゲコの方を見て、
「おマエ、いま何時だと思っているんでちゅか・・・まだ早いのに・・・、ひとの夢路を邪魔ちゅるやちゅは・・・チんでちまう・・・」
とだけ言うと、また眠ってしまったのです。
 もちろんこの日も遅刻です。もうウンデネちゃんはカンカンです。
「今度遅れたらただじゃおかないわよ。欧州中の田畑をすべて洪水で押し流してやるわ。世界の滅亡の日が来るのよ」
とほざいています。コボルトちゃんはペコペコするばかりでした。
 さてさて、またまた明日待ち合わせです。今度こそ遅れるわけにはいきません。コボルトちゃんはこのあたり中のゲコを呼び集めて訓示を垂れます。
「いいでちゅか、明日の朝はこの世界が滅ぶかどうかの瀬戸際なのでちゅよ。絶対にあたちを起こちゃないといけまちぇん。どんな手を使ってもいいから起こすのでちゅよ」
 ゲコたちは緊張してお話をうけたまわりました。なにしろ世界の存亡がかかっているのです。はたしてゲコたちに、この重い責務を果たすことができるでしょうか。
                       (採集地:ネボスガンス地方)

コボルトその3

2015年11月25日   岡本全勝
精霊の至宝
 欧州ではむかし、ネコは「魔女の使い魔」として虐待されていたのです。例えば、何処の村でも一年に一回、ヨハネの火祭りという大焚き火大会が行われるのですが、その際ネコを捕まえてきまして、籠に入れて焚き火の上から棒でつるして燻して最後は焼き殺す、というザンギャクな行為が行われていた地方もあるのです。おおコワイ。
 社会が進歩したので、そんなザンギャクなことは止めましたが、欧州とはいえ中世のひとは、かわいいペットを虐待するという劣ったひとたちだったのですね。
 さて、お祭りの翌日、焚き火の後の燃えカスをあさっているオンナのコがおりました。
「モノゴイのコだろうか、かわいそうに」と同情する必要はありません。そのオンナのコはコボルトちゃんなのです。焚き火で焼かれたおイモのシッポでも残っていないかと探しているのでしょう。でも食べられそうなものは何も見つかりません。
「今日は収穫なしでちゅかね」と諦めかけたときです。
「あり? これはナニかちら?・・・あ、おほほほー」 とヘンなモノを見つけました。手のひらに入るほどの大きさの円盤ですが、煤を払うと、表面には大きなネコのメがついていて、下向きにぶら~んと舌が伸びています。
「これは秘宝ネコメイシではありまちぇんか。なるほど、昨日アレをやったのね」
 猫目石とは、恨みを抱いてチんだネコのタマシイが、固体化して作られるという宝石です。コボルトちゃんはネコメイシを拾って嬉しそうに巣穴に帰っていきました。
 翌日から、コボルトちゃんはネコメイシをネックレスにしてお出かけです。キモチ悪いとかカッコ悪いと思うのはシロウトの浅はかな考え。すごいチカラを持っているのです。
「またどっかで戦争でもやっているのかちらね、お供えモノが全然ありまちぇん。でもネコメイシを手に入れたからもう大丈夫。アレをちた人たちに同情の余地はないでちゅし」
コボルトちゃんがうろうろと近くの村まで来たときです。
「ニャーゴ」とネコメイシが鳴きました。そして、舌をだらんと垂れさせてコボルトちゃんの左手の家の方をじろじろ見ます。
「お。早速ネコメイシのチカラが発揮されまちたね。なるほどあの家ね」
 コボルトちゃんは回りを見回し、誰にも見られていないことを確認すると、するするとその家の屋根に昇りました。ここで一度ネコメイシのひとみの方向を確認します。
「おほほ、こっちでちゅか、なるほどなるほど」と独り言をぶちぶち言いながら、煙突に入り込みました。
 しばらくすると、その家の中から、「どろぼー」というおカミさんの叫び声が聞こえます。それとほぼ同時に、コボルトちゃんが煙突から飛び出してきて、ぴょんぴょん、と屋根の上から地上に降り立ち、家のひとが「どろぼーはどこだ~」とか騒いでいるのを尻目に村はずれの森の中に逃げ込んで行きました。
「おほほー、大成功~。ネコメイシには隠されたクイモノを発見するというちゅごいチカラがあるのでちゅ。これからはノラボルトとして生きていけまちゅね」
 エモノは山分けです。盗んだ焼き魚の頭のところだけネコメイシに舐めさせ、残りはコボルトちゃんひとりでむしゃむしゃ食ってしまいました。
(採集地:ケットアイ地方)

コボルトその2

2015年11月25日   岡本全勝
望んでも手に入らないモノ
 ガッコウにもカイシャにも行かないコボルトちゃんは、その日もお昼ごろまで森の中の巣穴でグーピーと眠っていました。このため夜になっても寝付けません。
「不眠症なのかちら。なかなか眠れないので、お散歩にでも行きまちょう。でも、小さなオンナのコがひとりで夜歩きというワケにはいきまちぇんね」
 ひとりで夜の森を歩くのはコボルトちゃんほどの豪の者にとっても避けるべきことと考えられるのでした。コボルトちゃんは精霊ですから、夜中に出歩いてもワルい精霊にヤラれることはありません。
 もちろんゴブリンちゃんのようなライバルの精霊はいますが、どうせ今ごろグーピーと眠っているでしょうから気にする必要はないのです。また、そこらケダモノはみんなコブンですから、猛獣に食べられたりする心配もありません。しかし、暗がりで木の根っこにケつまずいて転んで、アタマを打って気絶しているうちに失血死したりしてしまう可能性もないことはないので、誰かと一緒に行くのが適当です。
 コボルトちゃんはもう寝込んでいたお付きのゲコをたたき起こして、同行を命じます。
 少し雲はありましたものの、おりから美しい月夜でした。森が深いのですぐ木々の枝に隠れてしまいますが、時折木の間からまんまるのお月さまが顔を出します。
「おほほー、パンケーキみたいでおいちちょう。でもツキは食べられまちぇん」とか言いながら森の奥へ奥へと入って行きます。そのうちに月が雲間に隠れ、森は一段と暗くなりました。ほうほう、とミミズクが鳴きます。ゲコは「ゲコゲコ」と答えます。
 森の奥の方に行くと、小さな池がありました。
「お昼に見ると小さな池でちゅけど、夜中に見ると不気味でちゅね」と、その時、雲が切れて月の光が木々の間から差し込んできました。
 池の水面を見ると、きらきらとしたまるいモノが浮かんでいます。空にあるお月さまと同様に、パンケーキのように黄色いモノです。
「ゲコ、何かおいちちょうなモノがありまちゅ。採ってきなちゃい」コボルトちゃんはゲコに命令しました。
 ゲコは「ゲコ」と鳴いてぼちゃんと池に飛び込み、パンケーキの方に泳いでいきます。 しかし、ゲコがそのパンケーキに近づきますと、パンケーキはぐにゃぐにゃ、と水面に溶 けて無くなってしまったのでした。
「おマエ、ひとりで食べてちまったの?」「ゲコゲーコ(そんなことないゲコ)」残念そうにゲコが岸辺に戻ってきますとまたまたパンケーキが浮かび上がります。
「ゲコ、また行ってきなちゃい」「ゲコ」
 しかし、ゲコが近づくとまたまたパンケーキは無くなってしまいます。戻ってくるとまたまたパンケーキが浮かび上がります。
「なにをやっているのでちゅか。おマエ、ナメられているのでちゅよ」コボルトちゃんはついに堪忍袋がぶちんと切れて、自らどぼんと池の中に飛び込み、パ ンケーキの方にじゃぶじゃぶと近づきました。
「もうちゅこち」と手を伸ばすと、パンケーキは水に溶けてしまいました。手を戻すとまたパンケーキが浮かび上がります。また手を伸ばすとパンケーキは消えてしまいました。
「ヘンでちゅねー」
 望んでも手に入らないものはたくさんあるのですよ。
(採集地:オーラン地方)