カテゴリーアーカイブ:行政

「平成の地方制度改正をひもとく」

2023年2月23日   岡本全勝

月刊『地方自治』2023年1月号から、山﨑重孝・元自治行政局長を中心とした座談会「平成の地方制度改正をひもとく」が始まっています。
戦後改革で地方自治が制度化されました。その後、安定した時代に入り、地方自治法は大きな改変がありませんでした。それが、平成に入って、さまざまな改正が試みられ、その延長線に分権改革が行われました。

私は若い頃、自治省財政局で交付税法の改正を毎年やっていたので、行政局が法律改正をしないことを「批判」していました。一方で、地方自治法の逐条解説はどんどん立派になるので、「法改正でなく、逐条解説ですませているのではないか」とです。
もっとも交付税法改正も、制度を大きく変えるのではなく、数字の更新と小さな改正でした。自治法にしろ交付税法にしろ、よくできていた法律なので、基本的な改正は不要だったともいえます。

どのようにして、動かない法制度を変えていったか。関係者の思いと苦労が書かれています。これは、勉強になります。

防衛費と子ども予算、増額は賛成、負担増は分かれる

2023年2月19日   岡本全勝

NHKの世論調査(2月13日)に、興味深い結果が出ていました。

新年度・2023年度から5年間の防衛費の総額を今の1.6倍にあたる、およそ43兆円とする政府の方針について賛否を聞いたところ、「賛成」が40%、「反対」が40%でした。増額する防衛費の財源の一部を確保するため、増税を実施する政府の方針については、「賛成」が23%、「反対」が64%でした。

少子化対策をめぐり、岸田総理大臣は子ども予算を将来的に倍増する方針です。この賛否を尋ねたところ、「賛成」が69%、「反対」が17%でした。子ども予算を増額するため、国民の負担が増えることについては、「負担が増えるのはやむをえない」が55%、「負担を増やすべきではない」が35%でした。

国内人権機関がない日本

2023年2月17日   岡本全勝

2月1日の朝日新聞オピニオン欄「「人権」日本の現実」、土井香苗さん(ヒューマン・ライツ・ウォッチ〈HRW〉日本代表)の「政策推進、国家機関が必要」から。

・・・人権の制度面でも「失われた30年」だと考えています。世界の動きから遅れています。主な原因の一つが、国内人権機関の設立ができなかったこと。「なんでないの」と、声を大にして言いたい。
国内人権機関は、政府から独立して、人権侵害からの救済と人権保障を推進する国家機関です。世界約120カ国が国内人権機関を持っています。国連からも度々、日本政府は国内人権機関を設立するよう勧告されていますが、いまだに作られていません。

環境であれば環境省という役所があり、環境政策に責任を持っています。でも、日本には、総合的に人権政策を作る機関がないのです。その結果、世界各国の政府に多数いる「人権政策の専門家」と同等レベルの国家公務員は日本にほぼいません。これでは、日本の人権政策が場当たり的で、政府高官のリーダーシップに欠けるのは必然です・・・

読売新聞社説「国家公務員離れ 政治の劣化が招く「官」の負担」

2023年2月16日   岡本全勝

2月16日の読売新聞社説は「国家公務員離れ 政治の劣化が招く「官」の負担」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。連載「公共を創る」で書いているように、政治主導への転換の過渡期としての混乱でしょうか。政治家が政治家の役割を果たし、官僚が官僚の役割を発揮できるようにしてほしいです。

・・・国の針路に携わる官僚が誇りを失えば、政策立案能力は低下しよう。与野党は質問通告や「官」との接触のあり方を改める必要がある。
内閣人事局は、昨秋の臨時国会で中央省庁が答弁の作成にかけた時間を調査した。答弁は全864件で、作成に着手した平均時刻は、委員会前日の午後8時前、答弁を作り終えた平均時刻は当日の午前3時近くだった・・・

・・・官僚が答弁に労力を割くのは、国会が本来の政策論争の場になっていないことが背景にある。
野党は、首相や閣僚のスキャンダルの追及や、発言の揚げ足取りに終始しがちだ。答弁を準備する官僚は、枝葉の部分にまで気を配らねばならず、負担は大きい。
国会を政策の狙いや意義を問う議論の場に改めていくことが不可欠だ。そうした取り組みが、官僚の働き方改革につながろう。
政治主導をはき違え、野党が「ヒアリング」と称した会合で、官僚を高圧的な態度で問い詰めるケースも少なくない。「官僚いじめ」のような場面が報道された結果、国家公務員の仕事に魅力を感じなくなった人も多いはずだ。
不尽な手法を改めなければ、若者の「国家公務員離れ」に歯止めはかかるまい・・・

・・・官僚の意欲を高めるには、処遇の改善も課題となる。
大卒の総合職の初任給は18万9700円で、大企業に比べれば見劣りする。国家公務員が海外に出張する際の宿泊費は、1984年の規定が今も適用されており、自腹で差額を 補填せざるを得ない状態だという。改善は急務だ。
行政改革の結果、国家公務員数は現在、30万人まで減少し、今も定員削減計画の最中にある。一人にかかる負担は増していよう。
日本の国家公務員数は人口比では欧米各国より少ない。官僚の採用増も検討すべきではないか・・・

介護離職対策、悩みの相談

2023年2月15日   岡本全勝

2月1日の日経新聞「介護離職は心のケアで防げ コマツが相談会、満席続く」から。

コマツが介護を理由とする離職の防止に向け、社員の心のケアに取り組んでいる。専門家による相談会を毎月開き、悩みを打ち明けやすくする。会社に相談できずに介護をしている社員は想定以上に多いと判断し、「離職予備軍」の増加を防ぐ。介護離職は2010年代から急増し、近年は年間約9万〜10万人に達する。会社を支えている40〜50代の社員を失うことは大きな痛手で、対策は待ったなしだ。

コマツは18年から約2万4000人の社員を対象に、外部の専門家に介護の悩みを相談できる個別相談会やセミナーを開いている。月間10人の相談枠は昨年12月〜今年2月まで満席が続く。追加の駆け込み案件も多く、需要が高まっている。
外部委託先のNPO法人「となりのかいご」代表理事の川内潤さんらは、のべ約470人の社員の声を聞いてきた。相談者は40〜50代が多く、10人に1人ほどは「いずれ会社を辞めなければならないのか」などと離職への不安を口にするという。
コマツは社員の介護負担の増加について早くから危機感を持っていた。「多くの社員が介護に携わる時代になる」とみた労働組合が介護休業の延長を提案。11年には法律が定める通算93日よりも多い最長3年まで休めるようにしたほか、手当など金銭面も手厚くした。
ところが17年ごろに制度の利用状況を調べると、休業者は5年間でわずか18人。実は会社に相談せずに週末などを使って介護をしている社員が予想以上に多いのではと思い直した。「真の需要に寄り添えていないのでは」と感じた同社が着目したのが、本音を打ち明けやすい環境の整備だ。
介護はプライバシーに関わる問題で、社内では打ち明けにくい面もある。コマツは外部の専門家による相談会にすることで心理的なハードルを下げた。会社には匿名で参加できるのも利点だ。
「親不孝介護」などの著書もある川内さんは、「優秀な社員ほど一人で解決しようとして悩みを抱え込み、突然の離職に至るケースも多い。『プロに任せられることは任せ、親とは適切な距離を保つべきだ』などと助言している」と話す。
相談者からは「自分の生活を優先していいんだと気づいた」「自分が深刻な状態にいることが理解できた」との声が上がるなど、悩みを打ち明けて心の負担が軽くなった人が多いもようだ。現在、コマツの介護離職は数年に1人程度という。石田さんは「介護需要が拡大するなかでもリスクを抑えられているのでは」と手応えを感じている。

「隠れ介護者」の存在は根深い問題だ。仕事と介護の両立を支援するリクシス(東京・港)によると、「介護が理由とカミングアウトしないまま辞めたり、辞めずとも有給休暇などで両立に励むケースが多く、実態を把握できている企業はほとんどない」という。
最大の壁は心理的な要因だ。「職務を奪われるのでは」「賃金に響く」といった不安から、会社への説明に及び腰になるという。特に50代などは「育休世代と違い、仕事を長期で休んだ経験がないことも影響している」(リクシスの佐々木裕子社長)。本音を引き出すため、心理的安全性をどう担保するかが課題だ。